乳酸菌ショコラの効果とは。生きた乳酸菌が100倍とどく、は嘘!?

2016年から2017年にかけての時期に少し話題になった「乳酸菌チョコレート」の表示がありました。現在ではもう行われていないのですが、不適切な表示ではないかという疑問が持たれ、現在検証中ということです。

乳酸菌チョコレートの口火を切った、ロッテの「乳酸菌ショコラ」に使われたコピー、「生きた乳酸菌が100倍とどく」に消費者庁から疑義が示されたのです。

生きた乳酸菌が100倍とどく、という意味や効果は?そして、なぜ消費者庁から待ったの声がかかったのか?詳しく解説してまいりましょう。

乳酸菌の性質に基づくと言うより法的な問題

▼ロッテ 乳酸菌ショコラ シリーズ(パッケージ 2017年7月上旬現在)
乳酸菌ショコラシリーズの商品イメージ

この問題は「生きた乳酸菌が100倍とどく」と言うコピーに正確な根拠があるのかどうかということで、景品表示法に抵触する可能性があるから正確な資料を示せ、と言う問い合わせが消費者庁からロッテに行われたと言うものです。

ですから、2017年7月上旬現在、まだ結論は出ていません。ロッテにしても、共同研究を行った会社や個人にしても、それなりの根拠があったからコピーとして使ったのでしょう。その根拠の正当性を消費者庁がどう判断するかと言う問題なのです。

人間の腸を解剖しないと正確な数値は判らない

ロッテが根拠としているもののひとつに、人間に食べてもらって、その後の排泄物を分析したデータによるものがあります。つまり、生きて通過した菌の数はこれである程度見当がつきます。

とは言うものの、仮に対照群に比べて5倍しか腸に届いていないけれど、腸の中で20倍に増えれば、出てきたものは100倍になります。健康を意識するならそれでも100倍と言うことに違いはありません。

しかし、法律や規則だけで物事を判断しなければいけない立場の人たちにとっては、「腸の入り口で生きた乳酸菌が100倍届いている証拠を出せ」と言うことが必要になるのかも知れませんね。

腸の入り口で待ち構えていて、乳酸菌が届いた量を調べようと思うと、解剖するしかないでしょう。それでは人道的に問題が起こります。また、動物実験でも、そうしたことは行っていないようです。

果たしてそういうことが必要なのかどうかは判りません。表現を抑えることで、こうした事態が避けられたかもしれませんから、科学的な問題というより、ビジネスと法律と消費者利益のバランスと言う、社会的な問題と考えるべきですね。

人工胃液には平気で耐えたというデータはある

人工胃液の中に乳酸菌ショコラを入れてテストしたら、乳酸菌の粉末や乳酸菌飲料に比べて、3万3千倍の生存率が確認されたというデータはあります。

確かに乳酸菌は胃液によって殺菌されてしまうということが一番の弱点です。そのため、耐酸性の強い菌種を選んだり、食前より食後にヨーグルトを食べたりと、さまざまな工夫が存在するわけです。

でもお役所的にはこれだけでは「生きた乳酸菌が腸に100倍とどいている」とは納得しないのかもしれません。もちろん、提出された資料で納得するかもしれませんが。

一方、乳酸菌は十二指腸で分泌される胆汁酸によっても数を減らしてしまいます。しかし、十二指腸の入り口で胆汁酸が分泌される直前の場所でも、腸には違いありませんから、その場所で見た場合、100倍はおろか3万倍届いているかも知れません。

そうした部分について、消費者庁はどう判断するのかが見ものと言えるでしょう。

ほかのメーカーも書きたかったのに、このような事情があって我慢してたわけでしょう。もしかすると出る杭として打たれたのかも知れませんね。

使われていたのはラブレ菌の近縁にあたる乳酸菌

この乳酸菌ショコラに用いられていた乳酸菌は、ラクトバチルス属ブレビス種NTT001株(通称:ブレビス菌T001株)です。この菌は植物性乳酸菌としてよく知られていますね。

カゴメがラブレ菌と言う商品名で発売しているのは同じラクトバチルス属ブレビス種KB290株です。

同じところから発見されたのか、同じものに2つの名前があるのか

ブレビス菌T001株をロッテに供給している日東薬品によると、ルイ・パストゥール医学研究センターの岸田綱太郎博士との共同研究で、京都のすぐき漬けからこのブレビス菌T001株を分離したとしています。

(参照:ブレビス菌T001株・京都の伝統漬物“すぐき”から発見された植物由来の乳酸菌|日東薬品工業株式会社)

日東薬品は京都府南部の向日市に本社を構える会社ですし、ルイ・パストゥール医学研究センターは京都大学に隣接する研究所です。いわば京都の地場産業的に見つかった乳酸菌なんですね。

一方、ラブレ菌を製造販売しているカネカによると、日東薬品との間で、特許・商標・菌株などに関する独占的な使用契約を結んだから「カネカ・ラブレ」と言う名前で乳酸菌を製造販売するとしています。

(参照:サプリメント・食品メーカー向け機能性食品素材、植物由来乳酸菌(ラブレ菌)の販売開始 日東薬品工業(株)と独占的通常実施権許諾契約を締結|株式会社カネカ 広報室)

このラブレ菌についても、「ルイ・パストゥール医学研究センターの岸田綱太郎博士によって京都のすぐき漬けから発見された」としています。

もちろん、一つの素材、特に乳酸発酵している製品からは数多くの菌株が分離されますから、すぐき漬けにも2種類以上のブレビス種がいたのかもしれません。

あるいはビジネス上の問題で、同一菌株に2つの名前を与えているのかもしれませんが、それをうかがい知ることはできません。でも、私たちにとっては、それが健康に役立ってくれるのなら、どんなものでも歓迎ですよね。

一般に公表されている亜種名はまだ公式になっていなかった

ヨーロッパの代表的なバイオリソースセンターである、ドイツのライプニッツ研究所が公開している、国際細菌命名規約に基づくIJSEMに登録されている正式菌名リストの2017年4月版には、ラクトバチルス属ブレビス種はそれ1種しか掲載されていません。

亜種についてはまだ未掲載です。これまでラブレ菌はラクトバチルス属ブレビス種コアギュランス亜種とされることが多く、私自身も記事の中でそう書いていたことがあったかもしれません。

この記事を書くにあたって、ブレビス菌T001株との関係を調べようと思い、リストを見てびっくりしたという次第です。

もちろんコアギュランス亜種というものがあるなら、基亜種としてブレビス亜種もあるはずです。しかし、そうしたものの登録がないので、先行発表なのか菌株の別名的な発表なのか、ちょっとよく判りません。

でも、企業や研究機関が個々の判断で命名できるのは菌株名までですので、ラブレ菌はやはりブレビス種KB290株と呼んだほうが適切なように思います。

乳酸菌ショコラの最大のメリットは常温で保存できること

乳酸菌が生きた食品の弱点は、ヨーグルトのように冷蔵保存が必要で賞味期間が短いことでした。そうした弱点を克服したのが、顆粒や錠剤になった乳酸菌サプリです。

しかし、お薬のイメージに近いサプリは「飲み忘れ」が起こりやすいという一面を持ち合わせています。

それに対して、チョコレートにフリーズドライ乳酸菌を練り込むという方法で、生きているけれど休眠状態の乳酸菌を、常温で長期間保存できるようにしたのが大きなメリットですね。

さらに、甘いのもが好きな人は食べ忘れどころか、食べすぎないように我慢しなくてはいけないということが起こるかもしれません。そうしたメリットから爆発的ヒットに繋がったようですね。

カカオ豆にも健康に寄与できる成分があるとして、高カカオチョコレートが人気になったことがありますね。そういう意味で鬼に金棒だったのでしょう。

脂肪が乳酸菌を保護するので、乳酸菌とチョコレートの相性はいい

チョコレートは高脂質の食べ物です。カカオマスとココアバターはいずれもカカオ豆から採れた脂肪分と言って良いでしょう。

ですので、チョコレートに乳酸菌をフリーズドライして練り込むということは、その脂肪分で乳酸菌をくるんでしまうことになります。それが乳酸菌を保護してくれるのです。

チョコレートは胃酸から守ってくれる

チョコレートの脂肪分は、乳酸菌を強力な殺菌力を持つ胃酸から保護してくれます。脂肪分の一部は胃液に含まれる、リパーゼという消化酵素によって分解されますが、脂肪のまま十二指腸に送られるものもあります。

十二指腸から小腸では、膵臓から分泌される消化酵素によってチョコレートの脂肪が完全に分解されます。そして乳酸菌は開放されて、腸の中の水分を得て、休眠状態から再活性化するのです。

これが乳酸菌チョコレートで、乳酸菌が生きて腸まで届きやすくなる原理です。言われてみれば非常にシンプルな方法なのですが、なぜこれまで出てこなかったのでしょう。

もしかすると、フリーズドライで生きたまま菌末を作るのが難しかったとか、乳酸菌を殺さない温度で混ぜ込むのが難しかったとかの事情があったのかもしれません。

あるいは、乳酸菌と言えば乳製品というイメージが先行しすぎて、思いつかなかっただけかもしれませんね。

この手法はビフィズス菌に向いている

ロッテの乳酸菌ショコラに使われている、ラクトバチルス属ブレビス種は、比較的酸に強い乳酸菌ですので、そのままでもある程度生きて腸まで到達できる可能性はあります。

もちろん酸に強い菌をチョコレートで保護するのですから、さらに多くの菌が生きて届くことになるとも言えるでしょう。

一方、ビフィズス菌は酸に弱い菌です。ですから、チョコレートで保護してやることに大きな意味が出てくるのです。そこに目をつけたのが森永製菓です。

森永乳業のビビダスヨーグルトに使われているビフィズス菌BB536は、ビフィズス菌の中では酸に強い方ですが、それでも保護してやれれば、より効率的に腸まで送り込めるでしょう。

より多いカカオ成分を含んで、その効果もアピールしたのが「カカオ70・ビフィズス菌チョコレート」と「カカオ70・ビフィズス菌全粒粉ビスケットクランチチョコ」です。

全粒粉ビスケットということは、食物繊維も期待できるから良いですね。

チョコレートは常温で固体の「脂」なので、保護能力が高いということもあるでしょうね。いずれにせよ上手く考えたものです。

消費者庁による問い合わせはチョコレートの品質とは関係ない

個人的にはロッテのコピーが拙かったと思いますが、そのことが乳酸菌ショコラの品質に対する評価を左右するものではないと思います。

そもそも「生きた乳酸菌が100倍とどく」とチョコレートのパッケージに書かれていたとしても、「何に対して100倍なのか」が明示されていない以上、「おいしいですよ」と書いてあるのと同レベルの表現だと受け止めると思います。

ロッテにしても、「人工胃液の中で3万倍以上生き残ったんだから、100倍と書いておけば誇大広告にはならないだろう」くらいの軽い気持ちだんじゃないかと想像します。

日東薬品によると、乳酸菌ショコラに配合されているブレビス菌T001株は、乳酸菌として極めて一般的な整腸作用のほか、免疫賦活作用も持っているということです。

さらに、代謝を改善して肥満を抑制したり、プリン体を分解する活性(おそらく乳酸菌がプリン体を消費するのだと思います)も確認されたとしています。

(参照:ブレビス菌T001株・京都の伝統漬物“すぐき”から発見された植物由来の乳酸菌|日東薬品工業株式会社)

ブレビス菌T001株画像
ブレビス菌T001株 Lactobacillus brevis NTT001
(出典:有用菌の研究|日東薬品工業株式会社)

残念ながらロッテは乳酸菌ショコラにこの菌をどのくらい配合しているのかという数値データを公表していません。乳酸菌には死菌の菌体成分による効果も期待できるのだから、公表してくれてもいいと思うんですけどね。

今後、消費者庁がどう判断するのかはわかりませんが「100倍は間違いでした」となるかもしれません。でも、何の100倍かがもともと示されていないわけですから、クロでもシロでも気にしなくていいでしょう。

自分にとって乳酸菌利用食品として値打ちがあると思えば利用すればいいですし、そう思わなければ利用しなければ良いだけです。

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