デーデルライン桿菌でカンジダ予防。増やして膣環境を清潔にする方法

デーデルライン桿菌と呼ばれる、女性だけの常在菌群があります。これは女性の膣の中に常在して、環境を酸性に保つことで雑菌や病原菌などの侵入を阻む、とても大切な役目を担っているものです。

ただ、日ごろの身体の洗い方などの原因によってデーデルライン桿菌が減ってしまうこともあり、そうした際に外来の菌によってデリケートな部分にトラブルが発生することも割合よく見られる現象です。

デーデルライン桿菌とはどんなものか、正常に保つためにはどうすれば良いのか、乳酸菌マニアがお話します。

デーデルライン桿菌は乳酸菌の集まり

デーデルライン桿菌と言う名前は、この乳酸菌群が、19世紀終わりから20世紀初めにかけて活躍したドイツの婦人科医、アルベルト・デーデルラインによって発見されたことからつけられた名前です。

当初はラクトバチルス属アシドフィルス種が中心になっていると考えられたこともあって、乳酸桿菌であるラクトバチルス属から、デーデルライン桿菌と命名されました。

デーデルライン桿菌にはビフィズス菌も含まれている

現在分かっているデーデルライン桿菌の構成菌種も、やはりラクトバチルス属が大半を占めていますので「桿菌」の命名に問題はありません。しかし、種のレベルではアシドフィルス種が中心ではないことが分かっています。

ラクトバチルス属イナース種
デーデルライン桿菌の中で最も多くを占めることが多いとされる乳酸菌です。
ラクトバチルス属クリスパタス種
次に多い乳酸菌。場合によってはこちらが最多になることも見られます。クリスパタス種は過酸化水素を作り出す能力があり、雑菌や病原菌の殺菌にも役立っています。

この菌は、見つかった当初、アシドフィルス菌の一種と考えられていました。そのせいで、今でもデーデルライン桿菌はアシドフィルス菌が中心だと思われていることもあるようです。

ラクトバチルス属アシドフィルス種
当初、デーデルライン桿菌の中心的な存在だと考えられた菌ですが、ガッセリー種やクリスパタス種などが分離再分類されたことで、現在では上の2つより少ない割合になっています。
ラクトバチルス属ジェンセニイ種
個人差はあるものの、最も多い場合デーデルライン桿菌の中で1/4弱くらいを占めることもある乳酸菌です。この菌はほとんどの場合、女性の膣から見出されますが、収穫時のブドウの皮にいることもあるようですね。
ラクトバチルス属ブフネリ種
ヘテロ乳酸発酵を行う菌で、乳酸と同時に酢酸を作り出すことから、雑菌などに対して殺菌能力の強い菌です。
ラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種(通称:ブルガリア菌)
ヨーグルトを作り出す中心的な存在の乳酸菌です。
ラクトバチルス属ガッセリー種(通称:ガセリ菌)
機能性乳酸菌としてヨーグルトなどに配合されることでおなじみの乳酸菌です。
ビフィドバクテリウム属乳酸菌(通称:ビフィズス菌)
菌種は特定されていませんが、少ないながら検出されているようです。腸内善玉菌の主役として有名ですね。

これらの乳酸菌が中心となって、デーデルライン桿菌を構成しています。

デーデルライン桿菌のおかげで膣内が清浄に保たれる

デーデルライン桿菌が膣内の細菌叢を占めているおかげで、雑菌や病原菌が繁殖することができないため、膣内はいつも清浄に保たれています。

これは、乳酸菌であるデーデルライン桿菌が分泌する乳酸によって、環境が酸性に傾いていることも大きな要因です。

一方、常在菌として存在しているのはデーデルライン桿菌ばかりではありません。最もメジャーと言って良いのはカンジダ属アルビカンス種(通称:カンジダ菌)の真菌も、普段は有害でも有用でもない存在として棲みついています。

しかし、ビタミン不足を原因として免疫力が低下したり、デーデルライン桿菌の数が減ったり、あるいは活性が下がったりすると、カンジダ菌が異常増殖して身体に不調をもたらします。

これが性器カンジダ症と呼ばれるものです。カンジダは女性にだけ常在するものではなく、男性にも棲みついていますが、外性器の構造上、性器カンジダ症はわずかな例外を除いて、ほぼ全部が女性に起こります。

一方で、デーデルライン桿菌のような常在乳酸菌による防御機構も男性には存在しません。

意外なところに乳酸菌が棲みついて身体を守ってくれているのです。では、どのようにすれば清潔な状態を保てるのかを見て行きましょう。

デーデルライン桿菌を安定させる、デリケートゾーンの正しいケア方法

デーデルライン桿菌は乳酸菌ですから、エサになる炭水化物が必要です。その炭水化物はどこからやってくるのでしょう。牛乳なら乳糖が含まれていますし、野菜ならオリゴ糖などが含まれています。

人間の身体から常に供給可能な炭水化物と言うのは、実は剥がれ落ちた上皮細胞から供給されているのです。つまり、デーデルライン桿菌はグリコーゲンをエサにしている、ということなのです。

グリコーゲンは分解しやすい多糖類

グリコーゲンは必要な時に、すぐにグルコース(ブドウ糖)に分解して使えるように、身体の中に糖質をため込んでおくための多糖類です。動物性でんぷんと呼ばれることもあります。

身体の中では、ほとんどが骨格筋と肝臓に存在していて、合成と分解もそこで行われます。しかし、性的に成熟している女性の膣粘膜を構成している扁平上皮細胞には、グリコーゲンが豊富に含まれています。

そして、女性ホルモンの働きで上皮細胞は基底部で細胞分裂を繰り返し、表面からは次々と細胞が脱落して行きます。すると、細胞に含まれていたグリコーゲンが放出され、これがデーデルライン桿菌に利用されるのです。

グリコーゲンはグルコースだけで構成されている多糖類ですから、分解されれば全部が乳酸菌のエサになるのです。その結果、膣内はpH4.0程度の酸性に保たれ、特に酸性に強い細菌・真菌以外の雑菌はすべて死滅するか活性を失うかします。

洗いすぎが大切な場所を不潔にする

昔はそうでもなかったのですが、温水洗浄便座の普及で、排尿のたびに洗う人が増えてきたそうです。

その結果、膣内部に棲んでいるデーデルライン桿菌やそのエサになるグリコーゲン、生成物である乳酸まで全部洗い流してしまっている人も珍しくないようです。

実際、デリケートゾーンをどの程度の頻度で洗うのが良いのかは、体調や汚れ方によってもまちまちです。婦人科医院などでもアドバイスしていると思うので、そうしたものを参考にして下さい。

一つ忘れてならないのは、ビデを使って奥までしっかり洗うという事は、膣内を中性にしてしまっているということと同じと言うことです。つまり、雑菌が繁殖しやすい環境を作っているということになるわけですね。

もちろん、デーデルライン桿菌もすぐに再増殖を始めますし、健康であれば大きなトラブルにはならないかもしれませんが、余計なリスクは避けておいた方が良いですね。

さらに、できればデリケートゾーンはせっけんで洗わない方が良いです。専用の弱酸性洗浄剤がお勧めですね。近頃は複数のメーカーから発売されて人気を集めているようです。

ヴィフェミィ商品イメージ
(出典:ヴィフェミィについて|クラシエ)

これはせっけんや普通のボディソープがアルカリ性だからです。アルカリ性の洗浄剤は特に脂肪の汚れを効率的に落としてくれますので、普通に使う分には良いものです。

しかし、デーデルライン桿菌によって酸性が保たれている場所に、アルカリ性のせっけんなどを使うと、中和されてしまって抗菌力が失われてしまいます。大切な場所ですから、ちょっと贅沢をしても良いでしょう。

抗生物質を使った時は体調の変化に注意

抗生物質を内服した場合、腸内細菌のバランスが崩れて、消化器の不調を招くことがあります。これと同じように、抗生物質の種類によっては、デーデルライン桿菌も殺菌されてしまうことがあります。

そうした場合、自浄作用が働かなくなって感染症や炎症が起こることもあります。抗生物質を使った際に、異常を感じたら婦人科を受診して抗生物質を使ったことを報告して相談してみて下さい。

民間療法でヨーグルトを塗り込むなどと言う物もあるようですが、感染した菌の種類や、もともと常在していた菌の種類によっても有効性は一定ではありません。

また、ヨーグルトを食べることで間接的に効果があるとも言われますが、受診して適切な治療を受ける際に、そうしたことの有効性についてお医者さんに相談されることを強くお勧めします。

上皮細胞の成分が乳酸菌のエサになっているというのは意外ですね。でも、乳酸菌を味方につけるという方法を、人類は長い間かかって身に付けたのでしょう。

閉経後はデーデルライン桿菌も弱るので注意

先にお話しした通り、デーデルライン桿菌は、女性ホルモンによって次々とグリコーゲンが供給されることでエネルギーを得ています。そのため、閉経後の女性や初潮前の女児ではそれがあまり期待できません。

もちろん、全くゼロと言うわけではありませんし、感染症の原因になる菌のエサも減りますから、閉経後に必ずトラブルが起こるわけではありません。でも注意しておくに越したことはありませんね。

女性ホルモン剤の外用が有効な場合も

閉経後には女性ホルモンの急激な減少から、デーデルライン桿菌の問題よりも、粘膜の萎縮などによる器質的なトラブルがより大きな問題になりがちです。

こうした場合は、まず婦人科を訪ねて検査を行ってもらってください。これは閉経によって薄くなった粘膜からの感染症の他、女性特有のがんがないかをチェックしておくべきだからです。

その上で、外用薬(塗り薬)によるホルモン補充療法などを選択するという手もあります。もちろん、内服による全身に対するホルモン補充療法と言う選択肢もあります。

これらについては、お医者さんからリスクとベネフィットについて、よく説明を受けて理解してから治療法を選択して下さい。

そもそもデーデルライン桿菌はどこから来る?

初潮を迎える前の女児でも女性ホルモンの分泌は非常に少ないため、膣粘膜からのグリコーゲンの供給はほとんど期待できません。そのためデーデルライン桿菌もほとんどいないでしょう。

では、デーデルライン桿菌はどこからやってくるのでしょうか。これについて詳細に述べている資料が見つかりませんでした。ですので、いくつかの可能性を示すことしかできません。

可能性の一つとして考えられるのは、出生の際に通ってくる産道で、お母さんからデーデルライン桿菌を引き継ぐと言う事です。もちろん、そこから数年~十数年の間はエサをほとんどもらえないため、大きく増えることはないでしょう。

それが細々と生き延びて、時を待っている可能性はありますね。一方で、帝王切開で生まれた赤ちゃんは、デーデルライン桿菌を引き継ぐチャンスがありません。

それでも大人になればしっかり棲みついているわけですから、どこかで手に入れているのでしょう。このことは腸内細菌についても同じことが言えます。

ただし、腸内細菌についても、帝王切開で生まれた赤ちゃんは善玉菌の割合について不利であるという情報もあります。

ですから、自身が帝王切開で生まれたという人が大人になって、膣炎などのトラブルに悩んだ場合は、一度デーデルライン桿菌について調べてもらうというのも悪くないでしょう。

初潮前と言うか、幼児のころには外陰部から雑菌が入るというトラブルもあるようですが、これは親御さんが常に清潔にしておいてあげるよう注意することで防げます。

また、起こってしまったら小児科・婦人科を受診して、お薬をもらうだけで問題ないと思います。

逆に妊娠可能な時代においては、デーデルライン桿菌が大活躍という事になります。適切に栄養を摂り、適切にお手入れをしておけば病気知らずという事になるでしょう。

トリコモナス症には特に注意が必要!できるだけ早く受診して

感染性の膣炎の双璧は膣トリコモナス症と性器カンジダ症です。性器カンジダ症は先にお話した通り、常在菌であるカンジダ菌の異常増殖で起こります。

一方、トリコモナス症は感染症で、主な感染ルートは性感染症としてのルートです。しかし、タオルや便座、お風呂などを通しても感染することがありますので、注意が必要です。

この病気の原因であるトリコモナス属の単細胞生物は、酸性環境にも強く、しかもグリコーゲンをエサとして繁殖しますので、この病気にかかるとデーデルライン桿菌がエサを失って減ってしまいます。

ですので、異常を感じたらできるだけ早く婦人科を受診して検査と治療を受けて下さい。

ビタミン剤とヨーグルトをたくさん食べるとか、ヨーグルトを局所に塗り込むなどの民間療法は、かえって悪化させてしまう事にもなりかねませんから、実行するにしても、事前にお医者さんとよく話し合って下さい。

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