はちみつとヨーグルトを一緒に摂ると、乳酸菌は殺菌されちゃう?

近年、強い殺菌作用があるという噂で大人気のマヌカハニーという商品があります。それだけではなく、古来から殺菌成分が含まれているとして、はちみつには医薬品的な効能も期待されてきています。

では、乳酸菌がたっぷり生きているヨーグルトと、殺菌成分が入っているはちみつを一緒に摂ることは、乳酸菌が殺菌されてしまうから良くないのでしょうか。

はちみつの殺菌能力と乳酸菌との関係について、細かく見てみましょう。

一緒に食べてOK!はちみつの殺菌作用と乳酸菌の関係

マヌカハニーはギョリュウバイ(御柳梅)とか、ニュージーランド・ティーツリーとかの別名で呼ばれることもある、ニュージーランドの先住民の言葉でマヌカと呼ばれる木の花から集められたはちみつです。

メチルグリオキサールと言う殺菌成分が含まれていることから、医薬品的効能を期待されて民間療法に用いられています。ですので、まずマヌカハニーは別にして、一般的なはちみつの殺菌作用と乳酸菌の関係を見てみましょう。

はちみつは結構酸性が強い物質である

はちみつはpHで3.7~4.9ぐらいの、割合酸性に偏った物質です。ヨーグルトができる時は、pH7.0前後でほぼ中性である牛乳の乳糖を、乳酸菌が代謝して酸性物質の乳酸を出します。

それが蓄積して酸性が強くなると、牛乳に含まれるカゼインというたんぱく質が、電気的にお互いを反発させて散らばっている状態から、電気的に中性になる等電点というpH4.6の状態を迎えます。

するとカゼインはお互いにくっつき合って、牛乳が固まります。これがヨーグルトです。ですので、ヨーグルトはpH4.6~3.5くらいの酸性になっています。

一般的な細菌はpH5.0を下回ると繁殖できなくなります。大腸菌などのように比較的酸性環境に強いものでも、pH4.5以下では繁殖できません。

それに対して、乳酸菌など、自分で酸性物質を作り出す細菌の多くはpH4.0くらいなら繁殖できますし、pH3.0でも死滅しないこともあります。

この酸性度がはちみつを腐りにくくしている要因の一つなのですが、これについては乳酸菌に悪影響を与えません。むしろヨーグルトにはちみつを入れても、pHが上がらない(酸性度が下がらない)から良いくらいですね。

はちみつは糖度が高いから菌が繁殖しない

はちみつは80%くらいが糖分です。砂糖の主成分であるショ糖は1割くらいで、半分は果糖、4割方がブドウ糖です。ショ糖が含まれていますからまったく同一ではないものの、異性化糖(果糖ブドウ糖液糖)に近い配分ですね。

残りの20%くらいは水分と、蜜源花やミツバチに由来する微量成分です。ここまで糖度が高いと、細菌は繁殖できません。細菌が利用する水分が全くないばかりでなく、場合によっては細菌の菌体から浸透圧で水分を絞り出しちゃいます。

古来の製法で作ったフルーツジャムが、常温保存でも年単位で保存可能なのと原理は同じです。フルーツのジャムはフルーツと同量の砂糖を火にかけて、浸透圧でフルーツから出てきた水分と混ぜ合わせ煮詰めます。

火からおろしてすぐに、熱湯消毒した容器に詰め、熱いうちにふたをすると、内部が減圧されて密封されますね。この状態であれば外来の菌は入ってこれません。

枯草菌など、100℃で加熱しても死なない芽胞を形成する菌はジャムや容器の中に残っていますが、温度が下がって発芽しようと思っても、必要な水分を全部糖分に押さえられているため、発芽できません。

一部のカビは、ジャムの表面で発芽する場合がありますが、表面だけの繁殖にとどまります。

はちみつもこれと同じで、非常に高い糖分濃度によって菌の発芽が起こらないのです。はちみつを乳児に与えてはいけないというのは常識だと思いますが、これは、はちみつの中にはボツリヌス菌と言う強毒性菌の芽胞が含まれていることがあるからです。

1歳を過ぎ、ある程度免疫機能が整ってくると、はちみつを食べてお腹の中でボツリヌス菌が活性化しようとしても、ボツリヌス毒素を出す前に胃酸や免疫機能によって退治してしまえます。

しかし、免疫機能の整っていない乳児では、はちみつの中の芽胞がお腹の中で活性化し、地上最強の毒素と言われるボツリヌストキシンが作られ赤ちゃんを死に追いやるのです。

一方、乳酸菌の定義の中には「芽胞を作らないこと」というのがありますので、はちみつの中で乳酸菌は繁殖できませんし、死滅する可能性が高いです。

でも、はちみつに乳酸菌をふりかけて、よく混ぜてから食べるというようなことをする人はいないでしょう。普通はヨーグルトなどにはちみつを入れてよくかき混ぜ、それを食べると思います。

そうした場合、糖分の大半がブドウ糖や果糖という消化の必要がない単糖類になっているはちみつは、乳酸菌にとっても美味しいエサになります。人間がこれらの糖質を吸収するのは小腸です。

ですから、容器の中から口・食道を通って胃を通過する数時間の間には、乳酸菌が糖分を先に食べちゃってる部分もあるでしょう。

はちみつは表面で過酸化水素を作る

はちみつにはグルコースオキシダーゼと言う、ブドウ糖を酸化する酵素が含まれています。この酵素の働きで、もともと六角形の環状構造を持っているブドウ糖は、その環の一か所が切れる開環という現象によって、一本に伸びたグルコン酸という物質に変化します。

このグルコン酸ができる際に利用される水と空気から、過酸化水素が発生します。過酸化水素は活性酸素の一種で、その水溶液は消毒薬としても使われる殺菌作用の強いものです。

物質の収支で言うと、ブドウ糖(C6H12O6)+酸素(O2)+水(H2O) → グルコン酸(C6H12O7)+過酸化水素(H2O2)となります。

一方、はちみつにはカタラーゼという、過酸化水素を無害な水と酸素に分解する酵素も含まれています。実際にはカタラーゼの割合が少ないため、過酸化水素ははちみつに蓄積されます。

とは言うものの、実ははちみつの中では、糖分が多すぎてこれらの酵素はあまり働けないのです。少し古い研究によると、これらの酵素が最もよく働くのは糖分を21.5%にまで薄めた時だったそうです。

はちみつは元々糖分が80%くらいですので、ヨーグルト100gにはちみつを35g入れたぐらいの時に、最も酵素による過酸化水素で殺菌力が上がることになります。

とは言うものの、これではおそらく甘すぎて食べるのが苦痛ではないかと思います。実際には10gから、せいぜい16gくらいまでが美味しい甘さになるのではないでしょうか。

特にはちみつの糖類の半分を占める果糖は、冷たくすると甘さが強まる性質がありますので、ヨーグルトに入れる場合は量を控えたほうが美味しいでしょう。

さて、でははちみつをヨーグルトに入れると殺菌効果で乳酸菌がダメになるのでしょうか。それをしっかり研究した信頼できるデータは見当たりませんでしたが、おそらくそんなことはないと思われます。

その傍証として挙げられるのがハニーミードの存在です。ハニーミードは人類の歴史上最も古いお酒です。

もともとは、はちみつを水で薄め、放置しておくだけで天然の酵母によって発酵し、お酒になったというものです。現在では専用の酵母を入れて発酵させています。

酵母は真菌類ですから乳酸菌よりは強い部分もありますが、お酒を作るという活性化状態では、胞子のときほど環境の変化に強くありません。ですから、はちみつの過酸化水素の殺菌力も、それほどの強さではないと考えられます。

過酸化水素の副産物がビフィズス菌を増やす

先にお話したように、過酸化水素が生まれるのは、ブドウ糖が酸化されてグルコン酸になる時です。このグルコン酸は、腸の中に住んでいるビフィズス菌を増殖させる働きがあることが判っています。

グルコン酸は有機酸ですが、オリゴ糖などと同じように善玉菌を増やす作用を持っています。

公益財団法人 日本健康・栄養食品協会(JAFA)によると、2005年にグルコン酸を「ビフィズス菌の増殖作用を持つ唯一の有機酸」であるとして、食品添加物として使えるとしています。

安全性や有効性についても資料が揃っているので、健康補助食品にも使えるとしています。

(参照:「グルコン酸類食品」及び「ウコン食品」に関する新規格基準を公示|公益財団法人 日本健康・栄養食品協会)

このように、はちみつの持つ殺菌作用は、ヨーグルトの乳酸菌を全滅させるほど強力ではなく、逆に副産物によって腸内に定着しているビフィズス菌を増やす効果があります。

ヨーグルトの甘味料としてはちみつを使ってもいいですし、どうしても気になるなら別々に食べればいいだけですね。

はちみつを水で薄めて酵母を入れれば誰にでもハニーミードを作れますが、日本ではアルコール度数が1%を超えた段階で、たとえ自分だけが飲むものであっても酒税法違反になるので注意して下さい。

マヌカハニーは細胞傷害性のある優れた抗菌薬

さて、今度は上で別扱いにしたマヌカハニーの話題です。マヌカハニーには強力な殺菌力があり、一部では信仰に近いぐらい万能薬的な効能が謳われている場合もあります。

しかし、現実問題としては、強い殺菌効果があると言う部分を除けば、まだ充分な証明がされていない効果が独り歩きしている印象は否めません。

マヌカハニーは「薬用はちみつ」?

アメリカに本社があるDermaScience社は、マヌカハニーをベースにMEDIHONEY(直訳:医はちみつ)と言う医療用品ブランドを展開しています。そこでは、軟膏から湿潤療法用の包帯まで、傷を感染から守るアイテムが数多く作られています。

日本の「ダーマサイエンス」ブランドのスキンケア用品とは、おそらく関係ないものと思われますが、確認はしていません。

マヌカハニーには、メチルグリオキサールと言う、細胞を傷害する強い毒性がある物質を含んでいて、これが強い殺菌作用を示します。

毒性のある物質と言うと心配になりますが、人間の身体の中でも嫌気的解糖と呼ばれる代謝経路で発生しますので、これを乳酸に分解するグリオキサラーゼ1と言う酵素が人間の体内にありますから、これによる毒性は心配しなくてもいいでしょう。

一方、オーストラリア国立クイーンズランド大学の研究グループは、医療用はちみつを使って、腹膜透析を受けている人の感染予防についての研究を行っています。

その目的は、腹膜透析患者は日常的に外用抗菌薬を必要とするが、抗生物質・抗菌薬とは異なり、耐性菌を生み出すリスクの低い医療用はちみつを使うことで、耐性菌による感染リスクを下げられないかということでした。

結果を見ると、医療用はちみつは一般的な抗菌薬に比べて感染を抑える効果が低く、日常的な使用は推奨されないという残念な結果に終わっています。

(参照:Antibacterial honey for the prevention of peritoneal-dialysis-related infections (HONEYPOT): a randomised trial・腹膜透析関連感染症の予防のための抗菌性蜂蜜(HONEYPOT):無作為化試験|David W Johnson教授ほか)

つまり、マヌカハニーは伝統的な医薬品として、代替医療・民間医療には有効であるかもしれないが、日常的な抗菌薬代わりにはならないということです。

わざわざマヌカハニーをヨーグルトに合わせる必要はない

このように、抗生物質ほどの強力な殺菌作用は持ち合わせていないものの、マヌカハニーには細菌を殺す能力が備わっていると考えて差し支えありません。一般的なはちみつの静菌作用や、過酸化水素によるある程度の殺菌作用に比べると力は強そうです。

もちろんマヌカハニーもはちみつであることに変わりはありませんから、一般的なはちみつが持っている効果も併せ持っていると考えて差し支えありません。そういった意味では、乳酸菌とはあまり相性がよくなさそうですね。

また、マヌカハニーは高価ですし、そのせいか偽物も多く見られると聞いています。どれが本物かなんてことは、なかなか見分けがつきませんよね。

ニュージーランドの養蜂業者が販売しているマヌカハニーと一般のはちみつを比べてみたところ、500g入りでマヌカハニーが約2500円、普通のはちみつは約1000円でした。

これに日本までの運賃と25.5%の関税と、現地と日本の通関業者や販売業者の手数料がかかります。場合によっては500g入りで1万円近くなる可能性もありますね。

特恵関税の対象になれば無税ですが、それは枠がありますのであまり期待できないと思います。もちろんマヌカハニーが大好きな人なら、それを支払っても値打ちがあると思いますので、どうぞ健康のために利用して下さい。

一方、ヨーグルトとはちみつと言う組み合わせで考えている人の場合は、国産のはちみつを上手に利用されるのが良いでしょう。そのほうが経済的でお得だと思いますよ。

マヌカはギョリュウバイという名前で園芸店などで求められます。日本でも綺麗な花を咲かせる上、花期も長いので楽しめますよ。はちみつもいいですがそういう楽しみ方もあります。

過酸化水素で乳酸菌が死んでも値打ちはある

もし普通のはちみつの過酸化水素が多くなっていて、乳酸菌がたくさん死んでしまっても、それはビフィズス菌を増やすグルコン酸が増えているということでもありますから値打ちはあります。

さらに、乳酸菌は死菌の菌体成分が免疫力向上に役立つことはよく知られていますね。ですから、生きて腸まで届かせることばかりを意識しないのであれば、どんどんはちみつとヨーグルトを組み合わせるのは良いことです。

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