カスピ海ヨーグルトの乳酸菌、クレモリス菌FC株の効果がすごい

カスピ海ヨーグルトと言う、独特の粘りを持ったヨーグルトがあります。今のところフジッコとグリコから発売されていますが、乳酸菌の内容は少し異なります。

また、フジッコからはスターター(種菌)も発売されていますから、これを利用して自分で作ることもできます。メーカーも推奨している通り、植え継ぎも可能ではありますが、かなり注意深くやらないとお腹を壊します。

ちょっと特殊な感じがするカスピ海ヨーグルトの扱い方と、栄養や健康効果について見てみましょう。

フジッコの製品が多くの効果をアピールしている

カスピ海ヨーグルトという名前はフジッコの製品名ですが、グリコのものも「おいしいカスピ海」と言う、近い名前で販売しています。

▼(左)フジッコ:カスピ海ヨーグルト、(右)グリコ:おいしいカスピ海
カスピ海ヨーグルトとおいしいカスピ海の商品イメージ

カスピ海ヨーグルトを作っている乳酸菌は、ラクトコッカス属ラクティス種クレモリス亜種(通称:クレモリス菌)と言う菌です。

フジッコの製品ではFC株という菌株を使用しています。グリコの「おいしいカスピ海」と言う商品でも、もちろんクレモリス菌を主役として使っています。グリコのものは、通称クレモリス乳酸菌CHCC2907株と言う名前です。

このクレモリス菌は、他の多くの乳酸菌と同じように菌体外多糖(EPS:エキソポリサッカライド)と言う物質を細胞の外に作り出します。そして、クレモリス菌の作り出す菌体外多糖が、カスピ海ヨーグルトの独特の粘りを出しているのです。

カスピ海ヨーグルトの一番の効果は整腸作用

カスピ海ヨーグルトも発酵乳ですので、整腸作用を持っていることは言うまでもありません。また、クレモリス菌はフジッコのFC株だけではなく、世界的に有名なチーズスターターであるMG1363株も生きて腸まで届く菌だということが知られています。

つまり、クレモリス菌自体が菌株にかかわらず、プロバイオティクスである可能性が高いのです。

ところが、グリコのおいしいカスピ海シリーズでは、整腸効果を含めて、一切の健康効果をアピールしていません。

その理由は全く不明です。クレモリス乳酸菌CHCC2907株は、菌体外多糖を作り出していることは間違いありませんし、それはヨーグルトの粘り気を見れば判ります。

もしかすると、機能性表示食品である自社のBIFIXシリーズとの競合を嫌ったのかもしれません。健康効果をアピールするには、クレモリス菌よりビフィズス菌の知名度のほうが圧倒的に上ですから、そうしたビジネス上の戦略があったのかも知れませんね。

あるいはフジッコが先発メーカーとしてたくさんの健康効果を謳っているので、正面から対抗することは無意味だと判断したのかも知れません。

「カスピ海ヨーグルトが健康に良いのは当然だから、ウチは『美味しさ』で勝負する」と言った方向性でのアピールが目立つようにも思います。

クレモリス菌FC株には多くの効果が見つかっている

フジッコのカスピ海ヨーグルトも特定保健用食品や機能性表示食品ではありませんので、ヨーグルトそのものに健康効果が謳われているわけではありません。しかし、フジッコはさまざまな学術研究を通じて、クレモリス菌FC株の有効性をアピールしています。

そこで示されている健康効果には次のようなものがあります。

  • 整腸効果による腸内環境の改善
  • 免疫調整効果によるアレルギーの改善
  • 免疫賦活効果による感染症予防
  • 血中脂質改善によるメタボリックシンドロームの予防・改善
  • 血糖値の上昇抑制による糖尿病の予防・改善
見れば、他の乳酸菌でも確認されている効果ばかりですが、1つの乳酸菌で全部揃っているのは見事ですね。でも、カスピ海ヨーグルトは美味しい食べ物であって万能薬ではありません。

毎日の食卓に載せるヨーグルトの一つとして、カスピ海ヨーグルトも候補に挙げておく値打ちがあるということだと考えて下さい。

あの粘り気が気持ち悪いと感じる人もいるようですが、そうした場合は普通のプレーンヨーグルトにしておいたほうが良いでしょう。美味しく楽しく食べられないと意味がありません。

カスピ海ヨーグルトの乳酸菌と健康効果

カスピ海ヨーグルトというのは、普通のヨーグルトとは全く異なる発酵形態を持っています。そのため、あの独特の粘りのあるテクスチャや、低い発酵温度という特色があります。そして、あの粘りが健康効果を持っているということもあるのです。

一方、必ず意識しておいて欲しいことは「カスピ海ヨーグルトは万能薬ではなく、他のヨーグルトと同じように、個性を持った美味しい発酵食品に過ぎない」と言うことです。

カスピ海ヨーグルトの主役はクレモリス菌

カスピ海ヨーグルトというのは、日本で作られた商品名で、世界共通のものではありません。元々は長寿研究を行っていた京都大学の先生が、コーカサス地方から持ち帰ったヨーグルトから単離された乳酸菌と酢酸菌を基に作られたものです。

コーカサス地方の発酵乳と言えばケフィアが有名ですね。このケフィアにはたくさんの乳酸菌や酵母が含まれていますが、カスピ海ヨーグルトは、そこから単離された酵母以外の菌を使って作っているのです。

なぜ酵母を使わなかったのかというと、日本の食品衛生法では容器を密封しなければいけないからなんです。酵母が生きていると二酸化炭素を出しますので、容器が爆発してしまいます。

これは想像ですが、日本の法的規制に則った上で、ケフィアの健康効果を得るために開発されたのがカスピ海ヨーグルトなのではないでしょうか。

脇役が変わると味が変わる

フジッコのカスピ海ヨーグルトでは、クレモリス菌FC株と一緒に、アセトバクター属オリエンタリス種FA株(通称:酢酸菌FA株)と言う菌を共培養しています。

酢酸菌FA株自体は特にヨーグルトの品質に貢献する部分はないのですが、クレモリス菌が作りすぎる乳酸を代謝することで、ヨーグルトを安定させ、植え継ぎを行いやすくしているとされています。

ところが、酢酸菌は好気性菌なので、ヨーグルトの上面付近に浮いて繁殖します。このため黄色っぽい膜が張ったようになったり、味の面では酸っぱくなりすぎたりすると言う問題がありました。それを解消する特許技術を物にしたのがグリコです。

クレモリス菌自体はチーズのような香りがする発酵香を持っていますが、時としてそれが強くなりすぎることもあります。酢酸菌によって酸っぱくなりすぎたり、チーズ香が強くなりすぎたりすることに対して、グリコが取った対策は、酢酸菌の代わりに別の乳酸菌を用いることでした。

そこで使われたのがラクトコッカス属サーモフィルス種(通称:サーモフィルス菌)GCL1129株です。サーモフィルス菌は一般のヨーグルトによく使われている乳酸菌ですね。

グリコはこの菌をスターターとして販売していません。ですので、完成品としてのヨーグルトを買い求めるしかないんです。また、そのヨーグルトを種にして家庭でカスピ海ヨーグルトを作るのは難しいかもしれません。

と言うのも、クレモリス菌は27℃くらいを発酵温度として求める中温発酵菌であるのに対して、高温を好む高温発酵菌であるサーモフィルス菌の発酵好適温度は45℃くらいなのです。これをどのようにして両立させているのかは公開されていません。

ですので、家庭で作ろうとすると、臭いがキツすぎるヨーグルトか、粘りのないヨーグルトができてしまう可能性があります。グリコのカスピ海ヨーグルトは、市販製品を買って食べるだけにしておきましょう。

クレモリス菌だけでなくラクティス種の乳酸菌全般にチーズスターターであることが多いです。そのため、カスピ海ヨーグルトもチーズ香がすることがあるんですよ。

カスピ海ヨーグルトの自作は種菌を利用する方が良い

さて、そこでカスピ海ヨーグルトの自作について見てみます。カスピ海ヨーグルトに限らず、大抵のヨーグルトは製品として市販されているものをスターター(種ヨーグルト)として使うことで、新しいヨーグルトを作ることができます。

でも、最初は種菌として売られているスターターを利用して始めるのが、失敗な少なくておすすめです。

その際に注意しておかないといけないのは、ヨーグルトができるということは、他の細菌によって牛乳が腐敗するのにも良い環境が整っているということです。有用ではあるものの、乳酸菌もまた細菌であると言うことを忘れてはいけません。

スターターは通販で買える

フジッコから発売されているカスピ海ヨーグルトのスターターは、2袋入りで税込み800円あまりです。自分でカスピ海ヨーグルトを作るのならこれを利用しましょう。

別にフジッコの宣伝をするつもりはありませんが、自分でヨーグルトを作る際には、どんなヨーグルトであっても、原則としてスターターを購入して作るのが最も安全です。

多くのヨーグルトスターターは使い切りか、植え継ぎを行っても子の代までで、孫の代は作らないほうが良いと言われています。しかし、カスピ海ヨーグルトは上手に種ヨーグルトを保存すれば3か月は持ちます。

ですので、1袋あたりにすれば高価なカスピ海ヨーグルトのスターターですが、上手に使うと2~3ヶ月は植え継げます。そこまでの維持は難しいかもしれませんが、基本的な注意事項を守れば1か月は持つでしょう。

カスピ海ヨーグルトを手作りする時の基本的な注意

カスピ海ヨーグルトを手作りする際には、いくつか守らないといけないことがあります。これを軽視すると健康を損ねることがありますから、必ず守って下さい。このことは、他のヨーグルト作りにも共通する部分がありますが、発酵温度や植え継ぎの方法などでは異なる部分もあります。

まず第一に、絶対に守らないといけないことです。それは「他人から種ヨーグルトをもらわないこと」という事です。世の中には親切心から、自分が作っているカスピ海ヨーグルトを、種ヨーグルトとして他人にプレゼントする人がいます。

しかし、これは危険極まりないことですので、絶対に止めて下さい。もらうことももちろんですが、市販のスターターから作ったものであっても、絶対に他の人に種ヨーグルトとして渡してはいけません。

ヨーグルトというのは、一度作るとその際に多かれ少なかれ環境中の細菌や酵母が混入します。ですから、ヨーグルトとしてできあがった物を種ヨーグルトとして植え継ぐことは、自己責任の下で行わないといけないのです。

ヨーグルトの歴史の中では、他人から貰った種ヨーグルトを植え継いで行くことで広まったという事実は確かに存在します。しかし、その歴史の中には「失敗してダメになったりお腹を壊したりした」と言う負の歴史も、口には出されないだけで、数多く含まれているのです。

今は、安全な種菌スターターが販売されているのですから、それを利用するのが正しい選択だと思います。

菌株を特定してスターターを作ることは、個人では事実上不可能です。まず、スターターとして培養している菌が、正しいものかどうかを特定できる技術がないと、それを作っても意味がありません。

また、スターターを購入して、自分の家の中でそれを植え継いで行った場合でも、新たに作るたびに雑菌の混入と繁殖の機会は増えて行きます。

ですから、カスピ海ヨーグルトのように植え継ぎが可能なものであっても、一か月ぐらいごとに新しいスターターで作るほうが安全です。

道具は完全に消毒して使い牛乳も開封直後に使う

これはカスピ海ヨーグルトに限った話ではありませんが、ヨーグルトを作る際には、すべての道具を熱湯で消毒して下さい。発酵容器はもちろん、撹拌用のロングスプーンや発酵容器のフタも、しっかり消毒しなければいけません。

私の消毒方法はこんな感じです。

  1. 寸胴にお湯を沸かす
  2. 発酵容器と中蓋、外蓋、ロングスプーン、それを熱湯から引き上げるためのトングを入れる
  3. 完全に煮立った状態で15秒以上消毒する
  4. その間に、別に沸かしておいた熱湯をバットに注いでこれも消毒する
  5. 熱湯を切ったバットの上に、寸胴の中にあるものを全部引き上げて、水分を切る
  6. 発酵容器に牛乳とスターターを入れて撹拌し、フタを締めたら発酵開始!

フタを閉める時まで、容器はトングで扱い、容器の内側を手で触れてはいけません。

牛乳は開封と同時に発酵容器に注ぎます。冷蔵庫に保管しておいた牛乳ですから、発酵容器が多少暖かくても、牛乳を注げば適温になります。

ちょっと面倒ですが、この殺菌消毒をきっちりやっておくとおかないとでは、ヨーグルトの品質に大きな差が出ます。家庭でできるこの方法で、ヨーグルト作りで混入する雑菌を最小限に抑えられるでしょう。やけどには気をつけてくださいね。

もちろんすべての器具は耐熱温度105℃以上のものを使用して下さい。120℃以上くらいのものが安心ですね。

種ヨーグルトの保存は冷蔵庫で1週間以内

カスピ海ヨーグルトができたら、容器の中央部からヨーグルトを取り出し、あらかじめ消毒しておいた容器に入れて冷蔵庫で保存して下さい。中央部というのは水平方向だけでなく、上下方向にも中央部です。

カスピ海ヨーグルトのスターターには2種類の菌が入っていますが、表面を好む菌と、底の方を好む菌がいるからなのです。軽く混ぜてから、中央部を取り出すと良いでしょう。

その種ヨーグルトは1週間以内に次のヨーグルトを作るために使って下さい。それ以上時間が経つと、雑菌が繁殖したり、カスピ海ヨーグルトの菌が弱ったりしてダメになります。

また、カスピ海ヨーグルトの種ヨーグルトは、一か月くらいなら冷凍保存できるとメーカーも言っていますが、実際冷凍したものを解凍して種ヨーグルトに使う場合は、少し多め~2倍程度の量を入れたほうが良いでしょう。

さらに、発酵時間も長めに取ることをお勧めします。大丈夫だと言われていますが、私の経験では、冷蔵保存したものと同じ量しか入れないと、同じ時間では発酵しきれません。おそらく冷凍保存することで、相当数の菌が死滅していると思われます。

また、発酵完了直後に取り出した物以外を種ヨーグルトに使うのもダメです。食べ残しのヨーグルトで植え継ぎをやると、カスピ海ヨーグルトではなく「腐った牛乳」ができるかも知れません。

美味しく作るポイントは発酵温度

カスピ海ヨーグルトの人気の秘密は、発酵温度が低いことにあります。普通のヨーグルトは40℃~43℃くらいの発酵温度を維持する必要がありますが、カスピ海ヨーグルトは20℃~30℃で発酵します。

ですので、いわゆる「室温で発酵」させることができるため、手軽な印象があるんですね。

とは言うものの、30℃を超えると菌が弱りますし、普通のヨーグルトの発酵温度である40℃になるとカスピ海ヨーグルトの菌は死滅します。

基本的に「人がいる部屋の温度」であれば、大抵は大丈夫でしょう。特に夏場は、夜間に発酵させて、朝には冷蔵庫に移すくらいのスケジュールが良いと思います。

税込み22600円と、少々高価ですがカスピ海ヨーグルト専用メーカーがフジッコからリリースされています。

▼カスピ海ヨーグルトメーカー、カスピ君
カスピ君商品イメージ

発酵至適温度の27℃をキープするだけでなく、発酵終了後一時的な保冷庫としても機能しますから、出かけている間に作っておきたい人などに便利そうですね。

納豆のように事前の熱湯消毒もなし、味噌や醤油のように塩分を使うこともなしで、牛乳と乳酸菌だけで作るヨーグルトは、充分以上に雑菌対策が必要なのです。

老化防止効果を持つもう一つの隠れたカスピ海ヨーグルト

先にお話したように、カスピ海ヨーグルトとして売られているのはフジッコとグリコの製品だけです。さらに言えば、グリコのものは「おいしいカスピ海」と言う商品名ですから、フジッコのものだけと言って良いのかもしれません。

しかし、クレモリス菌による発酵をカスピ海ヨーグルトの定義とするなら、日本にはあと2つカスピ海ヨーグルトがあり、それらには老化防止効果があるのです。

カスピ海の名前を冠さないクレモリス菌発酵食品

国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構(通称:農研機構)がチーズスターターから発見した、生乳由来のクレモリス菌H61株と言う乳酸菌があります。

農研機構によると、この菌そのものや、この菌で作られた発酵乳を、老化を促進させたマウスに与えたところ、骨密度が上昇したり、毛づやが良くなったり、免疫力がアップしたりというアンチエイジング効果が見られたということです。

(参照:マウスの老化を抑制する作用を有するプロバイオティック乳酸菌H61株|国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)

このH61乳酸菌を使ったヨーグルトが2種類作られています。メジャーメーカーの製品ではないので通販で入手することになると思いますが、商品名を紹介しておきます。

  • 常陸農業協同組合・「Lilia(リリア)」のむヨーグルト・乳酸菌H61株
  • 小美玉ふるさと食品公社・いきいききれいをめざすあなたへ。・H61ヨーグルト

▼(左)「Lilia(リリア)」のむヨーグルト、(右)いきいききれいをめざすあなたへ。

いずれも茨城県にある会社ですが、これはこの乳酸菌を研究している農研機構の研究所が茨城県にあって、産官学研究のパートナーである筑波大学も茨城県にあるからではないかと思います。

菌が生きていなくても効果がある

おそらくこのことは他のカスピ海ヨーグルトでも同じで、クレモリス菌自体の働きというより、菌が作り出した菌体外多糖にその効果があるのでしょう。

H61乳酸菌については厚生労働省も農研機構の発見として、公式サイトで紹介していますが、そこには「乳酸菌H61株は菌が生きてない死菌体でも老化抑制作用がある。」と書かれています。

(参照:乳酸菌H61株の老化抑制作用の実証|厚生労働省)

この乳酸菌はチーズスターターから分離されたことからも判るように、単独でも発酵乳を作る力があります。一方、フジッコとグリコの製品を比べてみると判るように、酢酸菌と組み合わせたり、サーモフィルス菌と組み合わせたりもできます。

この2つの製品についてはH61乳酸菌以外の菌についての公表はありませんので、どんな菌と組み合わせているのか、あるいは単独発酵なのかは不明です。それでも整腸効果と老化抑制効果は期待できるでしょう。

この2つのヨーグルトは結構知られているようですが、カスピ海ヨーグルトの仲間だとは、あまり気づかれていないようですね。
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