手作り乳酸菌化粧水はすぐ腐る!使うなら研究されたメーカー製が安心

ヤクルトが乳酸菌発酵技術を応用した化粧品を作っていることから、一躍乳酸菌化粧水に注目が集まりました。

少し前には、月桂冠酒造など大手の酒蔵が発酵技術を応用した化粧品を作り始め、話題になったこともありますね。

化粧品に使われている発酵技術による成分については、各メーカーの企業秘密ですので、ある程度以上は明らかにされていません。こうしたものの原理を使って手作り化粧品ができるのでしょうか。

今や乳酸菌は割合簡単に入手できます。ヨーグルト用の種菌を求めれば、不純物も少ないでしょう。そうしたことを踏まえて考えてみました。

乳酸菌化粧品に生きた乳酸菌は含まれていない

乳酸菌化粧品というアイテムについては、乳酸菌による発酵で作り出された成分が、例えば保湿なりの効果を狙って配合されているわけで、生きた乳酸菌が入っているわけではありません。

もし生きた乳酸菌が入っていたとしたら、開封したヨーグルトと同じ程度の期間しか日持ちしません。乳酸菌によって化粧水に含まれる糖質が代謝されてどんどん乳酸が増え、酸性の刺激が問題になるレベルになるでしょう。

また、糖質が使い尽くされると、エサがなくなって乳酸菌は全部死滅し、その後には空気中の雑菌が入り込んで腐敗します。

「乳酸菌発酵エキス」…?乳酸菌による化粧水の成分の詳細は不明

化粧品メーカーが使用している、発酵技術による化粧品成分については先に書いたとおり、企業秘密の部分が多く詳細は不明です。

例えば「乳酸菌発酵エキス」と言った、漠然とした表現で、アレルギーの関係から牛乳を発酵させたのか、豆乳を発酵させたのかぐらいの情報しか示されていないのが現実です。

ですから、化粧品メーカーの宣伝広告を見て、どのような肌の状態に効果があるのかをよく理解して使用するのが良いでしょうね。もちろん、このことは乳酸菌が使われているいないにかかわらず、すべての化粧品に共通することです。

そしてもう一つ大事なことがあります。その化粧品が自分の肌に合うか合わないかは、かならず事前に目立たないところでテストしてから使って下さい、と言うことです。

いわゆる低刺激タイプの化粧品であっても、自分にとっては合わないというケースはいくらでも存在します。もともと顔の肌と言うのはかなり頑丈なものですから、刺激性より体質に合う合わないの方を重視した方がいいですね。

生まれてから死ぬまで、ずっと裸で過ごすのは顔と手の先ぐらいです。それだけ外界からの刺激を受けるチャンスが多いので、たいていの人は「面の皮が厚い」し、頑丈な皮膚を持っているのが普通なのです。

化粧品の多くは保湿効果を狙っている

顔のような強い皮膚の部分であろうと、内もものようなデリケートな皮膚の部分であろうと、表皮を通り抜けて真皮に到達できる物質はそう多くありません。一定より小さな分子でないと通過できないわけですね。

ですので、表皮の最も外側にある、死んだ細胞でできた角質層だけに行き渡ることで充分効果が発揮できる「保湿成分」が、皮膚表面から投与する薬剤である「化粧品」の中心的な役割になります。

保湿成分は真皮にまで浸透するより、角質層にとどまって水分が逃げてゆくことを防ぐほうが効果的だと言うわけなのです。

そこで効果が期待できるのが多糖類です。多糖類は、いわゆる「ぬるぬる成分」であることが多いのですが、これが角質に浸透することで、角質層の荒れをおさめ水分蒸発を抑制します。

例えば、片栗粉を水にといて加熱すると糊状になりますね。これを皮膚に塗っても、それが乾いてパリパリになり脱落するまでは皮膚の水分を保ちます。

片栗粉の主成分はでんぷんです。でんぷんはαグルコースが多数集まった多糖類なのです。もちろんでんぷん糊を化粧品に使う訳にはいきませんが、原理としてはそんな感じなのです。

乳酸菌は細胞の外側に多糖類を作り出す働きがある

乳酸菌は炭水化物を代謝してエネルギーとして利用する時に、乳酸などの有機酸を作ることで腸内環境を整えてくれますね。その時に使えないタイプの炭水化物や、余分な物を細胞外に押し出します。

それが細胞外多糖(EPS:エキソポリサッカライド)として構成されます。この多糖類には、お腹の中でできた場合、さまざまな生理的効果を持つことが知られています。

例えば明治プロビオヨーグルトR-1に使われている乳酸菌が持っている免疫力アップの効果は、この細胞外多糖によるものです。菌によっては老化抑制効果を持つ細胞外多糖を作るものもあります。

残念ながら、乳酸菌の細胞外多糖は、皮膚表面から与えても、免疫賦活効果や老化抑制効果はありません。

しかし、多糖類として保湿効果を持つのは間違いないでしょう。

その効果を「乳酸菌発酵エキス」として化粧品に配合しているのだと思われます。

保湿効果はいろいろな物質が持っていますが、いかに長時間有効で、いかに皮膚に悪影響を与えないのかがポイントになりますね。

手作り化粧水を作る場合は使い切りを基本にする

世の中には化粧水などを手作りされる人も少なくありませんが、その際に注意しておかなければいけないことがあります。つまり手作り化粧水の危険性ですね。

その中で最も大きなものは「手作り化粧水には防腐剤が入っていない」と言う危険性なのです。

手作り化粧水はすぐ腐る

古来からの手作り化粧水である「へちま水」は、へちまの茎を切断して、そこから出てくる液体を集めたものです。小学校の理科で習いましたね。実際に採集した人も多いでしょう。

しかし、天然のこの化粧水はそのままではすぐ腐ります。ですので、煮沸殺菌して冷所に保管します。今なら冷蔵庫がありますから、コーヒーフィルターのようなもので濾過して煮沸殺菌、冷蔵保存すれば1~2週間は持つでしょう。

とは言うものの、実際に腐敗菌がどの程度繁殖しているかは、シャーレに寒天培地と言ったシンプルな方法でいいので、培養して観測しないと判りません。

そして、その菌が大した毒性のない菌なのか、皮膚に炎症を起こす物質を分泌する可能性がある菌なのかは、少なくとも培養後顕微鏡で覗かないと判りません。

メーカーで作られている化粧水などは、防腐剤を添加することでそのリスクを避けています。防腐剤によるリスクのほうが、雑菌繁殖で皮膚炎を起こすリスクより低いという判断からですね。

また、防腐剤無添加のものでは、実際に使用するのと同じ環境に置いて雑菌を繁殖させ、何日ぐらいなら大丈夫かという研究も行っているでしょう。

ですから、個人で手作り化粧品を作る場合は、1回使い切りで作ることをお勧めします。レシピは皆さんお好みのものでいいですが、作ったらすぐ使い、残ったものは捨てることを徹底すれば、リスクは避けられます。

皮膚は弱酸性なので酸性の成分を与えることの問題は少ない

手作り化粧品と言って良いのかどうか判りませんが、ヨーグルトパックは、ほかの手作り化粧品よりは腐敗菌による皮膚炎などのリスクが少ないと言えるでしょう。

パックというよりは、ヨーグルトをまんべんなく顔に塗って、そのあと水で洗い流すだけの簡単な方法です。ヨーグルトは低脂肪などではない、普通のプレーンヨーグルトを使って、開封してすぐのものを使いましょう。

ヨーグルトは弱酸性です。健康な皮膚もまた弱酸性ですから、酸によるトラブルはそれほど気にしなくても大丈夫でしょう。しかし、ヨーグルトを長時間塗っておくことはお勧めできません。

あらかじめ顔を洗顔石鹸などできれいに洗って、ヨーグルトを顔全体に行き渡らせたら、あまり時間を置かず洗い流して下さい。この際には石鹸や洗顔料を使わず水だけで洗うことが重要です。

ヨーグルトパックはヨーグルトに含まれる乳脂肪と、乳酸菌が作り出す細胞外多糖を角質表面になじませるのが目的です。ですので、長時間おいておくと逆効果です。

ヨーグルトには乳酸が含まれていますので、それが必要な角質までを溶かして剥がれやすくしてしまい、せっかくの保湿成分ごと捨てる結果になるからです。

開封後の残ったヨーグルトは美味しく食べて下さい。パックは毎日行わないほうが良いので、400gサイズを買って、最初をパックに使ったら、残りを食べきる数日後にまた行うと言うペースでいいでしょう。

ご家族が多い場合は、そのパック入りヨーグルトを自分専用にするか、曜日を決めて行うのもいいですね。

乳酸菌自体を顔に塗るのはあまりお勧めできない

乳酸菌は腸内環境を改善する善玉菌だから、肌に塗っても安心と言う考え方をする人もいますが、これは良くありません。塩酸は胃液の主成分で悪い菌を殺してくれるから、塩酸を顔に塗っても安心と思う人はいないでしょう。塩酸は劇薬です。

小腸に棲み着いているラクトバチルス属ガッセリー種(通称:ガセリ菌)や、大腸に棲み着いているビフィドバクテリウム属細菌(通称:ビフィズス菌)はいずれも乳酸菌です。

そうした乳酸菌が常在する環境にあってこそ外来の乳酸菌も善玉菌として働けるのです。皮膚に乳酸菌は棲んでいません。ですのでそれを皮膚に塗っても、リスクがありこそすれ、効果はそれほど期待できないでしょう。

皮膚の主役はアクネ菌

皮膚に棲み着いている菌を皮膚常在菌と言いますが、この菌については割合誤解が多いようです。最も大きな誤解は、どのくらい常在菌が棲んでいるのかという「数」の問題です。

ナリス化粧品の研究グループによると、最も多かったのは、プロピオニバクテリウム属アクネス種(通称:アクネ菌)で、研究対象になったすべての人から検出され、その数は平均で1平方cmあたりおよそ1万個でした。

次に多かったのは、スタフィロコッカス属エピデルミディス種(通称:表皮ブドウ球菌)で、研究対象になった人のおよそ8割から検出され、その数は平均で1平方cmあたり1000個には届かないレベルでした。

ほかにもいくつかの菌が検出されていますが、多くても1平方cmあたり数十個、ほとんどは数個というレベルです。ですので皮膚常在菌は、多くても1平方cmあたりせいぜい15000個と言ったところでしょう。

(参照:皮膚常在菌の皮膚状態に与える影響|株式会社ナリス化粧品 研究室)

また、例えば身長155cmで体重53kgの人の場合、体表面積はおよそ15000平方cmになりますから、この人の皮膚常在菌は2億2500万個ということになります。

腸内細菌は100兆個以上の数字が出てきますので、それに比べると桁違いに少ないのですが、これは「腸の内容物」に相当する物質が、開放された皮膚には存在しないからです。

皮膚常在菌は肌のメンテナンスを行っている

上で名前を挙げたアクネ菌や表皮ブドウ球菌は、汗や皮脂を分解して脂肪酸やグリセリンを作っています。アクネ菌は「プロピオニバクテリウム」と言う属名の通り、プロピオン酸を作り出します。

プロピオン酸は短鎖脂肪酸で、皮膚表面を弱酸性に保つことで外来の病原菌などを排除しています。腸の中の乳酸菌とよく似た働きですね。

また、リパーゼという脂肪分解酵素を作り出し、それが皮脂を分解することで、脂肪酸を遊離させます。これも同じように皮膚を酸性に保ちますが、皮脂が多すぎて脂肪酸の量が増えすぎると炎症を引き起こし、ニキビを悪化させます。

一方、脂肪酸が遊離した後の脂肪はグリセリンになります。グリセリンは優秀な保湿成分で、化粧水などの成分を見てみると、たいてい名前が載っているほどの成分です。

そうした天然の保湿成分が皮膚常在菌によって供給されているのに、お肌の状態がよくないのは、一つは洗いすぎによる角質層の喪失に原因があります。アクネ菌も表皮ブドウ球菌も角質層に棲んでいます。

皮膚トラブルには受診と乳酸菌食品の摂取を

さらにアレルギー疾患や消化器系の病気などで、皮膚トラブルが起こることでも皮膚炎などの良くない症状が現れます。

こうした現象には医薬品レベルの外用薬が必要です。そして乳酸菌を利用するのであれば、乳酸菌による発酵食品を食べて、内側から改善するほうがよほど現実的です。

皮膚トラブルは外側から手当したくなりますし、生活習慣・食習慣の見直しで症状が改善するには数か月単位で時間がかかります。

ですから、じっくり時間をかけて乳酸菌による発酵食品を食べ続けると同時に、皮膚科へ通って適切な治療を受けましょう。

例えば、肌が毛羽立ったり粉を吹いたようになったりして、かゆみもあるのであれば、皮膚科で治療してもらうには充分な状態です。

現実の治療はお医者さんの判断ですが、ヘパリン類似物質のクリームやローションが処方されることも多いと思います。刺激がなくてよく効くお薬ですよ。

そこまで酷くないのであれば、じっくり生活習慣を見直しましょう。

皮膚表面は、乳酸菌にとってアウェーなのです。塗るとしても乳酸菌が作り出した物質だけにしておいた方がいいですね。

化粧品メーカーはしっかり研究している

化粧品にはさまざまな成分が含まれていて、それがお肌に良くないのではないかと考える人も少なくありません。もちろん、その可能性は完全に否定できるものではありません。

一方で、その疑念の根拠は「感覚」にすぎないことも多いのです。昭和40年代くらいまでによく見られた食品公害のように、「大メーカーは金のためなら毒でも使う」と言うイメージで捉えているのでしょう。

しかし、現実には当時の反省を踏まえて、食品も化粧品も安全性は格段に高まっています。メーカーにしても防腐剤を使わずに済めば、防腐剤の値段の分だけ原価を下げられますので、その方がありがたいんです。

防腐剤などの毒性を心配する人は、その「質」の部分ばかりを気にしますが、最も大切なのは「量」の方なのです。どんなに強力な毒物でも、許容量未満の摂取ならば毒性は発揮されませんし、どんなに安全なものでも食べ過ぎれば健康を害します。

その量の方を気にせずに「防腐剤が危険だから手作り化粧品が良い」と決めつけて、腐敗による毒物を大量に肌に塗り込まないよう気をつけるべきなのです。

個人では乳酸菌は食べるだけにしておいて、乳酸菌化粧水は、しっかりした研究を背景に、有効成分だけを分離配合したメーカー製のものを使うほうが安全だと思います。

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