クレモリス菌の効果。カスピ海ヨーグルトのとろーり成分のチカラ

カスピ海ヨーグルトというと、独特の粘りを持つヨーグルトとして知られていますね。ヨーグルトの固形成分は、一般的に乳たんぱくが凝集したものです。しかし、カスピ海ヨーグルトの粘りは、別の物質によってもたらされています。

それは「多糖類」つまり炭水化物なのです。

もちろん乳たんぱくの凝集もありますが、多糖類がもたらす独特の粘りは、食感の改善だけでなく健康に役立つ効果を持っています。

この粘りの成分は、クレモリス菌によって作り出されるものなのです。さて、このクレモリス菌の健康効果とはどのようなものがあるでしょうか?

クレモリス菌は免疫力アップや血糖値上昇を抑える効果がある?

名前の通り、菌体外多糖(エキソポリサッカライド・EPS)は、細菌が自分の周囲に作り出す多糖類のことです。

多糖類と言っても、その種類は非常に多く、サラサラしたものからネバネバしたものまで、色々な種類があります。

この多糖類にも大きく分けて、単糖類だけで組み上げられている中性の多糖類と、リン酸基を多く含む酸性の多糖類があります。私たちの健康に特にいい影響を持っているのは、どうやら酸性の方に多く見られるようですね。

菌体外多糖は菌の作り出すアイテム

例えば、ストレプトコッカス属ミュータンス種(通称:ミュータンス菌)は、自分の周りに粘着力の強い菌体外多糖を作り出し、それが歯垢になって歯に貼りつきます。

菌体外多糖はバイオフィルムと呼ばれるものの構造を作るものでもありますが、ミュータンス菌は、その中で唾液の影響を受けずに乳酸を出して虫歯を作り出せるというわけです。台所のぬめりも雑菌によるバイオフィルムです。

菌体外多糖は悪いものばかりではありません。割合多くの乳酸菌で見られる「胃酸に耐えて生きて腸まで届く」と言う現象も、菌が自分の出した菌体外多糖に包まれることで、胃酸の影響を受けにくくしているからだと考えられています。

詳しい分析はまだまだですが、一部の乳酸菌では、この菌体外多糖を「お弁当」に使っている可能性も示唆されています。もちろん、多くの菌では自分の出した細胞外多糖を栄養には使えません。

それでも例えば、ストレプトコッカス属サーモフィルス種(通称:サーモフィルス菌)やラクトバチルス属ラムノーサス種(通称:ラムノーサス菌)の一部の菌株では、周囲に栄養物が足りなくなると細胞外多糖の粘性が下がることが確認されています。

つまり、自分の周りにある菌体外多糖を分解して、栄養に使っている可能性があるということです。

クレモリス菌は細胞外多糖を多く作り出す

クレモリス菌は、ラクトコッカス属ラクティス種クレモリス亜種と言うのが本名です。クレモリス菌と言えばカスピ海ヨーグルトですが、カスピ海ヨーグルトのメジャーメーカーであるフジッコは、ヨーグルトも種菌も販売しています。

実際のところ、このフジッコにせよ、デンマークの菌株メーカー、クリスチャン・ハンセン社にせよ、クレモリス菌をコーカサス地方の発酵乳やチーズスターターから単離しただけであって、コーカサス地方のヨーグルトを完全再現しているわけではありません。

その点が、東欧を中心としたヨーグルトから分離されたブルガリア菌とサーモフィルス菌の組み合わせとは異なるところです。この2つの菌は、そのままでヨーグルトが作れるという特徴を持っています。

一方、例えばフジッコの「カスピ海ヨーグルト」はクレモリス菌FC株にアセトバクター属オリエンタリス種の酢酸菌を混合して発酵させています。

▼フジッコ カスピ海ヨーグルト
カスピ海ヨーグルト商品イメージ

一方、グリコの「おいしいカスピ海」は、クリスチャン・ハンセン社のクレモリス菌CHCC2907株とサーモフィルス菌の組み合わせでヨーグルトを作っています。CHCCは”Chr.Hansen Culture Collection”(クリスチャン・ハンセン 培養菌コレクション)の頭文字です。

▼グリコ おいしいカスピ海
おいしいカスピ海商品イメージ

もちろん、どちらにもクレモリス菌が作り出す菌体外多糖が含まれていて、独特の粘りと、それによる健康効果が充分期待できます。

グリコの方では整腸効果以外の効果は示されていません。これは整腸効果以外の効果がないというわけではなく、CHCC2907株について、突っ込んだ研究が行われていないと言うだけです。ですから現段階ではそれ以外の効果があるともないとも言えないのです。

一方、フジッコのFC株については、多くの研究が行われていて、菌体外多糖による免疫力アップやアレルギー症状の改善、血糖値上昇の抑制など、さまざまな効果が見つかっています。

カスピ海ヨーグルトは見た目で菌体外多糖の存在がよく分かるのが、ビジネス的にはアピールポイントになると言えるでしょう。食感も面白いですしね。

クレモリス菌は他の発酵乳にも見られる

もともとはフィンランドとスカンジナビア半島の北欧地域で食べられているヴィーリと言う発酵乳があります。今ではEU諸国や、遠くアメリカでも人気が出ているようですね。

このヴィーリは、牛乳をクレモリス菌とクリベロマイセス属マルキシアヌス種などの酵母で発酵させたものです。

ヴィーリはケフィアに似ているが粘りが強烈

コーカサス地方の発酵乳、ケフィアにもクレモリス菌と酵母が含まれます。コーカサス地方はカスピ海に面していますから当然かもしれませんね。

しかし、遠く離れた北欧とでは、酵母の種類や、クレモリス菌自体の種類も変わるのでしょう。ヴィーリの粘りはカスピ海ヨーグルトとは比べ物になりません。スプーンですくったら、あふれて流れ落ちる分に引っ張られて、スプーンの上にヴィーリが残らないくらいです。

ヴィーリ画像
(出典:Finnish Viili Culture|Yemos Nourishing Cultures)

このヴィーリのクレモリス菌の菌体外多糖の効果については、やはり酸性の菌体外多糖による免疫賦活効果が注目されています。

アメリカやイギリスでも市販品があるようですから、出かける機会があったらスーパーなどを探してみて下さい。面白い食感のヨーグルトが楽しめると思います。スペルは”Viili”です。

粘りが少ないタイプのクレモリス菌もある

クレモリス菌H61株は粘りが少ないタイプのヨーグルトを作ります。このH61株の菌体外多糖は、アンチエイジング効果が動物実験で認められている乳酸菌です。

公的機関である農研機構が持っている菌株で、2つの会社から発酵乳製品として発売されています。詳しいことは関連記事をご覧ください。

▼関連記事
乳酸菌でアンチエイジング!効果が期待できる市販ヨーグルト6つ

▼カスピ海ヨーグルトについてはこちらの記事で
カスピ海ヨーグルトの乳酸菌、クレモリス菌FC株の効果がすごい

ヨーグルトに粘りを持たせる物質にこんな力があったというのは驚きですね。でも、カスピ海ヨーグルト以外にはこうした力はないのでしょうか。実はそんなことはないのです。

菌体外多糖に秘められたさまざまな健康効果

菌体外多糖は、乳酸菌などの細菌が菌体外に作り出すもので、健康に役立つ「バイオジェニックス」と呼ばれるものの一つです。そして、乳酸菌にはもう一つのバイオジェニックスがあります。

それは死んだ乳酸菌の菌体そのものです。殺菌菌体ではなく生きて腸まで届く乳酸菌でも、生きた乳酸菌を摂れば一個一個の個体には寿命がありますから、たくさん摂ったりたくさん増えたりすれば、それだけ菌体成分も得られやすくなります。

菌体外多糖の中には菌体成分も混じっている

どの程度混じっているかはわかりませんが、発酵の途中で死んだ乳酸菌の菌体成分は、そのままヨーグルトの粘りの中に含まれています。

そしてその菌体成分は、小腸のパイエル板など、腸の中のリンパ組織のある場所で人間の免疫システムと出会います。すると、菌体成分のうち、細胞壁を構成する多糖類や、細胞実質の中にある核酸が免疫細胞を刺激して活性化させるのです。

また、菌体外多糖自体も免疫システムを活性化させます。そうしたことから、カスピ海ヨーグルトやケフィア、ヴィーリなどは免疫力アップにつかがると考えられているのです。

菌体外多糖は消化されるものもある

菌体外多糖はでんぷんのように消化されるものもあれば、食物繊維のように消化されないものもあります。消化されるものは、そのあと栄養として吸収されます。

一方、消化されないものは菌体成分と同じように、腸の中にあるリンパ組織などを刺激して免疫力の向上や、アレルギーの抑制作用などを持つものもあります。

さらには食物繊維と同じように、コレステロールの吸収を抑えたり、腸内善玉菌であるビフィズス菌の増殖に貢献したりする場合もあるのです。

そういった意味では、菌体外多糖を多く作り出す乳酸菌のほうが、何となくお得感がありますよね。そして、菌体外多糖を多く作り出すものは、生きて腸まで届きやすいという特徴もあるのです。

粘りだけに効果があるのではない

さて、ここまでクレモリス菌の菌体外多糖の効果について見てきたわけですが、実は細菌というのは多かれ少なかれ菌体外多糖を作り出す働きを持っています。最初に少し触れましたが、病原菌も菌体外多糖を作り出します。

ですから、他の乳酸菌も菌体外多糖を作り出しますし、それに大きな効果が見られる場合もあるのです。粘りがなくても、ヨーグルトにはしっかり健康効果があるんですよ。

特に有名なのは、明治プロビオヨーグルトR-1に使われているR-1乳酸菌ですね。「強さひきだす」のキャッチコピーに見られる通り、免疫力アップをアピールしています。

このR-1乳酸菌は、最もポピュラーな乳酸菌の一つ、ブルガリア菌の1073R-1株という1菌株なのです。そして、その免疫賦活効果は菌体外多糖によるものなのです。

ですから、ヨーグルト選びは粘りの強さではなく、食べてみて自分の体調が良くなるかどうかで判断して下さい。

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