乳酸菌が肉を柔らかくする!ヨーグルトの正しい活用法と注意点

ステーキやローストビーフは、肉汁たっぷりで柔らかい食感だと美味しいですね。でも、実際には加熱中にどうしても固くなりパサついてきます。それを防ぐのが、事前に肉を何かに漬け込むマリネードです。

オリーブオイル、赤ワイン、ビネガー、果汁などに、塩やハーブ、香辛料を加えたものが漬け汁としてよく用いられますね。一方、醤油、味噌、塩麹、酒粕などに漬けるのもマリネードの一種と考えて良いでしょう。

そして、ヨーグルトもマリネードに最適なのです。乳酸菌がもたらす美味しくて健康的な肉料理を楽しみましょう。

肉は全脂ヨーグルトで準備しておくことで柔らかく焼きあがる

ちょっと難しいのは塩だけで調味した場合ですね。塩で味をつけておくと、水分が抜けやすくなるということは経験上知っている人も多いでしょう。しかし、塩を揉み込んでおくと、肉の繊維の間に水分が入るスペースが開くということもあるのです。

そこで、加熱の仕方を工夫することで、肉汁が逃げないようにするわけです。グリルで焼くもよし、フライパンで焼くも良しですが、それにはそれなりの技術が必要になります。

オイルと酢でマリネードすると焼き上がりがしっとりする

オリーブオイルとワインビネガーを合わせたものに肉を漬け込み、1時間ほど置いてから焼くと、それほど火加減などを気にしなくてもしっとりと焼きあがりますし、食感も柔らかくて食べやすくなります。

また、赤ワインだけに2~3時間漬け込んだものでも同じような効果が得られますし、オイルを使わない分、あっさりさっぱりした食味が楽しめます。

もちろん、その時にコショウやローズマリーなど、好みのスパイスやハーブを一緒に漬け込むと、いい味に仕上がることは言うまでもありません。

その他、漬け汁にレモン果汁や、鶏肉などではオレンジ果汁もよく利用されますね。最近は洋風の味付けの場合でも、塩麹を使うというテクニックがよく用いられます。

ヨーグルトでも同等以上の効果が得られる

特に牛肉とヨーグルトは相性がいいです。同じ牛から得られるものだけに、無理のない組み合わせになるのでしょうね。鶏肉や羊肉でも悪くありません。個人的には、豚肉とは少し違和感を覚える組み合わせだとは思いますが、それはそれで旨味と感じる人もいるようです。

これは他の漬け汁を使う時でも同じですが、表面だけにマリネードの効果が現れると、かえってパサつきの原因になることもありますので、かたまり肉や厚めのステーキ肉の場合、事前に金串やフォークなどで、たくさん深い穴を開けておくと美味しく仕上がります。

もちろん、薄切り肉の場合その必要はありません。充分なじませてからソテーすれば問題なく焼きあがります。

ヨーグルトでマリネードした燻製牛肉写真
(出典:Smoked Yogurt Marinated Beef Roast | Terroir Seeds)

上の画像は、2.5センチ厚に切った肉の上に、ヨーグルトとレモン果汁、塩、コショウ・ガーリック・クミン・キャラウェイ・ニンニクなどを混ぜたものを塗り、それを巻き込んで調理用タコ糸で縛ったものです。

この状態でアルミホイルに包んで4~5時間冷蔵庫でなじませ、そのあと石炭グリル(なぜかkamadoという日本語で表現されてました)で2~2.5時間ローストすれば出来上がりだそうです。

ヨーグルトは、レモン果汁やワインビネガーなどの持つ「酸性の効果」と、オリーブオイルが持つ「脂質の効果」、それに赤ワインや塩麹などが持つ「酵素の効果」をすべて併せ持つ優れた調味料なのです。

最近人気の「乳脂肪ゼロのヨーグルト」では、脂質による食味改善効果は期待できません。調理用には必ず全脂ヨーグルト(普通のプレーンヨーグルト)を使いましょう。

大事なのは保水力!肉には穴を多くあけてヨーグルトをなじませて

肉を焼くとパサついてしまうのは、保水力が低く水分が流れ出してしまうからです。ですから、焼く前に肉に水分が保持されやすいような状態を作っておくことで、ジューシーな肉を楽しめるようになります。

そのためには、肉の中に充分な水分を保持するための空間が必要になります。その空間を作り出してくれるのが酸性環境なのです。

pH5.0未満の酸性が保水力を上げる

新鮮な肉の保水力はpH5.0くらいで最低になります。つまり、それより酸性でもアルカリ性でも保水力は向上します。このpH5.0と言うのは、筋たんぱく質の等電点ですので、一概には言えませんが、新鮮な食肉だとこのあたりになりやすいでしょう。

生体の肉はほぼ中性のpH7.0あたりですが、食肉として加工される間に、筋肉中の乳酸や、屠畜の際に用いられる二酸化炭素の影響によってpHは下がって行くのです。

これは必要な食肉の条件で、例えばオージービーフの枝肉格付けを見ると、pH5.7より中性に近いと規格外品として扱われてしまいます。

つまり、良いお肉だと保水力が低いので、何らかの下処理をしないと、焼いた段階でパサつきが出やすいということになるのです。

この下処理は、塩をなじませるだけでも効果があります。先にお話したように、焼き方が良くないと塩だけによる保水力向上には限界があります。そういった意味ではステーキ屋さんなどの調理はプロの技術と言えるでしょう。

さて、pHですが5.0あたりが最低だとして、実は酸性に傾くほど保水力は急激に向上します。中性に傾く向きではそれほど一気に向上するわけではありません。pH4.5と同じ程度の保水力はpH6.0くらいでないと得られないのです。

pH4.5と言うと、だいたいヨーグルトと同程度です。牛乳に含まれるたんぱく質の等電点はpH4.6ですので、それより酸性でないと固まりませんが、最近では酸味が強すぎるものが嫌われるので、結構ギリギリの線を見切ったようなっものも多いですね。

水素イオン同士の反発力が保水力を向上させる

先に少し触れた等電点というのは、イオン化する物質があり、その中で陽イオンと陰イオンの全体の電気的なバランスが取れるpHのことを指します。つまり、等電点においてはどちらかのイオンが多いということがないのです。

ですから、等電点から酸性またはアルカリ性にずれた場合、どちらかのイオンが過剰になり、同じ極性同士のイオンによって反発力が発生します。

例えば、上で挙げたpH5.0という等電点より酸性に傾くと、水素イオン濃度が高くなります。水素イオンはプラスの電荷を持っていますので、プラス同士の反発力によって筋繊維同士の間隔が押し広げられます。

その広げられた空間には水分が入り込めますので、保水力が高まるというわけです。もちろん逆に中性からアルカリ性方向に傾いた場合は、マイナスの電荷による反発力が発生しますから、やはり保水力は向上します。

しかし、アルカリ性に傾いた肉は苦味やエグミが出て美味しくないので、酸性を利用するのです。もちろん酸性に傾けたほうが保水力アップの効率も良いですしね。

レモンやオレンジなど、フルーツの果汁はクエン酸などの有機酸によって結構強めの酸性ですね。また、ワインビネガーも酢ですから酸性ですし、赤ワインには酒石酸やリンゴ酸が含まれることによってやはり酸性です。

ヨーグルトも乳酸菌が作り出した乳酸によって、最低でもpH4.6以下の酸性が保証されていますので、肉の保水力向上にはとても役に立ちます。

一つだけ注意したいのは、ヨーグルトには固まったカゼインと、わずかながら粘性を持つ菌体外多糖による粘りがありますので、果汁やワインより染み込みにくいことです。

事前に肉に開ける穴は大きめで、数も多めにしておいたほうが、ヨーグルトの馴染みが良いでしょう。

肉の食感の話で、イオンなどと言う理科の授業で聞いたような単語が出てくるとびっくりです。だから学校の勉強はちゃんとしておいたほうが良いのです。「こんなの何の役に立つの?」と言う、勉強嫌いのお子さんに教えてあげてくださいね。

肉を柔らかくしてくれるのは酵素の働き

肉を焼くと固くなるのは、筋繊維のたんぱく質が変性して、筋繊維が締まってしまうからです。ですので、焼く前に筋繊維を構成するたんぱく質を、分子レベルで適当に切断しておくことが、柔らかい肉の秘訣になるのです。

その時に働いてくれるのがたんぱく質分解酵素です。この酵素も、酸性でよく働くため、酸性環境に漬け込むことが大切になるのです。

フルーツで肉を柔らかくするのも酵素

酢豚に生パイナップルを合わせたり、固い牛肉に青パパイヤを合わせたりして、肉を柔らかくして食べるというテクニックは、割合良く知られていると思います。

これはそうしたフルーツに含まれているプロテアーゼというグループの酵素が、肉のたんぱく質を部分的に分解して、結合力を弱めることで食味食感を改善しているのです。

プロテアーゼは酸性環境でよく働くものが多いです。例外的にアルカリ性でよく働くメロンのプロテアーゼや、酸性・アルカリ性のどちらでもOKな洋梨のプロテアーゼがありますが、基本的には酸性環境を好むようです。

フルーツに含まれているものは、クエン酸などフルーツ自体の持つ有機酸によって酸性環境にあるからちょうど良いとも言えるでしょう。

なお、缶詰のパイナップルは加熱工程を経ていますのでプロテアーゼは完全に失活しています。また、酢豚という、肉に二段階に加熱を行う調理方法では、やはりプロテアーゼは失活します。

下ごしらえの段階で豚肉に生パイナップルを合わせ、時間を置いてから下揚げを行うと効果が出ます。揚げる前に取り除いたパイナップルは、野菜と一緒に加熱調理して、甘味と酸味の効果を利用しましょう。

また、完熟パパイヤは果実の中でプロテアーゼが失われていますので、青パパイヤを使ってくださいね。基本的にはどのフルーツも加熱前に肉とよくなじませて下さい。

ヨーグルトには乳酸菌がもたらす酵素

このプロテアーゼは、フルーツだけでなく、動物の消化酵素としても存在しますし、乳酸菌などの細菌やコウジカビなどの真菌が持っていることもあります。発酵調味料が肉を柔らかくしてくれるのはこのおかげなのです。

ヨーグルトの場合、ラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種(通称:ブルガリア菌)とストレプトコッカス属サーモフィルス種(通称:サーモフィルス菌)の2つの乳酸菌で作られ、それに機能性乳酸菌などが付加されることはほとんどです。

ブルガリア菌は、プロテアーゼの分泌によってたんぱく質を分解する力が強い乳酸菌です。一方、サーモフィルス菌はたんぱく質分解酵素をほとんど持ちません。ブルガリア菌が消化してくれたたんぱく質を利用しています。

逆にこのサーモフィルス菌は、ブルガリア菌が増殖するのに必須のギ酸という有機酸を素早く大量に作り出すことによって、ブルガリア菌の増殖を後押ししています。この共生発酵によってヨーグルトは作られているのです。

ですから、生肉にヨーグルトをよくなじませて時間を置き、それから加熱調理することで肉を柔らかく仕上げることができます。そして、ヨーグルトによって酸性に傾けておくことで保水力もアップします。

さらに、ヨーグルトの乳脂肪が肉質を改善してくれるという効果も期待できるでしょう。

焼く前にヨーグルトを拭い取るかどうかは、調理法によって異なります。基本的に拭わなくてもいいですが、焦げが気になるようでしたら、拭い取っておいてもいいですよ。

使ったヨーグルトはソースとして免疫力アップに使える

フライパンで調理した場合、焼き上がりには肉汁と混じったヨーグルトが残ります。そこにワインやブイヨンを加えて伸ばし、煮込んでから塩コショウで味を整えるとソースができます。

もちろん事前に拭い取った場合はそれも入れて下さい。オーブンで焼いた場合は、切り分ける時に落ちた焼きヨーグルトを利用しましょう。

乳酸菌の菌体成分は2回役に立つ

ヨーグルトの乳酸菌は加熱調理で全滅します。しかし、焼きあがったヨーグルトの中には、乳酸菌の菌体成分はそのまま含まれています。

その菌体成分は、まず小腸にあるパイエル板などのリンパ組織で免疫細胞と出会い、それに働きかけて免疫力を向上させ、アレルギーによる炎症を抑制するなどの働きを持っています。

さらに、大腸に送り込まれた菌体成分は、そこに棲む善玉菌の代表、ビフィズス菌によって利用され、その増殖に役に立ってくれるのです。

生きて腸まで届くのは別の乳酸菌に任せよう

このように、ヨーグルトを加熱調理前の肉質改善に使った場合、加熱調理によって乳酸菌は全部死滅してしまいます。

このことは、逆に言えば最初から死んでいるので、「生きて腸まで届くかどうか」を気にする必要がないということです。

殺菌菌体が持っている免疫調整機能や、善玉菌に利用されるという性質だけを期待しておけばいいので、気が楽ですね。

生きて腸まで届く乳酸菌は、それを謳い文句にしたヨーグルトをそのまま食べることで、お腹に送り込んでやれば良いのです。できれば食後に食べると、胃酸が薄まっていますから、より生きて腸まで届きやすくなるでしょう。

殺菌菌体成分の効果に特化した乳酸菌材料も、意外にたくさん販売されています。シールド乳酸菌が有名でしょう。

他の発酵食品と合わせてもOK

魚の粕漬け、肉の味噌漬け、最近では塩麹漬けも人気ですね。これらも発酵調味料の微生物による食味食感の改善効果を利用しています。

これらは乳酸菌より、真菌類であるコウジカビの働きが中心になっていますが、こうしたものとヨーグルトを合わせても、美味しい漬け汁が作れます。

菌同士の競合はほとんど起こりませんので、安心して味のことだけを考えて組み合わせてみて下さい。きっと食卓が豊かになるでしょう。

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