乳酸菌が効くメカニズム。なぜ人の身体に効果があるのか

乳酸菌はお腹の調子を整えるという機能で、特定保健用食品の関与成分としても指定されるほど人の身体に良い働きを持っています。もちろん乳酸菌はただの細菌ですから、むしろ人の身体が体内で利用していると考えたほうが妥当かもしれません。

その効果の範囲は広く、腸内環境の改善にとどまらず、免疫力をアップしたり、アレルギーを改善したりというものまで見られます。そのメカニズムについて見て行きましょう。

なぜ乳酸菌は人の身体に良い働きを持っているのか

人体への効果は、乳酸菌が乳酸と言うを有機酸を生み出す能力を持っていることと深い関係があるのです。また、ビフィズス菌が乳酸と一緒に作り出す酢酸は、単に環境を酸性に傾けるだけでなく、殺菌効果もあるため、さらに健康に役立ってくれます。

しかもそうした有機酸は人間が栄養にできないものから作られ、作られた有機酸は人間のエネルギーになるという優れた性質もあるのです。

乳酸菌が活躍すると他の菌が生きにくくなる

普通の細菌は中性の環境を好みます。pH6.0~7.0くらいがベストですから、弱酸性がお好みのようですね。そして、pHが5.5から5.0くらいに酸性に傾くと生育しなくなります。一方、悪玉菌の代表のように言われる大腸菌は酸性に強く、pH4.5ぐらいまでは生育を続けるのです。

(pH:水素イオン濃度。pH7.0が中性で、数値が1小さくなると水素イオン濃度は10倍に増え、酸性に傾き、数値が1大きくなると水素イオン濃度は1/10になりアルカリ性に傾きます。)

乳酸菌は、自分自身が乳酸という酸を出すため酸性環境に強く、pH4.0くらいまでは生育を続けます。ヨーグルトができるにはpH4.6以下の酸性である必要があります。それ以上の数値では牛乳のたんぱく質成分であるカゼインが固まってくれません。

ですから、乳酸菌が活躍できる環境は、いわゆる悪玉菌が生きて行けなかったり、生存はできても居心地が悪かったりすると言えるのです。このことが整腸作用に大きな役割を持っています。

大腸の乳酸はそのままではエネルギーになりにくい

食物繊維とは、人間の消化酵素では分解することができない炭水化物のことです。消化吸収できませんから、栄養吸収の大半を担う小腸を素通りして大腸に送り込まれます。

大腸では水分や塩分以外の吸収はほとんど行われませんし、消化機能もほとんど持っていません。一方で、腸内細菌は大腸に棲んでいるものが最も多く、大腸という場所を借りて炭水化物の発酵を行っています。

善玉菌だけではなく、いわゆる悪玉菌も大腸でたんぱく質などを分解して利用し、悪臭のもととなる物質を放出しています。お腹の調子が悪くなるとおならや便が臭くなるのは、この影響もあるのです。

乳酸菌は食物繊維などの炭水化物を発酵させて乳酸を作り出し、悪玉菌を減らしてくれますが、この乳酸はそのままではあまり人間の役に立たないのです。

他の有機酸を見てみると、例えばビフィズス菌が乳酸と同時に作り出す酢酸は、短鎖脂肪酸に分類される有機酸ですが、大腸の上皮細胞はこれを取り込んでエネルギー源として利用できるのです。

つまり、小腸で吸収され、肝臓で代謝されたエネルギーを血液経由で受け取らなくても、自前でエネルギーを準備できるんですね。ですから、善玉菌による短鎖脂肪酸の供給が減ると、大腸がエネルギー不足になります。

一方、乳酸菌が出した乳酸は、別の善玉菌の中に含まれる、乳酸を利用できる細菌によって利用され、プロピオン酸や酪酸などの短鎖脂肪酸に作り変えられますので、そうした菌がいると大腸のエネルギー効率が高まります。

京都府立大学の牛田教授によると、こうした菌は乳酸菌が水溶性食物繊維の供給によって腸の中で増殖した時に、同時に増殖することが動物実験で確認されたそうです。

また、動物実験でフラクトオリゴ糖を過剰に与えて、大腸内の乳酸を過剰にした後、乳酸利用性の酪酸菌を投与すると、乳酸が減って酪酸として利用されることが確認されたとあります。

これらのことから、乳酸菌が活躍するには、乳酸を利用して短鎖脂肪酸を生み出してくれる細菌の存在も重要だということが判ります。そのためには水溶性食物繊維の利用が効果的ということが推測されます。

(参照:プレバイオティクスやプロバイオティクスの効果は乳酸利用性細菌に依存する|京都府立大学大学院農学研究科 牛田一成教授)

このように、乳酸菌は悪玉菌をやっつけるだけでなく、大腸のエネルギー供給にも一役買ってくれていたのです。

人間の消化管の中に棲む乳酸菌は悪玉菌と陣取り合戦をする

乳酸菌の中で、腸の中に定着しているのはビフィズス菌です。また、ラクトバチルス属の乳酸菌の一部が、数こそ少ないものの小腸を中心に棲息しています。

こうした細菌は、日和見菌や悪玉菌と呼ばれる他の細菌と、常に陣取り合戦を行っています。乳酸菌が生存しやすく、さらには増殖しやすい環境だと、腸の中の環境が良くなって健康に役立つのです。

腸に定着できない乳酸菌も定着した善玉菌を助ける

乳酸菌の多くは口から摂っても胃酸で殺菌されてしまい、生きたまま腸まで届きません。何とか腸まで届いても、十二指腸で消化液に出会い殺菌されることもあります。

それに耐えて「生きて腸まで届く」乳酸菌が、プロバイオティクスとしてもてはやされていますね。もちろん、生きて腸まで届いた乳酸菌は、そこで炭水化物を栄養に増殖し、乳酸などを作り出します。

先にも少し触れましたが、善玉菌である乳酸菌に比べると、いわゆる悪玉菌は酸性の環境に弱いです。ですから、乳酸菌が優勢になると悪玉菌は減る可能性があるのです。

しかし、ほとんどの場合、増殖し乳酸を出したとしても、その乳酸菌が腸に定着することはあまりありません。それは腸内細菌として定着している菌が、腸の中で縄張りを持っていて、他の菌を排除するからです。

ですから、もし悪玉菌の数を減らすことができたとしても、その縄張りを奪うのは、もともと定着している他の菌が勢力を伸ばすことで行います。酸性環境では、ビフィズス菌が勢力を伸ばせる可能性は高くなります。

一方、たまたま腸の中に定着しているのと同じ菌や、定着している菌と共生できる菌が入ってきたら、そのまま定着できることがないわけではありません。

完全に定着できるということは確認されていませんが、雪印メグミルクのラクトバチルス属ガッセリー種SBT2055株(通称:ガセリ菌SP株)は、50%の確率で90日以上人の腸に定着したそうです。

死んだ乳酸菌もビフィズス菌を増やす

乳酸菌を加熱殺菌して菌体成分にしたものを摂って、腸内のビフィズス菌の状態を調べたところ増えていたという試験結果もあります。

つまり、乳酸菌の菌体成分がビフィズス菌を増やすのに役立ったということですね。

ですから、ヨーグルトなどを食べて、その乳酸菌が胃や十二指腸で死んでしまったとしても、腸内の善玉菌の大半を占めるビフィズス菌を増やす効果はあるということなのです。

その他、乳酸菌の菌体成分は、余分な脂質や老廃物の排泄に役立つという、食物繊維的な効果も持っているのです。

乳酸菌の菌体成分が免疫を調整してくれる

死んだ乳酸菌の菌体成分が、腸内細菌としてのビフィズス菌を増やすということは、上でお話したとおりですが、その他にも乳酸菌の菌体成分には大きな健康効果があることが知られています。

それは、免疫システムに働きかけて免疫力をアップし、あるいは免疫システムの状態を調整することでアレルギーを軽減したりしてくれる効果です。

乳酸菌を分解してみるといろいろ免疫に良い効果がある

乳酸菌は細菌の一種ですので、細胞核はありませんし、細胞壁があります。私たち動物の細胞と最も異なるところですね。動物の細胞には細胞核がありますし、細胞壁はありません。

乳酸菌はグラム染色という細菌を2分類するためのテクニックで、紫色に染まる「グラム陽性菌」です。グラム陽性菌は陰性菌に比べると、細胞壁がとても分厚くなっています。

そして、その細胞を構成する成分の大半がペプチドグリカンと言う、アミノ酸と糖がたくさん繋がった物質です。例えばサプリでおなじみのグルコサミンの誘導体が、他のアミノ糖と繋がっているケースも見受けられます。

このペプチドグリカンが腸の上皮細胞に触れると、体液中の「樹状細胞」が活性化されます。樹状細胞とは免疫細胞の一つで、排除対象となる細菌やウイルスの情報を、攻撃を担当する免疫細胞に伝える記録係です。

つまり予防接種や感染・発病経験による獲得免疫がよく効くようにする働きを持っているのです。

一方、獲得免疫だけでなく、「ナチュラルキラー細胞」や、「Th1細胞」のような自然免疫を担当する細胞も、このペプチドグリカンによって活性化されます。

乳酸菌の中身も免疫力アップに役立つ

乳酸菌の細胞壁の内側には細胞膜がくっついていて、その内側には細胞内物質が詰まっています。そしてその中には遺伝情報を持つDNAやRNAなどの核酸が含まれているのです。

この細胞内物質も免疫に良い効果をもたらしますが、注目されるのは核酸です。特に一本鎖RNAと言う核酸は、乳酸球菌・乳酸桿菌・ビフィズス菌のいずれにおいても免疫増強の効果があると判っています。

この事実を確認した実験では、それぞれの菌から1種類を選んで行っていますが、乳酸菌とひとまとめに呼ばれるものの、分類上は全く異なる3種類の菌で、共通して効果が見られたことから、乳酸菌に共通するメカニズムだと考えられるのです。

これらのことから、乳酸菌が死んだあとに残る菌体成分は、菌の種類を問わず免疫を改善する効果があると言えます。しかし、菌株ごとにその効果の強弱はあるでしょうから、そこは菌株メーカーの情報も参考にすれば良いと思います。

乳酸菌は死んでからも役に立つと言いますが、それはこう言うことだったのです。前に紹介した有機酸を作り出す能力は生きた菌にしかありません。

乳酸菌が作り出す有機酸以外の物質

乳酸菌は乳酸や酢酸、アルコール、二酸化炭素と言った低分子の物質ばかりを作り出すのではありません。比較的分子量の大きな多糖類を作り出すこともあるのです。

こうした多糖類は、菌体外多糖(エキソポリサッカライド・EPS)と呼ばれていて、免疫賦活機能を中心に健康効果が研究されています。

多糖類と言えば、食物繊維も多糖類ですし、乳酸菌はそこから単糖を切り出して栄養にし、その結果乳酸を作り出すわけですから、ある意味糖の組み換えを行っている部分もあるんですね。

カスピ海ヨーグルトの粘りは多糖類による

一般的なヨーグルトの固形部分は、乳酸によって牛乳の中のたんぱく質が凝集したものです。それに対してカスピ海ヨーグルトには、独特のどろっとした粘りがあります。

この粘りこそが乳酸菌によって作られた菌体外多糖なのです。この粘りは、ラクトコッカス属ラクティス種クレモリス亜種(通称:クレモリス菌)によって作り出されています。フジッコのクレモリス菌FC株が有名ですね。

この菌体外多糖が、免疫力アップに繋がるということが研究でわかっています。また、多糖類ですから、おそらく食物繊維的に働くのでしょう、食後の血糖値上昇を抑制する働きも知られています。

日本ではあまり知られていませんが、フィンランドのヴィーリと言うヨーグルトも、カスピ海ヨーグルトに負けず劣らず強い粘りを持っています。

フィンランドのヴィーリヨーグルト
(出典:Big In Finland)

実は、このヨーグルトを作り出しているのもクレモリス菌なのです。クレモリス菌と言えば、カスピ海や黒海のあるコーカサス地方ばかりが有名ですが、そこから北西に数千kmと言うフィンランドでも活躍しているのです。

ヴィーリの菌体外多糖も免疫を強化する働きを持っていることが知られていて、この多糖を作り出すクレモリス菌KVS20株は、上の写真の通り、非常に大量の菌体外多糖を作り出すことで有名なのです。

粘りが弱い多糖類もある

明治プロビオヨーグルトR-1に配合されている、ラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種 OLL1073R-1株(通称:R-1乳酸菌)は、強い免疫賦活効果によって、インフルエンザや風邪を予防することから人気を博しています。

このR-1乳酸菌による免疫賦活効果も、菌体外多糖によってもたらされていることは、あまり知られていないようです。

R-1乳酸菌が作り出す菌体外多糖は、クレモリス菌のものに比べると粘りが少ないため、あまり多糖類が関係しているというイメージに繋がらないからかも知れませんね。

菌体外多糖は栄養にできない糖を利用している

砂糖やでんぷんも、オリゴ糖や食物繊維も、全て単糖類というもっとも基本的な糖が組み合わさってできています。でんぷんのようにすべてグルコース(ブドウ糖)からできているものは例外的で、むしろ、さまざまな単糖の組み合わせのほうが多く見られます。

例えばヨーグルトができる時に利用される乳糖は二糖類で、グルコースとガラクトースが1分子ずつ組み合わされてできています。乳酸菌はこれをそのまま取り込んで、細胞内で2つに切り分け栄養にします。

グルコースはすべての乳酸菌がエネルギーとして使えますし、そこら乳酸が生まれますが、ガラクトースは利用できる菌と利用できない菌がいます。利用できない菌は、それを菌体外に押し出して菌体外多糖の原料として利用するのです。

他にもフルクトーズ(果糖)やマンノースなどいろいろな単糖が組み合わさって、数多くの少糖類(オリゴ糖)や多糖類(食物繊維やでんぷんなど)が作られています。それを利用した乳酸菌は、一部を菌体外多糖の原料として使います。

ですから、菌体外多糖にも色々なものがあって、全部に免疫賦活作用があるわけではありません。そのあたりについては、メーカーから示される情報を参考にしましょう。

この菌体外多糖については、まだまだ世間に認識されていないようです。カスピ海ヨーグルトはテクスチャから特別視されますが、ほかの乳酸菌でも健康に役立つものを作っていることもあるんですよ。

乳酸菌は生きていても死んでいても役に立つが方向性は異なる

近年注目される用語に「プロバイオティクス」と言うものがありますが、これは生きた菌の働きで健康に役立つものと言う意味ですから、最初にお話しした有機酸などを作り出すことで腸内環境を整えてくれる部分を指しています。

さらに、悪玉菌との陣取り合戦で、善玉菌が優勢になるよう助けるのもプロバイオティクスとしての要素が強いです。

一方、死菌の菌体成分や菌体外多糖など、乳酸菌に由来する成分の方は「バイオジェニックス」と呼ばれるものになります。

こうした呼び分けについては、別の記事に詳しいのでそちらを見て下さい。

▼参考記事
【用語比較説明】プロバイオティクス・プレバイオティクスの違いとは

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