味噌には乳酸菌と酵母がたくさん!60℃の味噌汁がローフードに

味噌は醤油と同じ、大豆と塩を原料に、麹で発酵させた発酵食品です。そのため塩分が多く、塩分に耐えられる菌でないと発酵にかかわることは困難になります。

そういった面で、醤油と同じテトラジェノコッカス属ハロフィルス種の耐塩乳酸菌が活躍するケースが多いのですが、味噌の場合他のタイプの乳酸菌が見つかることも多いようです。

塩分にも負けず、熱にも負けず。どんな菌が私たちに役立ってくれるのかを見て行きましょう。

味噌の乳酸菌の種類はたくさん!健康効果はメーカーのコントロール力による

味噌にはいくつかの乳酸菌が存在しています。

いずれも塩分に強いだけでなく、環境変化に強いタイプの植物性乳酸菌で胃酸にも強く生きて腸まで届くタイプですが、多くは味噌汁になる時に熱で死んでしまいます。

ですが、よく知られている通り、乳酸菌は死菌の菌体成分にも免疫力アップなどの効果が期待できますから、味噌汁も食卓には常に並べたいものです。

植物性乳酸菌は環境変化に強い

上で紹介したテトラジェノコッカス属ハロフィルス種の乳酸菌が最も多く見つかってはいますし、味噌醸造用乳酸菌として売られているのはこの菌ですが、私たちに馴染みがある物としてラクトバチルス属プランタルム種も見られることがあります。

植物性乳酸菌の話題になるとよく出てくる菌ですね。この菌の中で耐塩性が強い菌株が味噌の醸造で活躍しています。

また、以前はテトラジェノコッカス属ハロフィルス種と同属とされていたこともある、ペディオコッカス属アシディラクティシィ種やペントサセウス種の植物性乳酸菌も味噌から分離されます。

アシディラクティシィ種はどちらかと言うと嫌われ者です。この菌は麹の中に棲んでいることが多く、繁殖しすぎると味噌が酸っぱくなってしまうのです。

幸いなことに他の菌に比べると耐塩性が少し低いので、しっかり塩を利かせれば抑えることができます。

その他、ラクトバチルス属フラクチヴォランス種やストレプトコッカス属フェカリス種(通称:フェカリス菌)などの乳酸菌も、味噌を酸っぱくしてダメにする菌です。フェカリス菌自体は健康にいい菌として有名なだけに難しいところですね。

とは言え、増えすぎるとトラブルを起こすこれらの乳酸菌も、バランスよく発酵が進んでいると、味噌の味や見た目を良くする働きがありますし、健康に良い効果も持っています。そのコントロールは味噌のメーカーの腕の見せ所と言えるでしょう。

自家製味噌を作るときにはちょっと注意

市販の味噌を購入して毎日の食卓に並べるだけなら、こうした役に立つ乳酸菌と、味噌をダメにする乳酸菌を意識する必要はありません。メーカーや味噌蔵がコントロールしてくれています。

でも、自分で味噌を仕込む人も増えているようですから、そうした場合には少し注意が必要ですね。

ポイントは「麹の塩切り」と呼ばれる作業です。麹は普通コウジカビの働きでベースになる穀物が、くっついてひとかたまりになっています。これをしっかりほぐしながら、食塩を入れ、均一になじませて行きます。

この際にムラができないよう、均一に食塩を馴染ませることができると、耐塩性の低い菌は死滅するか休眠状態になります。そうすることで味噌作りの失敗を防げるのです。

基本は塩分を控えないことです。長期間の熟成が必要な味噌作りでは、うかつにレシピを変えるとカビまみれになったり、酸敗して食べられないものができ上がったりします。

原料の配合と、熟成のための樽などの容器への詰め込み方などは、レシピをしっかり理解してその通りに行って下さい。そうすれば失敗の少ない味噌作りができるでしょう。

レシピの工夫は、基本の味噌がきちんと仕込めるようになってからですね。その際にも、基本のレシピの味噌と並行して仕込みましょう。でないと、一年間手作り味噌が食べられないと言うことにもなりかねません。

生味噌には乳酸菌と酵母が生きている!保存は冷蔵庫で

味噌は醸造が終わったら、多くの場合加熱殺菌したり、醸造用アルコールを加えたりして発酵を止めます。これは菌が生きていると発酵が進んでしまって色が変わったり、発生する二酸化炭素で容器が膨れたりするため、低温流通が必要になるからです。

常温で流通させることに比べると、低温流通はコストがかかるため、その分製品価格が高くなってしまいます。

ですから、スーパーの店頭で常温棚においてある味噌は殺菌済みまたは静菌処理済みと考えて良いでしょう。

開封後はすべての市販味噌を冷蔵庫で保存して

加熱殺菌した味噌は酵母や乳酸菌が生きていないので、開封すると環境中にいる雑菌が入り込み増殖します。

もちろん塩分がしっかりあるので耐塩性のない菌は繁殖できませんが、環境中には耐塩性を持つ雑菌がいる可能性はあります。

そうした場合、酵母や乳酸菌による競合が期待できませんから、カビが生えたり、腐敗したり、場合によっては野良酵母によって意図しない方向で発酵が進んだりします。

ですから、たとえ常温で販売されていた味噌でも、開封後は「腐敗を防ぐ目的で」冷蔵保存が必要と考えておいて下さい。

殺菌できるほどの高濃度のアルコールは使えない

また、アルコールによって酵母や乳酸菌を「静菌」しているものの場合、開封するとアルコールが揮発してしまって、酵母や乳酸菌が再び活動を始めます。その結果、常温に置いておくと発酵が進んでしまい味噌の質が変化します。

食品に醸造用アルコールなどを添加する場合でも、菌のたんぱく質を変性させて殺菌作用を持つほど高濃度にはできません。そんなことをしたら味噌で酔っ払ってしまいます。一時的に菌の増殖を抑えておくのが精一杯なのです。

でも、そのことは逆に言うと、味噌のたんぱく質も変性させず、加熱殺菌のような熱変性も起こさせずに、常温流通が可能な味噌を供給できるというメリットが得られるのです。

もちろん、完全に菌が生きているとは言えませんが、アルコールを添加した味噌は加熱殺菌味噌に比べると、菌が生きている可能性が高いです。ですから開封したら必ず冷蔵保存して下さい。

つまり、アルコールによる静菌作用だけで常温保存を可能にしている味噌は「開封後の再発酵による発酵の進みすぎを防ぐ目的で」冷蔵保存が必要になるのです。

ただし、加熱殺菌の有無は表示義務がありません。ですから、加熱殺菌してからさらに、品質保持剤としてアルコールを添加したものもあります。

開封後の生菌を期待するのであれば、非加熱をセールスポイントにした味噌を選ぶとか、公式サイトを探して味噌の製法を表示しているものを選ぶなどして下さい。

添加物不使用・非加熱味噌はずっと発酵を続けている

さらに、一切の添加物を使わず、加熱殺菌も行っていない味噌は、冷蔵状態を維持して販売されていますし、容器にガス抜きバルブを付けているケースも割合見られます。

単純に発酵によって発生する二酸化炭素を放出するだけなら、内圧が上がったときだけ開いてガスを逃がすバルブを密封容器に付けておけば間に合います。基本的にはコーヒー豆の袋についているのと同じようなものですね。

しかし、ガスが出るということは発酵が進んでいるということで、消費者の手に渡った時の発酵の進み具合が、メーカーのコントロールから離れてしまいます。

前回購入したときは大豆の色味を残した黄土色だったのに、今回買ったら同じ商品がコーヒー色をしていたというのでは、消費者が不安に思ってしまうこともあるでしょう。

そこで、メーカーは味噌の袋詰工程から、店頭に並ぶまで、ずっと冷蔵状態を維持することになります。これなら発酵はゆっくりしか進みません。その代わり、お値段の方も高くなってしまうということは避けられません。

もちろん、こうした味噌は購入後も冷蔵庫で保存し、開封後はできるだけ早く使ったほうが良いですね。冷蔵庫の中でも温度変化はありますし、使う際には一時的に室温に保管されます。

それが冷蔵の温度に戻るまでの間は、発酵が進みやすくなります。もちろん、それは味噌の「熟成」の部分だと捉えて、味の変化を楽しむほうがお得です。

いずれにせよ、どのタイプの味噌であれ、開封後は必ず冷蔵庫に保存することが鉄則です。自家製の味噌でも、できるだけ低温で保存し、好みの味になったら冷蔵保存するほうが良いですね。

ほぼ全数が火入れまたは濾過除菌を行う醤油とは異なり、味噌は酵母や乳酸菌が生きていることも多いので、保存には注意が必要なのです。

60℃なら菌を生かしたままの味噌汁も可能

一般的な味噌汁は、具材に火が通った段階で火を引いて、出汁が鎮まっている状態で味噌をときます。こうすることで最も味と香りが引き立つのです。

しかし、この際の温度は90℃以上ありますので、酵母も乳酸菌もほとんど死んでしまいます。

でもよく言われる通り、死菌にも健康効果はありますので安心して食べて下さい。

菌を生かしたままにするなら60℃の味噌汁で

味噌を溶く際に、出汁の温度を60℃まで下げてから行うと、ギリギリではありますが酵母も乳酸菌も死滅せずに生き残ります。もちろん酵母の作り出すたんぱく質である酵素も失活しません。

ただし、ぬるいですし味噌の香りもあまり立ちません。正直なところを言うと、熱い味噌汁が好きな私はまずいと感じました。

でも、いわゆるローフード(酵素を目的に生で食べる食品)にこだわりのある人は、この方法を採るとプロバイオティクスとしての味噌を楽しめます。この方法を行う場合、調理用温度計は持っておいたほうが良いですね。

1000円前後で買える、調理用デジタル温度計は0℃~100℃の範囲なら誤差は±1℃までですので、安全を見て59℃で味噌を溶くのが良いでしょう。

酵母や乳酸菌は63℃で15分ぐらい加熱すると殺菌できてしまうものも多いですから、結構微妙なんです。

味噌の乳酸菌は死菌の菌体成分に健康効果がある

味噌や醤油で活躍する耐塩性乳酸菌の代表格、テトラジェノコッカス属ハロフィルス種の乳酸菌は、死菌の菌体成分にアレルギー症状を軽減するという働きが知られています。

これは臨床試験によるもので、そのメカニズム的なもののデータは見当たりませんでしたが、一般的な乳酸菌が持つ免疫調整作用と同じものではないかと思います。

また、味噌を酸っぱくする危険性を持つペディオコッカス属アシディラクティシィ種は、ぬか床にもよく繁殖しています。この菌の菌体成分のうち、核酸である二本鎖RNAが、免疫システムの司令塔の一つ、樹状細胞を活性化することが判っています。

それによって免疫がベストの状態にコントロールされ、感染を防ぐ免疫力をアップさせながら、同時にアレルギーを抑制するという働きも持っているのです。

酵母については菌体成分自体が栄養豊富なので、生きていようが死んでいようが、食べることでビタミンやミネラル、アミノ酸などを摂ることができるのです。

ローフードもいいですが、やはり温度も味のうちですから、「美味しく食べる」ということを重視することで心の栄養にもなると思います。

味噌汁とぬか漬けが健康をもたらしてくれる

これはノスタルジーの部分が含まれているんですが、その昔、食卓にはご飯と味噌汁、家で漬けたぬか漬けが必須でした。それに何かのおかずが付くというのがバブル以前の昭和の食卓だったと思います。

もちろん、徐々に現在の食生活には近づいて行っていたのでしょうが、多数のボイコットが出たモスクワオリンピックが開催された、昭和55年ぐらい頃までは、それが普通だったと記憶しています。

一方、花粉症に代表されるさまざまなアレルギー疾患が、社会問題になるぐらい急増してきたのもこの時期と一致するような気がします。

花粉症もアレルギー疾患も古くから存在した病気だとは思いますが、多くの場合症状が現れにくかったのではないでしょうか。

統計的なデータが有るわけではないので、イメージだけの問題かもしれませんが、ちゃんとした味噌汁とぬか漬けが食卓に並ばなくなったことと、アレルギー症状に悩む人の急増は、無関係じゃないように思えてなりません。

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