乳酸菌と医薬品やサプリメントの飲み合わせ。効果がなくなる具体例

抗生物質を処方された時に、腸内環境が悪化して悪い症状が出ないように、耐性乳酸菌製剤が処方されることがあります。

つまり、耐性を持たない普通の乳酸菌やビフィズス菌は、抗生物質によって殺菌されるということですね。

せっかく乳酸菌を摂っても、このようにお薬やサプリメントによって効果が失われてしまうことがないわけではありません。そうした飲み合わせについて注意事項を見てみましょう。

抗生物質・抗菌薬は乳酸菌も殺してしまう

人間の健康に貢献する生きた細菌のことを「プロバイオティクス」と呼ぶことは、随分一般化したのではないかと思います。

このプロバイオティクスと言う言葉は、アンチバイオティクス(抗生物質:アンチ[反]バイオシス[生きること]からの造語)に対応する言葉として、接頭語をプロ(共に)に変えた「共生生命体」と言う意味で作られました。

プロバイオティクスとしての乳酸菌は細菌の中の一グループですので、抗生物質に弱いですし、もちろん抗菌薬にも弱いです。

抗生物質という言葉は、主に「抗菌薬」と言う意味合いで使われることが多いため、「抗生物質はウイルスには効かない」と言うような表現をされることが多いです。

ただ、抗生物質というのは生命体やそれに近いものに働きかけ、生命維持を阻害するものですので、広い意味では「抗ウイルス薬」「抗腫瘍薬」も抗生物質に含めることがあります。

さらに本来、抗生物質は微生物が作り出して他の細胞や構造体を破壊する効果を持つものですから、化学合成された抗菌薬は厳密には抗生物質ではありません。

でも、働き方は同じなので合成抗菌薬も抗生物質と通称されることが多いですね。

ですので、乳酸菌の敵は抗生物質と合成抗菌薬である、と覚えておいてもらえば良いでしょう。

乳酸菌と病原菌が近い種類であることもある

例えば、とても良く処方されるお薬の一つにレボフロキサシン水和物(商品名:クラビット・ジェネリック多数あり)と言うものがありますが、これは日本で開発された合成抗菌薬です。でも処方されるときには抗生物質と呼ばれることが多いですね。

また、古くからよく使われるアモキシシリン(商品名:サワシリン・ジェネリックあり)はペニシリン系の抗生物質で、微生物によって作り出された物質をベースにしています。

いずれのお薬もグラム陽性菌に広い適応を持っているため、場合によっては乳酸菌を殺菌してしまう可能性があります。(乳酸菌である条件の一つに「グラム陽性菌であること」と言うものがあります。)

特にストレプトコッカス属にはサーモフィルス種というメジャーな乳酸菌が含まれると同時に、ピオゲネス種という猩紅熱の原因菌や、ニューモニエ種という肺炎球菌も含まれます。

ですので、これらの病原菌に有効である場合、サーモフィルス菌にも殺菌的に働いてしまうこともあるのです。つまり、抗生物質であろうと合成抗菌薬であろうと、病原性の細菌を殺す薬は乳酸菌を殺す可能性もあるということなのです。

最初の抗生物質、ペニシリンはペニシリウム属のアオカビが作り出す物質から発見されました。ペニシリウム属は「ペンのような」と言うラテン語から命名された学名です。

腸内善玉菌も抗生物質で死ぬ?

腸内フローラを形成している細菌のうち、いわゆる善玉菌は20%程度で、その99.9%までがビフィズス菌です。ビフィズス菌もグラム陽性菌で、抗生物質によって殺菌されてしまう可能性は充分にあります。

しかし、全部が全部一つの抗生物質で死滅するというわけではありません。ある抗生物質が効く細菌のことを「その抗生物質に感受性を持つ細菌」と言う言い方をします。

そして、抗生物質の効果を示す場合には、「この抗生物質に感受性を持つグラム陽性菌」と言う言い方をするのです。つまり、同じグラム陽性菌であっても、感受性を持たない物には効きませんし、グラム陰性菌であっても感受性を持つ菌は殺菌されます。

腸内細菌も抗生物質で死んでしまうことがある

腸内細菌のビフィズス菌と言っても一種類ではありませんし、同じ種類のものであっても菌株がたくさん存在するケースが普通です。ですから、その中でその抗生物質に対して感受性を持つものは殺菌される可能性があります。

とは言え、ビフィズス菌は少なくとも数十兆個と言う莫大な数が存在していますから、感受性を持つ菌株だけであっても全滅させるのは難しいでしょう。

それに、抗生物質によって死んでしまう可能性があるのはビフィズス菌だけではありません。日和見菌も悪玉菌も、その抗生物質に感受性を持っていれば同じように死んでしまいます。

それでも長期間に渡って服用を続けていると、ビフィズス菌の数が減りすぎてしまうことはあります。そうした場合、ビフィズス菌が占めていた縄張りに、その抗生物質に感受性を持たない別の菌が勢力を伸ばしてくることがあります。

逆に小腸で、本来優勢ではない乳酸菌が、優勢な勢力になってしまうこともあり得ます。乳酸菌が優勢なら良いじゃないかと思われるかもしれませんが、本来のバランスを大きく崩すと、それはそれで不調を招くのです。

こうした症状を菌交代症と呼んで治療の対照とするのですが、場合によっては治療が困難である場合もあります。ですので、菌交代症を引き起こさないよう、抗生物質は注意深く使う必要があるのです。

抗生物質は飲みきることが大切

その対策の一つに耐性乳酸菌製剤がありますが、これも万能ではありません。耐性乳酸菌と言っても、すべての抗生物質・抗菌薬に耐性を持っているわけではないからです。

また、耐性乳酸菌の場合、その耐性遺伝子が別の病原菌によって獲得されるのではないかという心配をする人もいます。確かに、細菌は、別の細菌が獲得した耐性遺伝子を自分のものにする力を持っています。

それには大きく二通りのパターンがあるのですが、今のところ耐性乳酸菌が持つ抗生物質耐性は、他の菌に遺伝情報を伝達しにくいパターンなので、心配はないとされています。

しかしEUでは、プロバイオティクスは抗生物質耐性を持つべきではないと言う規定を設けていますので、100%安心とも言い切れないのかも知れません。

抗生物質はお医者さんが処方してくれた量を、間違いなく飲み、症状がおさまっても全量を飲みきることが大切なのです。自己判断で中止してはいけません。そうすることで耐性菌を生まず、抗生物質がよく効く状態を維持できるのです。

これは、抗生物質によって症状が出ない程度にまで菌が減った段階で抗生物質の服用を止めると、生き残った菌が抗生物質に対する耐性を身に付け、今度はその菌だけが増殖してしまうことがあるからです。

症状がおさまっても、処方された抗生物質を全量飲みきれば、その時にいる病原菌を1匹残らず駆除できますから、耐性を持ってしまった菌が次代に引き継がれることがないというわけです。

ヨーグルトでは絶対に対策できないということは言えない

実験によると、例えばビオフェルミンでは通常のビオフェルミンと、耐性乳酸菌製剤のビオフェルミンRを比べた場合、通常のビオフェルミンは抗生物質によって効果を失うことが確認されています。

とは言うものの、抗生物質によるお腹の不調を予防する目的で、例えばヨーグルトをたくさん食べた場合、もしかすると腸内環境維持に役立つ可能性は否定出来ないと思います。

それは、通常のビオフェルミンはビフィズス菌とフェカリス菌とアシドフィルス菌の3種類がブレンドされているということに起因します。例えば上で紹介したアモキシシリンは、フェカリス菌によく効いてしまいます。

ビフィズス菌やアシドフィルス菌についてはデータが見当たりませんでした。一方、ヨーグルトの場合、少なくともブルガリア菌とサーモフィルス菌、場合によってはガセリ菌やビフィズス菌、さらに多くの菌が含まれていることが多いです。

ですので、中には抗生物質に感受性を持たない菌株が混じっている可能性も出てきますから、ヨーグルトの他、漬物や味噌、酒粕、納豆など発酵食品を積極的にとって対策するのも悪くないと思います。

もちろん、全く役に立たないかもしれないので、ビオフェルミンRやエンテロノンRなどの耐性乳酸菌製剤を処方されたら、それもしっかり飲んでおいて下さい。

感受性と言う言葉は、感性の一部として扱われることが多い言葉ですが、細菌と抗生物質の間でも使われるんですね。実は英語では違う単語なんですよ。

菌体成分や菌体外多糖をダメにしてしまう可能性のあるもの

乳酸菌はお薬によって殺菌されてしまう可能性があるのであれば、もともと加熱殺菌された菌体成分や、菌体外多糖などは生きていないわけですから、その心配はありませんね。

では、そうしたものの効果をスポイルする可能性がある医薬品やサプリメントは存在しないのでしょうか。実は、明らかに良くないと言うのもは見当たらないものの、あまりおすすめできない組み合わせというのは存在します。

消化酵素が影響を及ぼす可能性はゼロではない

菌体成分は多糖類や脂質、たんぱく質、核酸などさまざまなもので構成されています。菌体外多糖については、名前の通り多糖類、つまり炭水化物でできています。

通常、唾液にはでんぷんを分解するアミラーゼが含まれていますが、これによって分解される成分はほとんどないと思いますし、もしあったとしたら、それはもともと乳酸菌による有効成分としてはカウントされていないでしょう。

また、同様に胃液によって分解されるものも、有効成分にはなりえませんから、最初から対象外です。

問題はそれ以降ですね。様々な栄養素を、細かく分解して消化吸収する十二指腸から小腸にかけての部位で出会う消化酵素によって、菌体成分や菌体外多糖は分解される可能性があります。

一方で、免疫機能に働きかける成分は、小腸にあるリンパ組織のパイエル板でその効果を示すことが多いので、消化されるのが早いか、免疫機能を向上させるのが早いかと言う事になっているでしょう。

さらに、人間の消化酵素では分解しきれない難消化性炭水化物の多糖類は、そのまま問題なく働いた上で、大腸に送り込まれて食物繊維のような働きを持つと思われます。

ですから、人間が分泌する消化酵素については、特に意識しなくても良いと思います。問題は、消化酵素製剤として口から飲むものを、菌体成分などを配合した食品と一緒に摂ることなのです。

消化酵素製剤に注意

例えば、消化酵素製剤を乳酸菌と一緒に摂った場合、もしかすると小腸にたどり着く前に、乳酸菌の有効成分が消化酵素によって分解される可能性というのは出てきます。

ですから、「消化薬」と呼ばれるものは、少なくとも乳酸菌の効果を期待して飲食するものと一緒には摂らず、ある程度時間を開けて摂ったほうが間違いがないと思われます。

薬局薬店で購入できる胃腸薬の多くには、消化酵素が配合されていることが多いです。ですので、乳酸菌とは少し時間を開けて摂った方が良いでしょう。具体的にどのくらいとは示しにくいのですが、1~2時間開ければ問題ないと思います。

市販薬の多くはでんぷんの消化酵素だけを配合したものが多く、追加で脂肪の消化酵素を追加したものもあります。さらにたんぱく質消化酵素を加えて、三大栄養素全部の消化を助けるものもあります。一例としてこのようなものですね。

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さらに、一部の市販薬にはセルラーゼと言う繊維素分解酵素を配合したものもあります。これは一部の食物繊維も分解するため、菌体外多糖などに悪影響が出る可能性は否定できません。

また、お医者さんで消化薬として処方されるお薬は、多くの場合三大栄養素分解酵素の他、繊維素分解酵素も含んでいることが多いので、念のため注意しておいて下さい。

従来からよく処方されるものとして、商品名:ベリチーム・エクセラーゼ・アリーゼSなどがありますが、2011年頃から出始めたパンクレリパーゼ(商品名:リパクレオン・ジェネリックなし)は、特に強力な消化酵素薬です。

サプリメントでも消化酵素は人気の商品

消化酵素剤として有名なパンクレアチンというものは、日本では医療用医薬品ですので、サプリメントとして販売されることはありません。

一方、海外通販(個人輸入)では、パンクレアチンはごく一般的に取り扱われていますから、使っている人も少なくないでしょう。

パンクレアチンは強力な消化酵素ですので、やはり乳酸菌の菌体成分などを配合したものと一緒に摂ることは、あまりお勧めできるものではありません。

▼Now Foods, パンクレアチン、10X – 200 mg、250カプセル
パンクレアチン商品イメージ

また、海外のサプリで「酵素サプリ」という扱いのものにもよく配合されていますから、酵素サプリは乳酸菌と同時に摂ることは避けたほうが無難でしょう。

せっかくの乳酸菌成分が、消化酵素で分解されたんじゃもったいないです。必ず分解されるというものでもありませんが、注意しておくに越したことはありません。

あまり神経質になる必要はない

抗生物質を飲む必要があるということは、何らかの危険な感染症があるということですから、乳酸菌のことを考えるより、感染症を治すことに集中すればいいですね。

そうした場合にヨーグルトなどを止める必要もありません。乳酸菌が全滅しても、菌体成分が役に立ってくれますから、無駄にはならないのです。

逆に、本来デメリットが指摘されていない消化酵素については、念のためずらして摂るという工夫を行ったほうがお得であると思われます。

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