乳酸菌生産物質とは。サプリメントの免疫力アップや降圧効果がすごい

プロバイオティクスやプレバイオティクスと言う言葉はずいぶん一般化しました。それに対してバイオジェニックスと言う言葉も使われ始めていますが、こちらはまだ普及が追い付いていないようです。

意味としては乳酸菌生成物質などの、有用菌によって作り出された健康に役立つ物質のことです。もちろん有用菌が殺菌された菌体そのものを含む概念です。

今回はその乳酸菌生成物質に注目して、その効果や配合商品についてみてみましょう。

乳酸菌生成物質とはいわゆる乳酸菌のうんこ

乳酸菌が作り出す物質と言えば、まず思い浮かぶのが乳酸です。乳酸は有機酸の一つで、腸内を酸性にして悪玉菌の増殖を抑え、善玉菌の活性を高める働きがあるという事は広く知られていますね。

この乳酸については、乳酸菌が生き物として生きて行く上で栄養を摂り、エネルギーを得る時の副産物として、乳酸菌から排出される物質なのです。

乳酸菌は消化を体外で行う

乳酸菌は単細胞生物の細菌ですから、食べ物を取り込んで自分の栄養にすることはできません。自分自身が食べ物の中に入り込んで、細胞の外に消化酵素を出して、食べ物を栄養素に分解します。

そしてさらに、多糖類やたんぱく質と言った高分子化合物も吸収できないので、さらに消化酵素でオリゴ糖(少糖類)以下の小さな糖や、オリゴペプチド(アミノ酸がいくつか集まったもの)以下のレベルにまで分解してから菌体内に取り込みます。

動物ならばお腹の中で消化吸収を行いますが、乳酸菌は、消化を菌体外で行ってから、吸収だけを細胞膜にある受容体を通じて取り込むようになっているのです。

炭水化物については、乳酸菌のエネルギー源ですからとても重要です。単純な糖質だけでなく、糖たんぱくのような複雑なものも分解できるように、様々な酵素を分泌してエネルギー源を確保しています。

一方で、乳酸菌と言えば牛乳と言うイメージですが、牛乳など哺乳動物のミルクに含まれる炭水化物は乳糖と言う多糖類です。

人間の場合、乳糖はラクターゼと言う消化酵素でグルコース(ブドウ糖)とガラクトースと言う2種類の単糖に分解してからでないと吸収できません。

ですので、ラクターゼ活性の低い人では、乳糖が分解できず乳糖がそのまま大腸に送り込まれて下痢などの原因になる「乳糖不耐症」と言う症状が現れます。

一方、乳酸菌は乳糖を乳糖のまま細胞内に取り込んでから、そこで分解する能力を持っているのです。グルコースは代謝されてエネルギーを取り出され、代謝物質として乳酸などの生成物質を細胞外に排出します。

この時、グルコース1分子から2分子の乳酸を作り出すホモ乳酸発酵を行う菌と、1分子の乳酸と1分子のエタノール、1分子の二酸化炭素などの組み合わせのヘテロ乳酸発酵を行う菌がいます。

つまり、菌によってはエタノール(飲めるアルコール)や二酸化炭素(炭酸飲料の炭酸)なども乳酸菌生成物質になる場合があるのです。

余った糖で菌体外に新たな多糖類を作る

ガラクトースについては、それを利用できる菌とできない菌がいます。利用することができない菌の場合、それを菌体外に押し出すのですが、その際に菌の周囲でガラクトースやグルコースを再び結合させて、多糖類を作り出すことがあります。

この多糖類の中には、人間の健康に役立つものがたくさん見つかっています。

菌体外多糖と呼ばれるこの多糖類を指して「乳酸菌生成物質」と呼んでいるサプリなどもよく見かけますね。

また、ヨーグルトなどの乳製品ではこの菌体外多糖がよく見られますので、知らない間に菌体外多糖を食べて利用しているという事もあるでしょう。

言い方は悪いですが、乳酸菌生成物質の多くは乳酸菌の「うんこ」なのです。でも、消化を代行してくれていると考えれば気になりませんよね。

菌体外多糖(乳酸菌生成物質)は免疫力アップに役立つ

さて、この菌体外多糖ですが、その成分は菌によってまちまちですし、よく研究されたものもあれば、ざっと調べられただけのもの、全く手つかずのものと、その知見についてもさまざまです。

ただ、大雑把なイメージとして中性のものより、分子構造にリン酸基を持つ酸性の菌体外多糖に、免疫力アップの力が強そうだということが分かっています。

R-1乳酸菌の免疫力アップ効果は菌体外多糖によるもの

明治プロビオヨーグルトR-1に含まれている、ラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種1073R-1株(通称:R-1乳酸菌)は、免疫賦活作用が強く、インフルエンザ予防効果があるとして大人気です。

この免疫賦活作用は、菌体外多糖によるものであることが分かっています。このR-1乳酸菌の作り出す免疫賦活効果を持った菌体外多糖は、構造もよく調べられています。

▼明治プロビオヨーグルトR-1
明治プロビオヨーグルトR-1商品イメージ

基本構造は、2分子のグルコースと3分子のガラクトースからできているユニットが、直線状に繰り返し繋がったもので、1ユニットごとに1分子のガラクトースが枝分かれの形でくっついています。さらに酸性のものではリン酸基がくっつきます。

この多糖類の分子量は約120万Da(ダルトン:統一原子質量単位)だと言うことです。グルコースやガラクトースの分子量は約180g/mol(≒Da)ですから、リン酸基の数にもよりますが、単糖が6500個前後集まったものと考えていいでしょう。

R-1乳酸菌はリン酸基を持たない中性の菌体外多糖も作り出しますが、こちらには有意な免疫賦活作用は見られなかったという事です。

ちょっと意外かもしれませんが、このことはR-1ヨーグルトとして完成した段階で、免疫力アップについてはR-1乳酸菌は死んでいても良いという事を示しているわけですね。

カスピ海ヨーグルトやヴィーリの粘りも菌体外多糖によるもの

この菌体外多糖は「莢膜性スライムレイヤー」と呼ばれることもあります。莢膜と言うのは細菌の外側を覆う膜のことで、細菌の生物としての構造物ではなく、表面に付着した層のことです。

細菌によっては、これがはっきりした膜を形成していて、英語でカプセルと呼ばれるものを構成することもあります。

逆にはっきりした膜ではなく、細菌から出てきた多糖類などが周辺に広がり、他の細菌と多糖類の層を共有するようになったものをバイオフィルムと呼びます。シンクのごみ受けのぬるぬるや、歯垢を形作るものですね。

その中間にあって、個々の菌が持つ膜ではあるけれど、はっきりと莢膜(カプセル)を形作るほどではないものを、莢膜性スライムレイヤー(粘液層)と呼ぶのです。

このスライムレイヤーが集まったものが、粘り気を持つヨーグルトなどの粘り成分なのです。

カスピ海ヨーグルトやフィンランドのヴィーリなど、強い粘り気を持つヨーグルトの菌体外多糖にも免疫賦活効果が見られたという報告があります。おそらくこれも酸性のものだろうと思われますが、リン酸基について言及した研究が見つかりませんでした。

カスピ海ヨーグルトも、フィンランドのヴィーリも、ノルウェーのテッテメルク、スウェーデンのフィルミョルクなども、全部ラクトコッカス属ラクティス種クレモリス亜種(通称:クレモリス菌)が発酵を担っています。

北欧の粘性ヨーグルトでは、リューコノストック属メセンテロイデス種も共生発酵の形で利用されています。

▼ノルウェーのテッテメルク
ノルウェーのテッテメルク写真

これらの菌体外多糖は、乳酸菌が炭水化物を利用する過程で、自分自身を保護するためのスライムレイヤーとして利用しています。つまり、生きて腸まで届きやすくなるための保護膜としても活躍します。

乳酸菌が死んだ後にできる乳酸菌生成物質が免疫力に働く

乳酸菌も生き物ですから寿命もあれば、ちょっとした環境の変化で死んでしまうこともあります。さらに、外来の菌を拒絶する人間の身体の、強力な殺菌器官である胃は、pH1.0の強力な塩酸で乳酸菌を殺してしまいます。

さらに、最初から乳酸菌を加熱殺菌したものもあります。乳酸発酵したサワードゥを使う、ライ麦の天然酵母パンなどは乳酸菌も大活躍していますが、パンとして焼成した段階で乳酸菌は全滅しています。

しかし、それらの死んだ乳酸菌は、菌体成分として人の身体の役に立ってくれるのです。

細胞壁は食物繊維的な働きがある

乳酸菌を含む細菌の、いちばん外側にあるのが、ペプチドグリカンと言う糖とペプチドで構成された細胞壁です。ペプチドグリカンはそれ自体が大腸でビフィズス菌のエサになると同時に、食物繊維的に働いてくれるものでもあります。

また、細胞壁自体も小腸にあるリンパ組織のパイエル板などで免疫組織に働きかけ、免疫力をアップしたり、アレルギーを抑制したりすると考えられています。

細胞壁は菌の種類によって厚みが異なりますが、乳酸菌のような「グラム陽性菌」ではグラム陰性菌よりずっと分厚く、ペプチドグリカンの層がほとんどを占めています。

細胞壁は細菌の「殻」のようなものですから、あらかじめ乳酸菌を加熱殺菌して破砕濃縮した方が効率がいいという考え方もあります。

そうした考え方に基づいて製品化されているのが、シールド乳酸菌やEC-12乳酸菌などの、加熱殺菌菌体濃縮成分です。

菌の中身も免疫機能に寄与してくれる

細菌は細胞壁の内側に、リン脂質でできた細胞膜を持ち、その中に「細胞の中身」を包んでいます。細菌の細胞の中身はわりあいシンプルで、たんぱく質の合成を主な仕事とするリボソームと、DNAなどの核酸が中心です。

この乳酸菌の核酸も、免疫に良い影響を与えることがいくつかの研究で示されています。リボソームについては詳しい情報が見当たりませんでした。

つまり、死菌であっても、細胞壁を壊して中身を出しておいた方が利用価値が上がる可能性があるという事です。

虎は死して皮を残しますが、乳酸菌は死して免疫力を残してくれるというわけですね。

乳酸菌生成物質に血圧を下げる効果、認知症予防の効果がみられた

大雑把な言い方ですが、生き物はその身体を作るためにたんぱく質を必要とします。このことは細菌であっても例外ではなく、酸素を使った代謝をしない嫌気性細菌でも、エネルギーの取り出しにはたんぱく質である酵素を利用します。

もちろん好気性細菌では、たくさんの酵素を必要とする電子伝達系がエネルギーの取り出しに活躍するため、さらにたんぱく質を多く必要とします。乳酸菌は嫌気性細菌なので、たんぱく質の必要量は少ない方と言えるでしょう。

乳酸菌がたんぱく質を分解して作られる降圧成分

乳酸菌はたんぱく質を分解するにも、消化酵素を菌体外に出してアミノ酸やペプチドに分解し、細胞膜を通して菌体内に取り込みます。ヨーグルトやチーズでは乳たんぱくのカゼインが消化される対象になります。

そして、アミノ酸にまで分解されたものや、アミノ酸が2~3個繋がったジペプチドやトリペプチド、ある程度まとまったオリゴポリペプチドまでで分解が止まったものなどに変化します。

オリゴポリペプチドの場合、菌体内に散り込めるかどうかはケースバイケースになると思いますが、トリペプチドくらいまでならそのまま取り込めることが多いでしょう。

取り込まれたアミノ酸やペプチドは、菌体内で利用されるのですが、それは別の機会に譲るとしましょう。ここで注目するのは細胞壁に現れている酵素です。

この酵素によってカゼインから切り出されたトリペプチドに、血圧を下げる作用が見つかって商品化されています。

カルピスから商品化されているラクトトリペプチド

アサヒ飲料株式会社からカルピスブランドで商品化されているアミールSやアミールサプリメントは、この乳酸菌生成物質の一つであるたんぱく質分解生成物・ラクトトリペプチドを精製したものを配合した特定保健用食品・機能性表示食品です。

血圧を上げる体内の酵素、アンジオテンシン変換酵素の働きを阻害することで高血圧を改善する働きが知られているのは、カゼインから切り出された2種類のトリペプチドです。

アミールS商品イメージ
アミールサプリメント商品イメージ
(出典:カルピス酸乳/アミールS・「アミール」サプリメント|アサヒ飲料株式会社)

アミノ酸構成としては、バリン-プロリン-プロリンと、イソロイシン-プロリン-プロリンと言う2種類が、この有効成分の中に含まれます。

この並びは、もともとカゼインの中に存在していますが、人間の持つ消化酵素では、この形で切り出すことができません。そこで乳酸菌の働きによって切り出されたものを利用しようというわけです。

また、このラクトトリペプチドはエージングケアのサプリとして、年齢ペプチドの商品名でも販売されています。

このラクトトリペプチドは、カルピス酸乳(殺菌加糖前のカルピスの原液)に含まれている、ラクトバチルス属ヘルベチカス種が作り出す乳酸菌生成物質です。この乳酸菌はチーズスターターとしてよく利用される菌です。

そのため、海外でも注目を集めましたが、血圧低下には否定的である研究も複数発表されています。つまり、ヘルベチカス種というくくりで見るのではなく、菌株ごとの細かい研究が必要なのかもしれませんね。

認知症予防に期待される乳酸菌生成物質

同じカルピスからはCS19ペプチドと言う商品名で、アミノ酸が19個繋がったポリペプチドが、認知症予防に効果が期待されるものとしてリリースされています。

乳酸菌菌株についての言及はありませんが、カルピス酸乳から分離されたものだそうですので、これも乳酸菌生成物質と見て間違いないでしょう。

CS19ペプチド商品イメージ
(出典:CS19ペプチド配合・すらすらケア|カルピス健康通販)

こうしたたんぱく質から作られる物質は、乳酸菌では比較的少ないと言って良いでしょう。乳酸菌はエネルギーの大半を炭水化物の代謝で作り出しているので、たんぱく質の分解は菌体を維持するためだけに必要だからです。

一方で腐敗菌や病原菌と呼ばれるものでは、エネルギーをたんぱく質の代謝で作り出すものが少なくないため、必然的に生成物質が多くなります。

そして、そうした菌が作り出す生成物質は毒性があったり、悪臭を放ったりするものも多いのです。

保存料にも使われる乳酸菌生産物質ナイシン

細菌が自分の縄張りを確保するために、他の近縁の細菌をやっつけるために出す物質をバクテリオシンと言います。普通はごく近縁のものにしか効きませんが、ラクトコッカス属ラクティス種が作るナイシンと言う物質は割合広い範囲に効きます。

抗生物質ほどと言うにはちょっと狭く、ファーミキューテス門の細菌にだけ効くというレベルです。このナイシンもたんぱく質から導かれる抗菌ペプチドです。

他の添加物と組み合わせることで、かなり広い範囲の細菌を抑えられることから、天然の食品添加物としてよく利用されています。

乳製品に関わってたんぱく質を切断するというと、チーズの凝乳酵素レンネットが有名ですが、乳酸菌にもこうした働きがあるのです。

トランス脂肪酸の害を軽減できるかも?

炭水化物、たんぱく質とくれば、三大栄養素の残りの一つ、脂質にも乳酸菌は働きかけて、乳酸菌生成物質を作るのでしょうか。

脂質については、実はあまり研究が行われてこなかったようです。それでも、近年乳酸菌には脂質に対して面白い働きがあることがわかってきました。

乳酸菌が普通の脂肪酸を貴重なものに変換する

私達が普段栄養を摂る時に注意していることとして、飽和脂肪酸を減らすとか、不飽和脂肪酸でもリノール酸が多くなりすぎないよう注意するとかの問題があります。

また、マーガリンやファットスプレッドに含まれるトランス型不飽和脂肪酸の害についても、もうすっかり一般化したんじゃないかと思います。

一方、同じトランス型不飽和脂肪酸でも、天然に存在する共役リノール酸という特殊な構造をしたものは、普通の不飽和脂肪酸と同じように振る舞うだけでなく、体脂肪の蓄積を抑える働きがあるなど、むしろ役に立つものとして知られています。

ところが、共役リノール酸はそれほど多く見られる物質ではありません。リノール酸だけでなく、共役脂肪酸はどちらかと言うとレアな存在なのです。

脂肪酸は通常、生物の身体の中で不飽和化酵素によって飽和脂肪酸から一価不飽和脂肪酸へ、さらに多価不飽和脂肪酸へと変化して行きます。しかし、京都大学農学部で行われた研究によると、乳酸菌などはこの逆の働きを持っていることがわかりました。

使い道は今後の研究に待たなければならない

この研究では、二価不飽和脂肪酸のリノール酸が、複数のステップを経て、一価不飽和脂肪酸のオレイン酸に飽和化される代謝経路が明らかにされています。

その代謝経路においては、共役脂肪酸の他、部分飽和脂肪酸、オキソ脂肪酸、水酸化脂肪酸など、レアな存在の様々な形の脂肪酸が形作られていることもわかったそうです。

これらのレアな脂肪酸は機能性脂肪酸、乳酸菌が生み出す有益な生成物として、今後健康に役立つ製品としての応用が期待されています。

同時に、これらの反応を起こす酵素を持った乳酸菌は、トランス脂肪酸の害の軽減などの働きを持つプロバイオティクスとして利用される可能性も示唆されています。

具体的な製品は今後の課題ですが、脂質代謝においても、乳酸菌生成物が利用できる可能性が示されたということは大きいといえるでしょう。

乳酸菌と生成物質の関係は、人間と料理・排泄物との関係と同じ

人間がいて、食べ物が合った場合、食べやすい大きさに切り分けたり、美味しく食べられるように加工したりしますね。また、汚い話ですが、それを食べたあとは出すものを出します。

乳酸菌と生成物質の関係はそれと同じようなものです。乳酸菌もエサになるものを菌体外で取り込める大きさにまで分解しますし、取り込んだあと不要になったものを菌体外に押し出します。

それを横取りしたり、収集したりして人間が利用しようというのが乳酸菌生成物質であるということなのです。乳酸菌自体を取り込めば、体内で作ってもくれますが、作り出されたものを集めたほうが、効率が良いこともあるということなのです。

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