ピーナッツアレルギーに乳酸菌が効くかも?試験段階だが今後に期待

加工食品には原材料表示と同時に「アレルギー表示」が付いていることは良く知られていますね。ここには表示義務のあるものと、表示した方が良いと推奨されているものが書かれています。

この表示義務に関して案内している消費者庁のサイトを見ると、ピーナッツアレルギーは食物アレルギーの原因の第4位に入っていて、もちろん表示が義務付けられています。

このピーナッツアレルギーに関して、乳酸菌が治療に役立つという情報がオーストラリアから入ってきました。

ピーナッツアレルギーは重症化しやすい

食物アレルギーは子供の時に発症するものと、大人になってから発症するものがあります。乳幼児の時期に発症したものは、成長とともに消えて行くことが多く、大人になっても残っているものは1割程度です。

逆に大人になってから発症するものは、治ることが少なく一生付き合う羽目になりやすいことが多いですね。

ピーナッツアレルギーも幼児期に発症することが多いのですが、他の乳幼児型とは異なり、治りにくいことが知られています。

欧米ではピーナッツを使うことが多いため社会問題に

食の洋風化に伴って日本でもピーナッツを使った加工食品と言うのは多いですし、例えば一部のカレーにはピーナッツがルウに使われています。カレールウに入っているかどうかは、目で見ても食べたとしても分からないですね。

欧米ではピーナッツバターやピーナッツクリームが、日本よりずっと多用されていますし、小麦粉にピーナッツフラワーを加えて、粉の味を良くしたものも一般的です。

ですから、ピーナッツアレルギーと言うのは日本以上に深刻な問題になりやすいのです。特にピーナッツアレルギーは比較的症状が重くなりやすいため、油断できないという意識も高いようです。

実際、ピーナッツアレルギーに対応するため、万が一に際して病院に担ぎ込む時間を確保するための、エピペン(緊急用アドレナリン自己注射薬)を常備する人も少なくありません。

ピーナッツアレルギーも減感作療法で改善可能

100%有効と言うわけではありませんが、入院した上で、ピーナッツのアレルゲンを抽出したものを舌下に置き、一定時間後吐き出すという方法を繰り返し、「アレルゲンに馴らす」と言う治療法があります。

入院期間や効果のほどはまちまちですので、一概に有効とは言えませんが、これで治る人も少なくないのです。

オーストラリアでの研究によると、このアレルゲンに馴らす治療法に乳酸菌を併用することで、高い効果が得られたという報告が上がっています。
意外なところで乳酸菌が役に立っているのですね。まだ研究段階ですが、今後臨床に応用されて行くことを期待したいです。

役に立ったのはラクトバチルス属ラムノーサス種

この研究で用いられた乳酸菌は、ラクトバチルス属ラムノーサス種CGMCC 1.3724(NCC4007)株です。この菌株については、かつて女性のダイエットにも資するという研究が行われた物でもあります。

この乳酸菌を同時に投与することによって、ピーナッツのたんぱく質を投与するアレルギー改善治療に、大きな効果が得られたと報告されています。

1年半に及ぶ長期治療の効果は4年後にも有効だった

この研究では、ピーナッツアレルギーを持つ小児62人に対して、上で紹介した乳酸菌のタブレットを服用させ、同時に少量のアレルゲンを摂取するという治療を18か月間にわたって行ったそうです。

この治療を完了まで続けられた子供の80%余りが、ピーナッツを自由に食べてもアレルギー反応が出ないという、「アレルギーが治った」と言うところまで改善しました。

そして、治療完了後4.2年の段階におけるフォローアップ調査でも、アレルギー反応は見られなかったという事です。

オリビアと彼女の母親タニヤ写真
(出典:Olivia May, 10, and her mother Tanya|abc news Australia)

上の画像のオリビア・メイさん(10歳)は、強いピーナッツアレルギーがあり、友達と食事をする機会などには、必ずお母さんのタニヤさんが付き添って、アドレナリン自己注射薬のエピペンを常備していたそうです。

その心配から解放されてほっとしていることでしょうね。

使われた乳酸菌はLGG乳酸菌と同等

上で紹介した研究発表の論文によると、ラクトバチルス属ラムノーサス種CGMCC 1.3724(NCC4007)株は、遺伝的にATCC 53103株と区別できないと書かれています。

(参照:Long-term clinical and immunological effects of probiotic and peanut oral immunotherapy after treatment cessation: 4-year follow-up of a randomised, double-blind, placebo-controlled trial|The Lancet Child & Adolescent Health)

ラクトバチルス属ラムノーサス種ATCC 53103株と言うのは、ヨーグルトにも使われている、通称LGG乳酸菌のことです。LGG乳酸菌は腸内環境を改善し、免疫調整作用があるという事もよく知られています。

LGG乳酸菌と言えば、日本ではタカナシ乳業の「おなかへGG!ヨーグルト」がよく知られています。菌自体はフィンランドのヴァリオ社が権利を持っていますが、実務的にはデンマークのクリスチャン・ハンセン社が分譲しています。

▼タカナシ乳業・おなかへGG!
おなかへGG商品イメージ

このヨーグルト1パック(100g/100mL)にはLGG乳酸菌が140億個含まれています。上の研究では毎日10の10乗(100億)個の乳酸菌を投与したとありますから、同レベル以上ですね。

免疫療法の補助に使える可能性

ピーナッツアレルギーを持っていて、お医者さんからアレルゲン免疫療法を勧められた場合、並行してLGG乳酸菌のヨーグルトを摂ることを相談してみてください。

もちろんヨーグルトは普通の食品ですから、免疫療法中に食べても問題はありませんが、お医者さんと情報を共有しておくことはとても大切なのです。

また、自己判断でLGGのヨーグルトとピーナッツを食べるという事は、絶対にしないで下さい。最悪生命にかかわります。ピーナッツそのものやアレルゲンとしてのたんぱく質を免疫療法として摂る場合、できれば入院して経過を観察するべきです。

万が一、アナフィラキシーショックなど、重篤な反応が出た場合にすぐに対処できるからです。また、通院で行う場合でも、お医者さんの指導にしっかり従って下さい。

乳酸菌併用で、かなり効果の高い免疫療法が期待できるようです。お医者さんとよく相談して治療に取り組んでください。

LGG乳酸菌はT細胞のバランスをとる

ヨーグルトや乳酸菌の話題でよく出てくるのが、このT細胞です。T細胞と言うのはリンパ球の一種で働きによっていくつかに分類されています。リンパ球らしい働きを持つのは、細胞障害性T細胞で、ウイルスに感染したりがん化したりした自分の細胞を殺します。

一方、他の免疫システムの働きを助けるものにヘルパーT細胞と言うものがあります。乳酸菌の話題でよく出てくるのがこれですね。ヘルパーT細胞には3種類あります。

乳酸菌の話題で出てくるものにTh1/Th2バランスと言うものがあります。このバランスが崩れるとアレルギー症状が出やすくなりますが、乳酸菌の菌体成分がリンパ系に働きかけると、このバランスが取れるのです。

ラクトバチルス属ラムノーサス種には独特の働きがある

ところが、ラクトバチルス属ラムノーサス種の乳酸菌は、異なるT細胞の働きに影響を及ぼすのです。

もう一つのヘルパーT細胞はTh17と呼ばれますが、この細胞は感染防御を行うと同時に、炎症や自己免疫疾患を呼び起こしてしまうという性質があります。

一方、ヘルパーではなく制御性(レギュラトリー)T細胞と言うものがあります。Tregと略されるこの細胞は組織修復に関わり、免疫異常を抑制し、さらには免疫が不要なものに働かないようにする免疫寛容を後押しする細胞なのです。

ラクトバチルス属ラムノーサス種の乳酸菌はTreg細胞を増やし、Th17/Tregのバランスをとるような働きがあることが分かっています。

Tregを増やすことでアルコール性肝障害も予防できる

このようなことから、ラクトバチルス属ラムノーサス種の乳酸菌を取りながらアレルゲン免疫療法を行うと、減感作(アレルゲンに「馴れる」こと)を行って行く際に、症状が出ることを予防することができるのかも知れません。

その結果、アレルゲン免疫療法が成功しやすくなると考えられます。

興味深いことに、中国での研究ではLGG乳酸菌を用いてTreg/Th17バランスを改善し、腸のバリア機能も改善し、さらにはアルコール性肝障害を予防できることが動物実験で示されています。

これは、アルコールの摂りすぎで腸管内壁のバリア機能が損なわれ、腸内に棲む細菌が持つ内毒素を過剰に吸収することで肝臓に悪影響が出るのを、LGG乳酸菌が腸管バリア修復して防いでくれるというものです。

そして、同時にTreg/Th17バランスを改善することで、慢性的なアルコール性肝障害を改善できる可能性も示唆されています。

つまり、LGG乳酸菌や、近縁のラクトバチルス属ラムノーサス種乳酸菌は、一つのメカニズムで、ピーナッツアレルギーとアルコール性肝障害の両方を改善してくれる可能性があるのです。

50度を軽く超える中国焼酎を痛飲する中国らしい研究ですね。中国では焼酎のことを白酒と言うかわいい名前で書きますが、日本人的には苦笑いしたくなります。

これからはプロバイオティクスが免疫療法に使われれるかも

上で紹介したように、LGG乳酸菌だけでもTreg細胞の誘導は行われますから、プロバイオティクスだけでもアレルギーの軽減は期待できるかもしれません。

LGG乳酸菌については、アレルギー改善だけでなく数多くのメリットが知られていますので、関連記事をご覧下さい。

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また、がんの免疫療法で知られる慶応大学の吉村昭彦教授は、「さまざまな免疫疾患に対して、プロバイオティクス+アレルゲンの経口摂取がトレンドになるかも知れない」と仰っています。本当にそんな時代が来そうですよね。

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