ピロリ菌に効果がある乳酸菌とは?ヨーグルトならLG-21

胃潰瘍というと、ストレスが原因で発生する胃の病気であると思っている人は、まだまだ多いかもしれませんね。実際のところ1983年に胃炎・胃潰瘍をもたらす病原体としてヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)が確認されるまではそう信じられていました。

ですから、年配の人ほど胃潰瘍はストレス性の病気で、感染性の病気ではないと思っている可能性はあります。また、その11年後の1994年には国際がん研究機関が、ピロリ菌を胃がんの病原体であると発表しました。

ピロリ菌は細菌ですから、抗生物質を使った除菌治療が可能です。そして、その除菌治療に乳酸菌が役立ってくれるケースがあるのです。

メジャーなものはなんと言ってもLG-21

明治プロビオヨーグルトのシリースの中に、「リスクと戦う乳酸菌」と言うコピーで売られているLG-21と言うものがあります。これがピロリ菌に対して有効な乳酸菌を使ったヨーグルトなのです。

実際に、さまざまな実験で有効性が認められているようですので、ピロリ菌が気になる人は注目しておいてもいい商品だと思います。

なぜトクホ食品じゃないのだろう

この商品を含めて、明治プロビオヨーグルトのシリーズは特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品の指定を受けていません。同じ明治のブルガリアヨーグルトLB81が整腸作用でトクホを受けていることを考えると疑問に思う人もいるでしょう。

これは明治に取材したわけではなく、私の個人的な想像ですが、やはりコストの問題だと思います。

ブルガリアヨーグルトは整腸作用をトクホの要件に上げていますが、ブルガリア菌に整腸作用があることは、これまでにたくさんのデータが得られていますから、申請資料を準備するのにもそれほど苦労することはないでしょう。

一方で、LG-21乳酸菌がピロリ菌をやっつけるというデータは、おそらくゼロから積み上げる必要があるので、それにかかるコストが膨大になりすぎると判断したのでしょう。

それを製品価格に転嫁すれば、買ってもらえない値段になると言う経営上のリスク判断もあったのでしょう。このことは同じシリーズのR-1やPA-3でも同じことが言えるのだと思います。

しかし、もともとそれぞれの乳酸菌の菌株がもつ特性については、研究機関で論文にまとめていますから、それをリリースすることで一般に知ってもらうという営業戦略を立てたのでしょう。

その効果については第三者による追試も行われているようですから、信頼しても問題ないと思われます。

実際、研究費用もさることながら、こうした表示に関する申請には、簡単に億単位の経費がかかります。これは粗製乱造の「お墨付き健康食品」を作らせないという狙いもあるのでしょう。

それにトクホの場合専門家の検証が必要ですし、届け出だけですむ機能性表示食品であっても、届けられた学術論文などが妥当かどうかを確認したり、そのデータの保管管理にも費用がかかりますよね。

こうした費用は受益者負担の原則に従うもので、私たちが支払った税金から経費を使わず、なおかつ私たちに食品を選ぶ基準を提供してくれているのですから、いい制度だと言えるでしょう。

もちろん、最終的には商品価格に転嫁されますから、私たち自身の負担も発生します。でも、それだって受益者負担の一つと考えられます。

逆に、トクホなどを取得せずに、商品価格を抑えると言う方法も企業努力です。私たちには、そのどちらを選ぶかという権利が保証されているわけですから、ありがたいですね。

ヨーグルトだけでピロリ菌を全滅できるわけではない

もともとLG-21乳酸菌についての動物実験では、8週間連続で投与した場合、ピロリ菌が検出限界以下まで減らすことができたとあります。

その後、人間にヨーグルトとして食べてもらった臨床実験では、胃の炎症が軽くなり、ピロリ菌が抑制されたという内容の報告になっています。

ですので、残念ながらLG-21ヨーグルトだけでは、ピロリ菌を全滅できるわけではなさそうだということです。でも、抗生物質を使った除菌治療の成功率を上げることは確認されていますので、有望な食品と言えるでしょう。

ピロリ菌の除菌治療は胃酸の分泌を抑える、ランプラゾール(商品名:タケプロン・ジェネリックあり)などのプロトンポンプインヒビターと言うお薬と、抗生物質を2種類投与することが多いです。

抗生物質はペニシリン系のアモキシシリン(商品名:サワシリン・ジェネリックあり)とマクロライド系のクラリスロマイシン(商品名:クラリス、クラリシッド・ジェネリックあり)が用いられます。

しかし、抗生物質の宿命とでも言うべき耐性菌も出現しているようで、2次・3次の除菌を検討せざるを得ないケースも増えています。

そうした中で、事前にLG-21乳酸菌を一定期間摂った人では除菌の成功率が、10%ほど上昇したという報告があります。抗生物質を飲み続ける除菌治療は身体に負担もかかりますし、できれば最初の一回で成功させたいですね。

除菌治療を行ってくれるお医者さんに相談して、事前に2ヶ月くらい、毎日LG-21を2個ずつ摂るということを試みてみても値打ちがあると思います。

コンビニで買っても1個税別128円、スーパーの中には1個税別115円くらいで売っているお店もあるようです。私がいつも行く食品スーパーでは119円ですから、2個買って消費税を入れれば1日あたり257.04円です。

それを8週間続けたとすると14,395円ですね。1か月あたり7~8,000円で、除菌成功率が1割上がるのであれば悪くないと思いますが、いかがでしょう。

健康保険で3割負担になっている医薬品と比べると、どうしてもこうしたものは割高感がありますよね。でも、スイーツやお酒、たばこに比べると安いもんです。それに健康的ですしね。

LG-21はどうやってピロリ菌をやっつけているのか

実はこのメカニズムについてはまだ完全に解明されてはいないようです。実際に、動物実験や人間に対する臨床試験によって効果があることが確認されたために、LG-21は抗ピロリ菌活性を持っているとされています。

でも、ちょっと考えてみると凄いところに目をつけましたよね。乳酸菌というのは普通腸で働くものだと誰もが思っているのに、それを胃で働かせようと思った人というのは、やはり素晴らしい発想力を持っていたんだなと思います。

ピロリ菌はなぜ胃の中で生きていられるのか

胃の中は空腹時でpH1.0~1.5、満腹時でもpH4.0~4.5ぐらいの酸性です。ピロリ菌が胃に棲み着くということは、空腹時の強烈な酸性環境の中でも死なないということです。

このことが、ピロリ菌の発見を遅らせました。だれもが、胃のような強烈な酸性の中に定住する菌がいるとは思わなかったのです。

何人かの研究者が胃の中に菌がいる可能性を示し、それが胃炎や胃潰瘍の原因になっている可能性を示しましたが、そうした「常識」と、検出技術の未熟さのせいで認められず、1983年まで発見が遅れたのです。

大正8年には日本の北里研究所でも動物実験でピロリ菌であろうものを発見していましたが、その当時は世界から見向きもされなかったようです。一方、1983年にピロリ菌を確認した2人の研究者は、その功績で2005年にノーベル生理学医学賞を受賞しています。

ピロリ菌はその表面にウレアーゼという酵素を持っています。この酵素のうち酸性でよく働くタイプのものは、胃酸でpHが低くなっている環境下でも、胃の粘膜付近にある尿素を分解してアンモニアに変えます。

アンモニアは強いアルカリ性なので、ピロリ菌の周りだけで胃酸が中和されてしまうため、ピロリ菌は胃酸で殺菌されずに生き残れるのです。しかも、アンモニアが分泌されると、それに惹きつけられて他のピロリ菌もやってきて、集まってしまうのです。

そして、ピロリ菌に感染したことがわかると、免疫機能が働いて白血球などの免疫細胞がやってきます。この免疫細胞は異物をやっつけるのに活性酸素を使用しますが、それがアンモニアと反応すると胃粘膜を傷める物質ができてしまいます。

このようにして、ピロリ菌は塩酸を主成分にする強い酸性の胃液がある状態でも生きて行けるのです。

LG-21乳酸菌も酸性には強い

よく「生きて腸まで届く」ことをセールスポイントにしている乳酸菌食品の宣伝を見聞きします。これは乳酸菌自体も、一般的には胃酸で死んでしまうからなんですね。LG-21乳酸菌は最初から「胃酸で死なない乳酸菌」を探すことで見つかったものです。

LG-21乳酸菌は、ラクトバチルス属ガッセリー種OLL2716株の通称・商品名です。同じ菌種には、雪印メグミルクの内臓脂肪に効くSBT2055株(通称:ガセリ菌SP株)や、カルピスのストレスに効くCP2305株(通称:C-23ガセリ菌)など、有名なものがたくさんあります。

他にもラクトバチルス・ガッセリーには無数に菌株がありますが、このLG-21は胃酸の中で生存できて、胃への定着性が良いものをを探していて発見されたものです。

先にも触れたように、LG-21がどうやってピロリ菌をやっつけるのかは、まだ完全には解き明かされていません。それでも、やはり乳酸菌らしく、乳酸によってピロリ菌を押さえ込んでいるのではないかと見られています。

東北医科薬科大学の藤村茂教授の研究によるとらせん菌(ヘリコバクター)であるピロリ菌がLG-21乳酸菌に出会うと、その乳酸によってコッコイドフォームと呼ばれる球菌のような状態に変化します。

▼クリックで大きな画像が見られます
ピロリ菌の変化ABCD図
画像右下の白い線は2μm(1000分の2mm)です。

A:ヘリコバクター・ピロリ・ATCC 43504株。らせん菌の形態を保っている。
B:ラクトバチルス・ガッセリー・OLL2716株(LG-21乳酸菌)。
C:寒天培地の上でピロリ菌とLG-21乳酸菌を24時間混合培養したもの。ピロリ菌が球菌のような丸い形になっている。
D:同上、48時間後。ピロリ菌が元の形態に戻っている。

この球菌上のコッコイドフォームは、いわば休眠状態で増殖はできません。ただ、環境が改善すればらせん菌の形に蘇生するのではないかと考えられています。

コッコイドフォームではピロリ菌は増殖だけでなく、毒素を出したりもできませんから、この状態にキープできれば胃炎などの症状も改善できるでしょう。さらに、耐性菌であっても抗生物質によって退治できる可能性もあります。

(参照および画像引用:Helicobacter pylori 感染・治療・予防に関する検討|東北医科薬科大学薬学部臨床感染症学 藤村茂教授)

これは推定ですが、乳酸はアンモニアと結びつきやすいため、ピロリ菌が胃酸から自分を守るために作り出しているアンモニアを、LG-21の乳酸が中和してしまうのかもしれませんね。

もちろん乳酸はどの乳酸菌が出すものであっても変わりはありませんが、ほかの乳酸菌は胃の中で活動できないため、LG-21乳酸菌に有効性があると考えられます。

また、胃酸で死なないと言っても、生きて腸まで届くタイプの他のものは、おそらく胃酸には耐えるけれど胃の中で活動はしないのでしょう。

ピロリ菌と同じ強さを持つ乳酸菌だからピロリ菌をやっつけられる、と考えても良いかもしれませんね。

LG-21乳酸菌以外にもピロリ菌をやっつけられる乳酸菌はある

今のところ、最も研究が進んでいるのはLG-21乳酸菌だと考えて差し支えはありません。しかし、様々な研究によって、別の角度からピロリ菌を抑えられる可能性が示された乳酸菌もあるのです。

その中には、直接乳酸菌が働きかけるものもあれば、乳酸菌の働きで間接的にピロリ菌をやっつけてくれるものもあります。

ロイテリ菌という普通の乳酸菌の中にも有効なものがある

北里大学獣医学部の向井孝夫教授らの研究グループによると、ラクトバチルス属ロイテリ種のJCM1081株とTM105株の2つの乳酸菌は、ピロリ菌が胃の粘膜にくっつくための受容体に先回りしてくっつくことで、ピロリ菌の生育を阻害したということです。

このことは、ピロリ菌をやっつけるだけでなく、感染予防にも役立つと言って良いでしょう。

(参照:Inhibition of binding of Helicobacter pylori to the glycolipid receptors by probiotic Lactobacillus reuteri(英文)|北里大学獣医学部 向井孝夫教授ほか)

この乳酸菌は現在プロバイオティクス商品として利用されているものが見当たりませんでしたが、LG-21乳酸菌とは異なるメカニズムでピロリ菌をやっつけるため、もしかすると今後商品として出てくるかもしれませんね。

ロイテリ菌の別の菌株に関しては、スウェーデンのバイオガイア社と言う会社が日本法人を通じて取り扱っているようです。

チーズがピロリ菌をやっつける

乳酸菌製品といえばチーズも代表的なものの一つですが、そのチーズにピロリ菌を溶かしてしまう働きがあることが見つかっています。

先の研究も行われた北里大学獣医学部の向井孝夫教授によると、ブルーチーズに含まれる遊離脂肪酸が、ピロリ菌を溶かしてしまう可能性があるとされています。

それによると、長鎖脂肪酸ではあるものの、比較的鎖長が短いラウリン酸やミリスチン酸と言った飽和脂肪酸が、分析の結果から有効成分であろうと推測されています。

こうした遊離脂肪酸はブルーチーズにしか含まれていませんでしたので、もしかすると乳酸菌ではなく青カビの方の手柄なのかもしれませんが、それは今後の研究に待たなくてはなりません。

(参照:チーズの新規保健機能|北里大学獣医学部 向井孝夫教授)

しかし、ブルーチーズを食べることでピロリ菌をやっつけられる可能性があるならうれしいですね。もちろん、完治には至らないでしょうが、予防や症状の改善に役立つ可能性は充分にあります。

青カビのチーズが苦手でなければお勧めですね。青カビのチーズには種類がたくさんありますが、この研究ではブルーチーズ1~3としか書かれていません。でも青カビチーズ3種類といえば三大ブルーチーズじゃないでしょうか。

  • ゴルゴンゾーラ(イタリア)
  • ロックフォール(フランス)
  • ブルー・スティルトン(イギリス)

この3つは、ナチュラルチーズの切り売りを行っているお店なら、どれか1つくらいなら必ず置いていると思います。スーパーで買うチーズよりは少し高いですが、味も個性的なので、少しずつ食べるのに適しています。

ほかのチーズには抗菌活性がなかったようですし、青カビはペニシリンを生み出した生き物ですから、もしかすると、そんなところにも関係性があるのかもしれませんね。

メジャーもマイナーも含めて有望株はまだまだ存在する

やはりピロリ菌というとLG-21乳酸菌が連想されるのは、明治乳業(当時、現・株式会社明治)と東海大学医学部、わかもと製薬という研究グループが、ピロリ菌を除菌できる飲食品として特許を取ったからでしょう。

しかし、産学連携や複数企業による研究は他でも行われていますし、有効性が期待される乳酸菌も見つかっています。

地域資源活用型研究開発事業で発見された乳酸菌

経済産業省の地域資源活用型研究開発事業として、広島大学と広島の野村乳業がラクトバチルス属プランタルム種から有望な株を発見し、培養に成功しています。

抗菌成分としてカテコールやチロソールというフェノール系の抗酸化物質が見出されています。しかし、カテコールは変異原性も知られているため、オリーブオイルなどにも含まれる、チロソールを作り出す株が選ばれました。

候補になった2つの株のうち、SN13T株と言うものをナシの果汁をベースに培養すると、カテコールが減り、チロソールが増えました。

現在ではこのラクトバチルス・プランタルム・SN13T乳酸菌を使ったものが植物性乳酸菌飲料として商品化されています。野村乳業の「高濃度植物乳酸菌飲料・飲む、植物乳酸菌」で検索するとすぐに見つかります。

乳酸菌の大企業もピロリ菌に効くものを持っていた

東邦大学の瓜田教授は、ピロリ菌を抑制したり、胃の粘膜の傷害を押さえたりする効果を持つ乳酸菌が、機能性ディスペプシアの改善にも役に立ったという結果を発表しています。

もう、ピロリ菌の抑制は既定事項になっているのが面白いですね。この乳酸菌はビフィドバクテリウム属ビフィダム種YIT10347株(通称:ビフィズス菌Y株)と言うもので、ヤクルト本社中央研究所が持っている菌です。

(参照:ビフィズス菌を含む乳酸菌飲料の継続摂取が機能性消化管障害患者の消化器および心理症状を改善|東邦大学医療センター大森病院 総合診療・急病センター 瓜田純久教授ほか)

実はこの乳酸菌も、すでにヤクルトから製品化されています。ただ、明治のLG-21と同じようにトクホや機能性表示食品を取っていませんから、商品にはピロリ菌に対する除菌効果や機能性ディスペプシアに言及されることはありません。

商品名は「ヤクルト BF-1」です。商品には「腸ではたらくビフィズス菌」と大書してありますが、実はその前に胃でも活躍してくれるようです。

意外にさまざまなピロリ菌対策乳酸菌というのは存在しているのです。胃で働いた後、腸でも働いてくれれば言うことなしですね。

乳酸菌だけでピロリ菌を除菌できるとは思わないほうが良い

ピロリ菌について、気になった場合には病院で検査を受けることができます。検査方法にもいくつかあって、内視鏡を使わずに正確な検査ができる方法もあります。

ただ、胃の病気がある人であれば健康保険で検査が受けられますが、そうでない場合自費になるので少し高くつきます。とは言え、検査方法や患者の状態によって費用は随分変わりますので、事前に病院に確認しておいて下さい。

ピロリ菌が見つかれば除菌治療ということになりますが、最初の方でお話したようにPPIと言うお薬と2種類の抗生物質を毎日飲む治療になります。

その前の診察の段階で、お医者さんに乳酸菌食品の利用について尋ねてみましょう。お医者さんにもさまざまな考え方がありますから、肯定的なお医者さんもいれば、否定的な方もいます。

検査を受ける前に、そのあたりの方針について病院に確認しておくのも悪くありませんね。

もちろん、胃の調子がとても悪くてたまらないというのではなく、なんとなく胃の調子が良くないかも知れないと言う程度であれば、お酒やたばこを止め、今回紹介したような乳酸菌食品と野菜や果物を摂る食生活に変えてみて下さい。

その生活をある程度続けても、胃の調子が良くならないようであれば必ず受診して下さい。様子を見るのは最長で2か月以内が良いですね。その途中であっても不安があればすぐに病院へ行って下さい。

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