過敏性腸症候群を抑える乳酸菌。植物性の代表格プランタルム菌

ラクトバチルス属プランタルム種(通称:プランタルム乳酸菌)と言えば、植物性乳酸菌として人気上昇中のプロバイオティクスです。海外では299株・299v株と言うものに注目が集まっています。

一方、日本では広島大学によるSN13T株の研究や、日本ハムによるHSK201株の研究が注目されています。また発酵茶から分離された菌株もあります。

植物性乳酸菌ですから、耐酸性・耐塩性が高く、胃酸に耐えて、生きて腸まで届くことが得意な乳酸菌です。

様々な健康効果が期待できるのに、メジャーじゃないプランタルム乳酸菌

日本の漬物からもよく分離されるのが、このプランタルム乳酸菌です。漬物といえば、京漬物のすぐきから分離されたことで知られるラクトバチルス属ブレビス種KB290株(通称:ラブレ菌)はpH4.0と言う強い酸性になった、すぐきの最終製品の中から見つかりました。

ある研究において、すぐきの最終製品から分離されたのは、ブレビス種9菌株と、プランタルム種16菌株だけだったのです。つまり、植物性乳酸菌の中でも、プランタルム乳酸菌はラブレ菌と並んで、特に耐酸性・耐塩性に優れた菌だと言えるでしょう。

299v株は過敏性腸症候群に有効である可能性がある

ポーランドのシュチェチン市にあるM.キュリー記念地域病院の消化器科研究チームは、プランタルム乳酸菌の299V株が、過敏性腸症候群の患者の症状を軽減したという予備的報告を行っています。

(参照:A controlled, double-blind, randomized study on the efficacy of Lactobacillus plantarum 299V in patients with irritable bowel syndrome.|Niedzielin K:Department of Gastroenterology, M. Curie Regional Hospital)

予備的報告にも関わらず、人でのデータということが注目されたのか、欧米のサプリメントには、このプランタルム乳酸菌299v株や299株を有効成分として配合したものが数多く見られます。

日本では、海外からの輸入で299v株は入手できますが、プランタルム乳酸菌に関しては、この先にお話するように日本でかなり多くの研究がなされていますので、わざわざ輸入してまで使うほどでもないのではないかと思います。

植物性乳酸菌だが肉や魚からも見つかっている

プランタルム乳酸菌は、もともとヨーロッパで1920年頃に見つかった乳酸菌で、牧草の発酵を行うサイレージや、ワインの熟成を行うマロラクティック発酵に関わる菌です。ですので、植物性としてプランタルム種という名前が与えられています。

ドイツのザワークラウト(キャベツの漬物)や、日本の漬物、キムチなどからも分離されています。つまり、かなり塩分濃度が高くても死滅しないと言う強さを持っているのです。

一方で、鮒ずしやサバのなれ寿司からも分離されていますし、発酵ソーセージや熟成ハムからも見つかるなど、動物性の培地でもよく繁殖する乳酸菌です。やはり塩分に強いことが関係していそうですね。

そして、この耐酸性・耐塩性については漬物のプロ、桃屋の研究所などがそのメカニズムを明らかにしています。

桃屋と東北大学大学院の研究グループによると、プランタルム乳酸菌のうち、らっきょう漬けから分離されたものについて、菌体外多糖が胃酸や胆汁酸から乳酸菌を保護していることが知られているとしています。

また、この菌体外多糖が抗アレルギー作用や、体脂肪減少効果を持っているとしています。

(参照:Lactobacillus plantarum No.14 株が生産する菌体外多糖の化学的性状と免疫活性|株式会社桃屋研究所/国立大学法人東北大学大学院農学研究科)

今ひとつメジャーになれないのはヨーグルトに使えないから?

さまざまな健康効果が知られている上に、生きて腸まで届きやすい乳酸菌なのに、商品化・知名度ともに今一つなのは、牛乳を上手く発酵できずヨーグルトに使いにくいからと言う部分があるのかもしれません。

もちろん、ほかの機能性乳酸菌などと同じように、ブルガリア菌とサーモフィルス菌で作ったヨーグルトに配合するという手法は使えそうに思うのですが、なぜかそうした手法を使ったものもほとんどありません。

探してみたところ、この手法で作ったヨーグルトが1つだけ商品化されていましたが、地域限定の上砂糖を入れているので、この砂糖をエサにするるとか低温維持で活動を抑えるとかで乳酸菌を持たせている可能性はあります。

あるいは、果汁を牛乳に混ぜて作ったタイプのヨーグルトはありますから、もしかすると、この菌は乳糖を全く栄養として使うことができないなどの理由から、牛乳だけをベースにしたのでは菌が弱ってしまうのかも知れません。

やはり乳酸菌としてメジャーになるためには、ヨーグルトとしてデビューできないと苦しいのかも知れませんね。

植物性発酵飲料に利用されるプランタルム乳酸菌

ヨーグルトになりにくいのであれば、植物原料を発酵させて、乳酸菌飲料を作ると言う考え方になるのは極めて自然なことです。

豆乳ヨーグルトに使われた実績もあるようですが、2017年9月現在では商品が見当たりませんでした。

乳酸菌飲料だが菌数は圧倒的なドリンク

乳酸菌飲料の規定は、菌数が1mLあたり100万個以上という、発酵乳(ヨーグルト)や乳製品乳酸菌飲料の1/10で良いことになっています。

そして、野菜ジュースをベースにした飲料の場合、無脂乳固形分3%以上という数値をクリアできないため、「乳製品」と言う文字が付かない乳酸菌飲料という区分になるのです。

でも、広島大学が研究開発しているプランタルム乳酸菌SN13T株を、1mLあたり10億個以上と言う、規定の1000倍も入れた野菜発酵飲料が広島の野村乳業から発売されています。いわゆる産学共同企画ですね。

▼野村乳業「飲む、植物乳酸菌」
飲む、植物乳酸菌商品イメージ

菌数だけで見た場合、かなりたくさんの乳酸菌を含んでいるヤクルト400の2倍の含有率になっています。

このSN13T株は腸内フローラを安定させる乳酸菌として、にんじんとセロリ、梨のジュースを発酵させた乳酸菌飲料として販売されています。

パイナップル果汁を発酵させてヨーグルトにするというアイデア

牛乳を発酵させるのが苦手なら、と考えられた製品があります。沖縄産のパイナップルをジュースにして、それを上と同じプランタルム乳酸菌SN13T株で発酵させ、それを牛乳と混ぜてヨーグルトにしたと言う、面白いアイデアの製品です。

▼高原あせひら乳業・SN13T 植物乳酸菌ドリンクヨーグルト150ml
SN13T植物乳酸菌ドリンクヨーグルト商品イメージ

この製品は発酵乳に分類されていますから、これ1本で最低でも15億個の乳酸菌が含まれていますし、おそらくずっと多くの数が含まれていることでしょう。

この製品も広島大学との共同開発です。パイナップル果汁を培地に使うというのは、酸味が美味しいヨーグルトにもよく合うでしょうし、いいアイデアですね。

定着性が高いHSK201株

植物性乳酸菌は、基本的に腸の中に定着することはできません。しかし、日本ハムがアレルギー研究の中で、ドイツのキャベツの漬物ザワークラウトから単離したHSK201株は、試験管内で腸の細胞への付着性が確認されています。

もちろん動物実験や臨床試験ではありませんので、ほかの腸内細菌から排除されたり、免疫システムによって排除されたりする可能性はありますが、細胞への付着性があるということは、他の菌より長く腸に留まる可能性はありますね。

この菌は、日本ルナの「ときめきカフェ・スムージー」に用いられています。

▼日本ルナ・ときめきカフェシリーズときめきカフェシリーズ<商品イメージ

このスムージーには食物繊維やフラクトオリゴ糖も配合されていますから、シンバイオティクス製品として利用できそうですね。

このHSK201株は、もともとアレルギー研究で発見された菌株ですので、花粉症への効果が期待されています。もちろん腸内環境を整える効果もあります。

HOKKAIDO株は北海道限定

HOKKAIDO株(通称:どさんこ乳酸菌)と言うプランタルム種もありますが、特許菌株でありなあら、今のところ北海道乳業が北海道内限定でヨーグルトを発売しているにとどまっています。

他にも豆乳ヨーグルトや野菜ジュースなどもあるようですが、詳しい情報が見当たりませんでした。

北海道らしく、仔牛用のサプリメントなどにも使われているようですね。

乳酸発酵酒粕にも利用されている

新潟県酒造組合が開発した、乳酸で酒粕を二次発酵させた健康食品「さかすけ」にもプランタルム種が用いられています。

この「さかすけ」には3種類の乳酸菌が用いられていますが、そのうちのSK-4乳酸菌というのがプランタルム種です。

▼菊水酒造販売サイト「スーパー酒粕 さかすけ」
さかすけ商品イメージ

「さかすけ」については、関連記事に詳しいので、そちらをご覧下さい。

▼関連記事
酒粕×乳酸菌で驚きの効果が!スーパー酒粕食品”さかすけ”とは

結構いろいろな商品があるのに、いまひとつ知名度が低いのはもったいない感じがしますね。

発酵茶に存在するプランタルム種にも様々な効果が確認されている

私たちが普段飲んでいるお茶は、緑茶に分類されています。また、おしゃれなティータイムには紅茶が良いと言う人もいるでしょう。この緑とか紅とかの色は、中国茶の分類に由来しているのです。

中国ではお茶を6種類の水色(すいしょく)に分類します。水色分類は日本ではあまり気にされることはありませんが、緑茶と紅茶は普通に飲んでいますし、知らない間に青茶も飲んでいます。でも乳酸菌が活躍するのは別の色なのです。

後発酵茶はお茶の酵素を利用しない発酵で作られる

中国でお茶を分類する時の「水色」は緑・白・青・紅・黄・黒です。そのうち、緑だけが発酵をさせません。葉っぱを摘んだ後、すぐに蒸したり炒ったりして酵素を殺し、緑の茶葉の味を楽しみます。

白と青は、お茶の葉っぱに含まれる酸化酵素を利用して、少し発酵させたお茶です。狙った発酵度合いで加熱して発酵を止めます。白茶のほうが発酵が浅く、青茶が「半発酵茶」とされます。ウーロン茶は青茶です。また、紅茶というのは発酵を止めず、完全発酵させたお茶です。

黄と黒は「後発酵茶」と呼ばれますが、これはお茶の持つ酸化酵素を使わない発酵を行うお茶です。黄茶はお茶の成分の自然酸化を待つ方法ですが、黒茶は乳酸菌などの微生物による発酵を行うため、独特の味と香りを持つお茶に仕上がります。

黒茶には、日本でも有名な中国雲南省普ジ市(※)のプーアール茶があります。茶葉を大きく真っ黒な餅のように固めたスタイルが良く知られています。ただ、このプーアール茶は好気発酵なので、嫌気性菌の乳酸菌はあまり活躍しません。

しかし、実は乳酸菌が活躍する嫌気発酵による後発酵茶が日本に存在するのです。面白いことに、嫌気発酵黒茶は四国でしか作られていません。

石鎚黒茶の抗アレルギー効果に関する研究
(出典:石鎚黒茶の抗アレルギー効果に関する研究:愛媛大学)

(※普ジ市:ジはさんずいへんに耳、普ジと書いて中国語でプーアールと読みます。雲南アラビカと呼ばれるコーヒー豆の産地でもあります。)

嫌気発酵黒茶はアレルギーに有効

研究によって、お茶そのものの効果としてアレルギー症状が改善されると言う研究と、黒茶から分離されたプランタルム乳酸菌に抗アレルギー効果があるという研究があります。

つまり、嫌気発酵黒茶には抗アレルギー作用があり、その中心を担うのがプランタルム乳酸菌だと考えて良いでしょう。

上の画像にもある通り、日本の後発酵茶は4県で作られていますが、富山県のバタバタ茶だけは発酵に関わる菌が異なります。

一方、四国の3県で作られている後発酵茶は、嫌気発酵または好気発酵後の嫌気発酵と言う二段階発酵ですので、全てにプランタルム乳酸菌が関わります。

まず、徳島県の阿波晩茶ですが、これは嫌気発酵のみで作られた黒茶です。大きく育てた茶葉を熱湯でゆがいてから絞り、樽に詰め込んで発酵させたものです。

このお茶からは、プランタルム乳酸菌FG4-4株という菌株が分離されており、この菌株は加熱殺菌した菌体成分に、抗アレルギー作用が確認されています。

また、ラクトバチルス属ペントサス種YM2-2株と言うものも分離され、やはり殺菌菌体成分に免疫賦活効果が確認されています。

高知県の碁石茶は、蒸した茶葉をむしろをかぶせて数日置き、好気発酵させてから樽に2~3週間漬け込んで嫌気発酵させます。碁石茶からはプランタルム乳酸菌OG1-3株が分離されました。

この菌には腸内環境の改善のほか、抗アレルギー作用や、抗ウイルス作用も見つかっています。その他、お茶として高コレステロール効果や血圧低下作用も見られたということです。

さらに、愛媛県の石鎚黒茶も、碁石茶と同じような二段発酵を使った黒茶です。具体的な菌株の特定は行われていませんが、国立研究開発法人 産業技術総合研究所によると、プランタルム乳酸菌であることは確認されています。

愛媛大学の研究によると、アレルゲンを身体が取り込んだ際に、好塩基球などの白血球がヒスタミンという物質を放出して炎症を導く現象を、石鎚黒茶の飲用が抑制するということを確認したそうです。

さらに。アレルギー症状を引き起こす抗体である免疫グロブリンEの産生も抑制されていますので、石鎚黒茶はアレルギー抑制に効果が期待されます。

(参照:石鎚黒茶の抗アレルギー効果に関する研究:愛媛大学)

なお、もう一つの後発酵茶である富山県のバタバタ茶は、プーアール茶と同じ好気発酵ですので、乳酸菌は活躍しません。健康効果はあると思いますが、乳酸菌の活躍がないので、ここでは割愛させてもらいます。

後発酵茶はかなり癖の強いお茶ですが、慣れると病みつきになる美味しさがあります。噂話レベルですが、ダイエットにも良いそうですよ。

生きて腸まで届くが体調を見ながら利用しよう

最初の方で紹介した通り、プランタルム乳酸菌は自らが作り出す菌体外多糖に包まれることで、胃酸や胆汁酸に耐える能力を獲得しています。

この菌体外多糖は、時として免疫力アップに貢献してくれますが、万人に有効な成分とは限りません。ですので、プランタルム乳酸菌による発酵食品を摂って体調を崩したりしたら、それを飲食するのは避けて下さい。

乳酸菌と人間の間には相性があります。体調が悪くなっても、続ければ効果が出るということはありません。乳酸菌に限らず、基本的に食べて体調が悪くなったものは、無理して続けるとさらに体調が悪くなります。

いわゆる好転反応などと言うものは「インチキ健康法の言い訳」にすぎないのです。ですから、摂って体調の悪化が見られたらすぐに止めるべきですし、医療の一環として処方されたものの場合でも、即座に服用を中止してお医者さんに連絡して下さい。

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