乳酸菌は食品の病原菌を直接殺菌できない!腸内での殺菌力をあげるには


乳酸菌はお腹の中で悪玉菌をやっつけてくれて、腸内環境を整えてくれると言います。そう聞くと乳酸菌と言うのは、殺菌効果のあるものなのだろうかと言う疑問が浮かびますね。

もしそうなら、食べられる殺菌剤としてヨーグルトを生の食べ物にかけて食べれば、食中毒を防げるんじゃないだろうかと言う考えが頭をよぎります。そんなこと本当にあるのでしょうか。

食品の安全な殺菌用には向かない

例えばヨーグルトの場合、液性はかなり酸性に傾いていますから、一般細菌はもちろん、酸性に強い非病原性大腸菌でも、比較的繁殖しにくくなっているかもしれません。それでも、充分な殺菌が行われるかと言うと、それは無理だと言わざるを得ません。

ですので、ヨーグルトを調味料に使って食中毒を予防しようなんて考えないで下さいね。乳酸菌の効果は、体内に入ってはじめて発揮されるものなのです。

海外ではヨーグルトでO157感染が起こったことがある

厚生労働省によると、世界保健機関WHOの専門家会議の報告で、ヨーグルトやチーズなどが腸管出血性大腸菌O157の感染経路になったと言う例もあるそうです。

その報告によると、生乳が感染源であった例もあるようですので、O157が含まれた非殺菌生乳を原料にヨーグルトを作ったのかもしれませんね。

(参照:腸管出血性大腸菌Q&A|厚生労働省・食中毒関連情報)

一般的な大腸菌には病原性はありませんし、そうした大腸菌の生育可能pHは4.5ぐらいですので、pH4.0くらいになる、充分発酵したヨーグルトの中では生育できません。

しかし病原性を持つ大腸菌であるO157の場合、胃液にも耐えて食中毒を引き起こすとされていますから、pH4.0では死なない可能性が高いですね。

胃の中は完全に空腹なときでpH1.5くらいの強い酸性、満腹状態では酸性度が下がって、pH4.0に近づくとされています。ですから、乳酸菌が作り出す環境では、少なくとも完全には死滅しないでしょう。

しかもO157は100個くらい体内にいれば食中毒を引き起こしてしまうのです。

直接食品の菌を殺菌するのは無理!乳酸菌が酸を作り出すには時間がかかる

ヨーグルトは、液体の牛乳に乳酸菌を混ぜて、一定の温度をキープしてやることで、数時間~十数時間後に固まって食べられる状態になります。あれは一体どうやって固まっているのでしょう。ちょっと難しいですがおつきあい下さい。

牛乳には乳糖という糖質が含まれています。それを栄養にして乳酸菌が増殖するのですが、その代謝産物として乳酸という有機酸を出します。菌種によっては、他の有機酸を同時に出すものもありますね。

牛乳の中にはカゼインと言うたんぱく質が含まれています。このカゼインは分子自体がマイナスの電荷を持っているため、お互いに反発しあってバラバラの状態になっています。

そこに乳酸菌がやってきてせっせと乳酸を作ると、牛乳がだんだん酸性になっていきます。酸性になるというのはプラスの電荷を持つ水素イオンが増えるということです。すると、カゼインのマイナスの電荷を徐々に減らしてゆくことになります。

そうして電荷を打ち消し合いながらも水素イオンが増えてゆく(酸性になってゆく)と、ちょうどpH4.6のあたりでカゼインの持つ電荷がゼロになります。そうするとカゼイン同士の反発力がゼロになるため、カゼイン同士が集まって固まるようになります。

これが「ヨーグルトが固まった」状態です。もちろん、その後も乳酸の原料になる乳糖がある限り発酵は進みますが、現実問題としてpH4.0あたりで落ち着くようですね。

カゼインが固まり始めるあたりになると一般細菌の生育は止まるレベルになりますが、それには数時間以上かかるわけですので、原料の牛乳に他の菌がいると、それも増えてしまいます。

そういった意味から見ても、乳酸菌で食品を殺菌することはあまり現実的ではないようです。

健康に良い乳酸菌と言っても、直接食品にいる病原菌を殺菌する力はありません。やはりお腹の中で活躍してもらわないといけないようですね。

乳酸菌は主に大腸で頑張ってくれる

乳酸菌というと大腸に棲んでいる腸内細菌というイメージが強いですが、実は多くの乳酸菌は単に大腸を通過しているお客さんなのです。とは言え、その通過する時間の間に腸の環境を整えてくれる、ありがたい存在であることに変わりはありません。

ですから、腸の調子を整えるために乳酸菌を摂る場合は、摂り続けることが大事になります。毎日摂れればベストですが、「できるだけ続ける」と言うレベルでも、充分健康には役立ちます。

腸に定住している乳酸菌もいる

乳酸菌は「宿主特異性」と言って、どの動物のお腹の中に棲むかが決まっていることが多いです。ですので、人間に定住しないタイプのものは「お客さん」になってしまいます。

それでも、お腹の中にいる間は役に立ってくれるのでヨーグルトなどを食べるわけです。また、人間に棲むと決めている菌もいるにはいるんですが、それでヨーグルトを作っても、美味しくないことが多いので商品化にはこぎつけにくいようです。

そんな中でもビフィズス菌は、特に子供の頃ほど腸の中に定着しています。大人になってくると減ってくるので、ヨーグルトなどから摂ることが好ましいとされていますが、もともと定着できる性質の菌ですから、続ければ腸の中で増えてくれるかも知れません。

また、小腸で活動することが判っているラクトバチルス属ガッセリー種(通称:ガセリ菌)のSBT2055株は、どうやら人間に定着する可能性が示唆されています。

内臓脂肪を減らす効果で機能性表示食品に使われている雪印メグミルクのガセリ菌SP株が、このラクトバチルス・ガッセリー・SBT2055の通称です。

腸の中では菌が勢力争いをしている

腸の中にはキログラム単位で測れるほど多くの菌が住んでいます。一つ一つの大きさを考えれば、とんでもない数になりそうですね。その中で乳酸菌などの善玉菌の数が増えることで健康に寄与します。

厚生労働省の情報サイトによると、健康な腸内環境とは、いわゆる善玉菌が優勢であり、悪玉菌や日和見菌などの菌ができるだけ劣勢である状態であるとしています。(日和見菌:普段は特段の働きを持たないが、身体が弱ると悪玉菌として働く菌)

善玉菌は乳酸や酢酸などを作ることで、腸内を酸性にします。腸内が酸性になると悪玉菌の増殖が抑えられると同時に、有機酸をエネルギーとして使える大腸の運動が活発になります。

大腸の運動が活発になると、腸の中に便が滞留してしまうことで起こる腐敗なども防げます。その結果、食中毒菌や病原菌による感染の予防につながるわけですね。

また、発がん性を持つ腐敗物質が作られにくい腸内環境になります。さらに、消化管の粘膜免疫も高まります。こうした部分で見ると、乳酸菌には腸の中で悪い菌を殺す、間接的な殺菌力があると言っても良いかも知れません。。

(参照:腸内細菌と健康|e-ヘルスネット・厚生労働省)

つまり、腸の中には善玉菌や悪玉菌などがおよそ100種類ほど住んでいますが、できるだけ善玉菌を優勢にすることで、悪い菌が入ってきても、病気になりにくい状態を作り出せるであろうということです。

先にお話したO157の例で見ても、100個程度の極微量であっても感染が成立し、約半数の人が発病します。でも、残りの半数の人は発病しないか、しても「なんかお腹の調子が悪い」で終わっているのです。

それには身体全体の免疫力もさることながら、この腸の中の環境が大きく影響している可能性が高いのです。

女性ではデリケートな部分で悪玉菌をやっつけている

思春期以降の女性のデリケートな部分には、常在菌として乳酸菌が棲んでいます。デーデルライン桿菌と呼ばれる一連の乳酸菌群は、膣上皮細胞のグリコーゲンを栄養にして乳酸を作り出し、環境を酸性にすることで外来の菌による感染を防いでいます。

ですので、この菌が活躍していて、脱落する上皮細胞が多くなると「白いおりもの」が増加しますが、痛みやかゆみがなく、臭いにも異常がなければ特に心配はないでしょう。

一方、デーデルライン桿菌が洗いすぎや抗生物質の服用などによって減少してしまうと、感染が発生することがあります。こうした場合、おりものが黄色などに着色されたり、臭いに異常が出たりしますので、すぐに婦人科を受診して下さい。

デーデルライン桿菌は、主に乳酸桿菌(ラクトバチルス属の乳酸菌)で構成されています。ブルガリア菌やガセリ菌の仲間なんですよ。

悪玉菌をゼロにはできませんが、善玉菌勢力をうんと優勢にしておくことで、さまざまな病原菌を撃退しやすくなるのです。

乳酸菌は免疫力の向上で体内での殺菌力を上げてくれる

植物や海藻、細菌、菌類は細胞外多糖(エキソポリサッカライド)または多糖体などと呼ばれる高分子を分泌します。その多糖体は時として病原菌の病原性を高めるものであることもありますが、逆に人間に役立つ働きを持つこともあります。

菌類であるシイタケが作る多糖体にレンチナンという物質がありますが、これは免疫活性を高めることで抗がん効果を持つため、抗がん薬の一つとして用いられています。カワラタケから採れるクレスチンも抗がん効果を持つ多糖体です。

こうした多糖体は乳酸菌によっても人間の体内で分泌され、それが人間の健康を維持することに役立つこともあるのです。

乳酸菌の出す多糖体も種類が多い

乳酸菌と一口に言っても、それぞれが作り出す多糖体もバラエティに富んでおり、必ずしもその全部に強力な免疫賦活作用があるとは限りません。とは言え、特定のヨーグルトやサプリを食べないと、免疫力アップに効果がないというわけでもないのです。

むしろ、免疫力アップに有効だからと判っている乳酸菌だけを摂るより、他の様々な乳酸菌利用食品を摂ったほうが、トータルで見た場合、有利に働く可能性があります。

多糖体について、目で見て判りやすいのはカスピ海ヨーグルトです。カスピ海ヨーグルトって、独特の粘りがある、見ようによってはちょっと不気味なテクスチャの食品ですよね。

あの、スプーンから垂れて落ちる時の、強い粘性はこの多糖体がもたらしているネバネバなのです。そして、この粘りが免疫力をアップしてくれるのです。

カスピ海ヨーグルトにはラクトコッカス(乳酸球菌)属ラクティス種クレモリス亜種(通称:クレモリス菌)とその他の乳酸菌や酢酸菌が含まれています。実際に免疫賦活作用が期待されているのはクレモリス菌のようですね。

現在までに免疫賦活作用がメーカーから報告されているのはフジッコのFC株だけのようです。しかし、グリコのCHCC2907株もカスピ海ヨーグルトとしてのネットリした粘りがあるので、多糖体が作られていることは間違いありません。

いわゆる「カスピ海ヨーグルト」であれば、そうした多糖体の存在は間違いないでしょう。ただ、免疫賦活効果については、もしかすると差があるかもしれません。

なぜ乳酸菌の出す多糖体で免疫力がアップするのか

ちょっと難しい言葉が出てきますから、面倒な人は「乳酸菌の出す多糖体が免疫力をアップしてくれるが、乳酸菌ごとにその働く度合いは異なる」とだけ覚えておいてもらって、読み飛ばしてもOKです。

私達の体内にはさまざまな免疫細胞がありますが、その中の一つでヘルパーT細胞(CD4T細胞)というものがあります。このうち、抗原たんぱく質と出会ったことのないものをナイーブCD4T細胞と言います。

乳酸菌が作る多糖体が体内に入ってくると、これもまた免疫細胞であるマクロファージや樹状細胞がそれを感知して、免疫細胞同士の細胞間連絡に使われるインターロイキンという物質を分泌します。

そのうちのIL-12と言う物質が、ナイーブCD4T細胞に届くと、それが活性化されてCD4T細胞になり、今度はそれがインファーフェロンγと言う免疫調整物質を分泌します。

インターフェロンγは、自然免疫を司るナチュラルキラー細胞を活性化することで、免疫力をアップしてくれるという流れになっています。

よく知られている通り、ナチュラルキラー細胞は、外来のウイルスなどだけでなく、体内で発生したがんなども攻撃・撃破してくれる、体内の守りの先陣を務めてくれている細胞です

こうした流れに乗っかってくれる多糖類にはどういったものがあるのかということは、大学や食品メーカーの研究所などがこぞって研究を進めています。

例えば、ブルガリア菌の一種、ラクトバチルス・デルブルッキー・ブルガリクス・OLL1073R-1株は、インフルエンザ対策に有効だという研究結果が得られています。

明治プロビオヨーグルトR-1に使われているこの乳酸菌ですが、ヨーグルト自体はトクホや機能性表示食品を申請していませんので、ヨーグルト自体に効果効能は謳われていませんが、世の中ではすっかり評判になっていますね。

これも免疫調整を通じた抗ウイルス効果と言ってもいいでしょう。体内での殺菌力と言って差し支えないかもしれません。

一般的なヨーグルトに意味は無いのか

乳酸菌の持つ抗病原体能力を求めるなら、そうした機能性を持つヨーグルトなどを選んで食べ、安売りのヨーグルトなどは無駄だから止めるという考え方で良いのでしょうか。

必ずしもそうとは言えないでしょう。そのことに研究論文などの根拠があるわけではありませんが、一般論として考えてみます。

例えばR-1乳酸菌とクレモリス菌を含むヨーグルトを摂って、抗菌・抗ウイルス力をアップすることを目指したとしても、腸内環境がどうなっているかは判りませんね。

もしかするとその2つの乳酸菌が苦手とする悪玉菌群がいるかも知れませんし、悪玉菌の出す分泌物質によってR-1乳酸菌やクレモリス菌が生きていけなくなっていたり、多糖体を分泌しにくくなっている可能性もあります。

そうした場合、別の乳酸菌が環境を整えてくれるかもしれません。例えば、いわゆる「無名のヨーグルト」のほとんどはブルガリア菌とサーモフィルス菌で作られていると考えても良いでしょう。

もちろん有名ヨーグルトでもその組み合わせは多いですが、高価な有名ヨーグルトでは菌株名まで表示されていることが多いです。

サーモフィルス菌は、ストレプトコッカス(レンサ球菌)属サーモフィルス種と言う名前で、ヨーグルトに粘り気をもたらす多糖体を出すと同時に、ギ酸と言う腐食性の強い酸を分泌します。

それだけを聞くと危険性があるように思いますが、そのギ酸はブルガリア菌が利用して増殖しますから、危険性がないだけではなく、腸の中の環境を整えるのに重要な役割を持っているのです。

つまり、一般的なヨーグルトを食べることで、機能性が明らかになっている乳酸菌が活躍しやすい環境を作っておける可能性があるのです。400mLパック税別93円のヨーグルトでも、バカにしないで食べましょうね。

また、詳しくは別の記事でお話しますが、乳酸菌は必ずしも生きて腸まで届く必要はないのです。

厚生労働省のサイトにも、乳酸菌の菌体を構成している成分そのものに有効な生理機能が期待できるから、乳酸菌は必ず生きて腸まで届く必要はないと書かれています。

(参照:腸内細菌と健康|e-ヘルスネット・厚生労働省)

もちろん、免疫を向上させてくれる菌については、お腹の中で多糖体を作ってくれたほうが良いので、生きて届いてくれるとより好ましいでしょう。それでも、ヨーグルトになっている段階で、有効な多糖体はすでに作られていると考えて良いと思われます。

乳酸菌にも多様性があったほうが、悪玉菌との戦いに勝利しやすくなると考えて、さまざまな乳酸菌利用食品を食べることがおすすめですね。

乳酸菌食品で病気知らずになろう

ヨーグルトについて医学的な研究が行われた最初の動機は、「ヨーグルトを突き詰めると不老長寿の薬ができるのではないか」と言う発想からでした。

おそらく、それほどヨーグルトをよく利用する地方では長寿の人が多かったのでしょう。実際、近代日本でヨーグルトが19世紀に発売された時にも、お薬として発売されたそうです。

随分昔のイメージですが、日本でもどこかのメーカーのヨーグルトのテレビCMで、コーカサス地方の人々は、ヨーグルトを食べるから長生きなのだと言ったものを見た記憶があります。今から思えば、カスピ海もコーカサス地方なんですよね。

現在の私たちは、いつでもヨーグルトやチーズなど、乳酸菌を活用した食品を自由に食べられるという、恵まれた環境にあります。積極的に摂って健康長寿を目指しましょう。

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