乳酸菌はヤセ菌?デブ菌?安易なダイエットサプリに乗せられるな

最近のダイエットの話題で最も注目を集めているのが、ヤセ菌とデブ菌ではないでしょうか。腸内フローラのバランスが、本来のものよりデブ菌優位になると太りやすくなるというものです。

ただ、この情報については、研究で明らかになったものを、一般人に分かりやすく解説するため、かなりあいまいな説明になっているような気がします。

もちろん腸内環境を整えることは、太るとか痩せるとか以前に、健康になるということにつながりますから、積極的に取り組みたいものです。

ヤセ菌・デブ菌の世間での評価のあいまいさ

もともとはテレビ番組で紹介されたのをきっかけに、腸内フローラにヤセ菌が多いとたくさん食べても太らないし、デブ菌が多いとちょっと食べただけでも肥満してしまうという都市伝説的な情報が世間に広まってしまっています。

しかし、その大半は「ヤセ菌サプリメント」の広告だというイメージですね。少なくともネット情報には、必ずと言って良いほど「ヤセ菌サプリメント」の広告が載っています。

そもそもヤセ菌・デブ菌の分類がアバウトすぎる

学術的な定義があるのかどうかはわかりませんでしたが、ネット上に見られる解説では、ファーミキューテス(フィルミクテス)門に属する細菌がデブ菌で、バクテロイデス門に属する細菌がヤセ菌だということです。

しかし、この「門」と言う分類階級は、ちょっと大きすぎるんです。生物は動物や植物、カビなどが含まれる「真核生物」、乳酸菌や大腸菌、結核菌などの「真正細菌」、そしてメタン産生菌などの「古細菌」の3つのドメインに分類されます。

その真正細菌は30ほどの「門」に分類され、そこから綱・目・科・属・種・亜種と細分されて行くのです。例えばヨーグルトで有名なブルガリア菌はラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種です。

しかし、上に書いたように属にはさらに4段階の上位分類があり、門はその最上位にあるわけですから、ファーミキューテス門がデブ菌だと言っても、その下には膨大な数の細菌の種類が存在しているのです。

ですので、単純にファーミキューテス門がデブ菌だと言っても、サプリメントの宣伝文句に使われるだけで、あまり実効性はないんじゃないかと思います。

乳酸菌やビフィズス菌はヤセ菌?

乳酸菌はラクトバチルス属、ラクトコッカス属、リューコノストック属、ストレプトコッカス属、エンテロコッカス属、ペディオコッカス属など20以上の属の下にある、たくさんの種・亜種から構成されています。

最大のグループであるラクトバチルス属には120を軽く超える種が存在しています。乳酸菌全体では、おそらく300種以上になっているでしょう。

こうした乳酸菌は、それぞれ上位では別の科に属していますが、その科は全部バチルス綱ラクトバチルス目に属しており、バチルス綱はファーミキューテス門の下位分類なのです。

つまり、テレビの健康バラエティの言葉を借りるなら、乳酸菌はデブ菌だということになってしまうわけですね。

とは言え、腸内細菌のうち、善玉菌に分類されるおよそ20%の菌の大半はビフィズス菌で、乳酸菌はそれほど定着していません。

ではビフィズス菌はヤセ菌なのでしょうか。残念ながら、ビフィズス菌と言うのはアクチノバクテリア(放線菌)門の下位にあるビフィドバクテリウム属細菌のことですので、バクテロイデス門にもファーミキューテス門にも含まれません。

短鎖脂肪酸の効用を説く向きもあるけれど

短鎖脂肪酸が、中性脂肪の脂肪細胞への定着を阻害するといった説明を見ることもあります。短鎖脂肪酸と言うのは炭素数が6以下の脂肪酸を指しますが、腸内で作られる物質の話題では、乳酸・酢酸・プロピオン酸・酪酸の4つを指すことが多いですね。

このうち、乳酸は乳酸菌やビフィズス菌が作り出します。しかし、乳酸菌はファーミキューテス門の細菌でデブ菌らしいですし、ビフィズス菌はアクチノバクテリア門の細菌でデブ菌でもヤセ菌でもないようです。

また、酪酸菌と言えばクロストリジウム属ブチリカム種の細菌ですが、これもファーミキューテス門の細菌です。酢酸はビフィズス菌が乳酸と同時に作り出していますし、ファーミキューテス門のブラウティア属菌も作り出すことがわかっています。

さらにプロピオン酸を作り出すプロピオニバクテリウム属の細菌は、ビフィズス菌と同じアクチノバクテリア門の細菌なのです。

つまり、私たちが普段意識する「善玉菌」は、デブ菌かどちらでもない菌と言うことになってしまうわけですね。

もしかすると日本人の腸に秘密があるのかも知れない

実は、海外の研究では、腸内細菌の中で最も多いものはバクテロイデス門の細菌であると言われています。しかし、日本人の腸内環境の特徴としては、諸外国の人々よりバクテロイデス門の細菌が少ないことが挙げられます。

つまりヤセ菌が少ないということですが、日本人は世界的に見ても肥満人口の割合が非常に低いことで知られています。いったいどうなっているんでしょうね。

腸内細菌は4つの門でほとんどが占められている

先にお話しした通り、真正細菌ドメインは、およそ30の門に分類されますが、腸内細菌の99%以上は4つの門で構成されていることがわかっています。そのことは人種や国籍を問わず共通なのですが、国籍ごとにその比率は大きく変わります。

また、例えば多人種国家であるアメリカを見た場合でも、比率の振り幅は非常に狭いので、比率を決めているのは人種ではなく、その国ごとの食習慣などによるものだと考えられます。

4つの門は、ヤセ菌と言われているバクテロイデス門、デブ菌と言われているファーミキューテス門、ビフィズス菌を代表とするアクチノバクテリア門、大腸菌やピロリ菌が属するプロテオバクテリア門の4つです。

ヤセ菌、デブ菌と言う言い方がされるようになったきっかけは、アメリカでの研究がもとになっているようです。しかし、アメリカ人と日本人とでは、もともとの腸内フローラの構成バランスが全く異なっているのです。

ですから、アメリカ人でバクテロイデス門の細菌が多いと痩せられるといったデータが取れたとしても、日本人には全く関係がないということも充分あり得るのです。

日本人はアメリカ人よりはるかにデブ菌が多い?

早稲田大学や慶応大学、東京大学、理化学研究所など多くの機関が参加した共同研究によると、腸内細菌の比率を見るだけで、それが日本人のものだと判別できる正答率が100%になるぐらい、日本人の腸内フローラは特徴的であったそうです。

大雑把に言うと、全部で11の国の人々の腸内フローラと日本人のものを比較した場合、ファーミキューテス門が多めで、バクテロイデス門とプロテオバクテリア門は最低レベル、逆にビフィズス菌に代表されるアクチノバクテリア門は飛びぬけて多くなっています。

(参照:The gut microbiome of healthy Japanese and its microbial and functional uniqueness|Masahira Hattori – Graduate School of Advanced Science and Engineering, Waseda University …[英語論文])

その論文に示されていた数値から、日本人とアメリカ人の腸内フローラについて簡単にまとめてみましょう。

日本 アメリカ
ファーミキューテス(いわゆるデブ菌) 約60% 約40%
バクテロイデス(いわゆるヤセ菌) 約17% 約54%
アクチノバクテリア(ビフィズス菌など) 約22% 約3%
プロテオバクテリア(大腸菌など) 約1% 約3%

ずいぶん差がありますね。日本人はいわゆるデブ菌がヤセ菌の3.5倍くらい棲んでいるのに対して、アメリカ人ではヤセ菌の方が過半数になっていて、デブ菌はその25%ほど少ない数値になっています。

一方、世界保健機関の統計によると、肥満率(BMI≧30.0kg/m2)は、日本で4.5%、アメリカで31.8%と、圧倒的にアメリカ人の方に肥満者が多いです。

さらにビフィズス菌を含むアクチノバクテリアの比率は日本人がアメリカ人の7倍くらい多くなっています。と言うことは、ビフィズス菌が肥満と重要な関係があるのでしょうか。

ところが、中国人の腸内フローラはアメリカ人のものとほとんど同じバランスで、同じ東アジアの日本のものとは全く異なります。しかし、肥満率は日本より微妙に多い程度の5.6%に過ぎません。

11か国の中で、日本人の腸内フローラのバランスに最も近かったのは、オーストリア人でした。オーストリア人の肥満率は、ほぼ世界平均の18.3%です。

メタンが関係しているかもしれない

このように、真正細菌ドメインの4つの門のバランスだけでは、充分に肥満との関係性が明らかにならないわけですが、ここで注目したいのは古細菌ドメインに属するメタン産生菌です。

メタン産生菌は、その名前の通り、腸内細菌が作り出した水素を利用するときに、二酸化炭素を還元してメタンを作り出す菌のことです。

腸内細菌によって炭水化物が代謝される際には、短鎖脂肪酸と二酸化炭素と水素が作り出されます。もちろん菌によってはエタノールを作り出すものもあります。

この時に作り出された水素は、日本人では酢酸を作り出す代謝に利用されることが中心になります。一方、外国人では、メタンを作り出す代謝に利用されることが中心になります。

これはメタン産生菌の存在する量が、日本人では非常に少ないからなのです。メタン産生菌は他の国々に比べて1000分の1くらいしか日本人のお腹の中に棲んでいません。比較的少ない中国人と比べても100分の1くらいです。

メタンがほとんど作られず、代わりに酢酸が作られるということは、日本人の健康に大いに役立っています。ですから、病的なものがない限り、日本人は腸内フローラのバランスを無理に変えない方が良いかも知れないのです。
ヤセ菌・デブ菌は商業的バイアスがかかった報道がされている可能性が否定できませんね。もともと日本人の腸内フローラは決して悪くないのです。

ヤセ菌を増やす方法として世間で言われている食習慣は悪くない

個人的な感想なのですが、ネット上にあふれているヤセ菌・デブ菌情報の大半は、書いている人が菌の働きや分類について充分な理解がないまま書いているような印象を受けます。

そのため、どちらかと言うとファーミキューテス門の細菌を積極的に摂るようにアドバイスしているものをよく目にします。しかし、結果オーライ的な意味で、それは正しい対応かもしれないのです。

食物繊維がデブ菌のエサになる?

世間のヤセ菌・デブ菌サイトを見ると、関連するサプリメントの広告の間に、食生活を改善してヤセ菌を増やし、デブ菌を減らそうと言う内容が書かれているものが大半です。

そして、その方法として高糖質・高脂質の食事を減らし、食物繊維やオリゴ糖を摂りましょうと案内しています。

具体例として示されているのは、納豆やヨーグルトと野菜・果物ですね。しかし、納豆菌はファーミキューテス門です。乳酸菌もそうですね。

つまり、乳酸菌はファーミキューテス門ですから、食物繊維やオリゴ糖はデブ菌のエサになるということになってしまいますし、納豆も同様ですね。

摂取カロリーを減らせば痩せるのは当然

しかし、実際に脂質の摂取を抑えて、野菜や果物、ヨーグルトや納豆で食物繊維やオリゴ糖、たんぱく質を摂るようにすれば確実に痩せます。

それは、シンプルに摂取カロリーが減ったからに他なりません。もちろん腸内環境も良くなっていると思いますが、それはいわゆる「善玉菌・悪玉菌」の区切りで見て改善するということです。

ですから、「ヤセ菌サプリメント」のようなものは避けておいて、そのお金で野菜や果物、納豆やヨーグルト、漬物や味噌、酒かすなどの発酵食品などをどんどん摂りましょう。

おそらくそれだけでかなり改善すると思いますよ。

それに、そもそも体重を減らす必要があるかどうかから判断した方が良いですね。普通体重・普通の体脂肪率の範囲に入っていれば、無理に痩せる必要は全くありません。

日本人には日本人の腸内フローラ

ヤセ菌とデブ菌のバランスは6:4が理想的などと言う数値もよく示されています。これはおそらく、アメリカ人の腸内フローラのバランスから導かれたものでしょう。

アメリカ人の腸内フローラには、ビフィズス菌の仲間と大腸菌の仲間が3%ずつしかいません。そして、残りの94%をバクテロイデス門5.7に対してファーミキューテス門4.3くらいのバランスで分け合っています。

おそらく肥満者が多いアメリカのことですから、理想のバランスとされる6:4に対して、0.3ほどずれているのが、肥満者の腸内フローラによる数値と言うことなのでしょう。

日本人の数値を見れば、8:2くらいの割合でデブ菌の方が多くなっています。その代わり、ビフィズス菌の仲間はアメリカ人の7倍以上棲んでいますし、大腸菌の仲間は3分の1しか棲んでいません。

そして、肥満率はアメリカ人の方が7倍以上高いという結果になっています。つまり、日本人は無理をしてデブ菌を減らしたりヤセ菌を増やしたりしない方が良いと言って差し支えないでしょう。

アメリカのデータをもとに、日本人の腸内フローラを見たら、「日本人は異常にデブ菌が多い」と言う結果になります。でも、それは近視眼的で商業的バイアスのかかった視点だと言えるでしょう。

無理にサプリメントなどでバランスを変えようとしない方が安全です。ビフィズス菌がうんと減って、そこにヤセ菌と呼ばれるものが増える結果になり、体調を崩すだけに終わる可能性が否定できません。

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