【世界のヨーグルト】中近東・アフリカのヨーグルトは多様で面白い

世界のヨーグルトは中近東に始まったと言われています。もちろん異説もありますし、完全に歴史が解き明かされたわけではありませんが、数千年の昔、このあたりで始まったと考えるのが自然だということです。

中近東のうち、近東に分類されるトルコの言葉、トルコ語ではヨーグルトのことをヨールトと言います。ラテンアルファベットで書かれる現代のトルコ語では、”Yogurt”(gの上には無発音・短音記号が付いています)と表記されます。

それが無発音・短音記号(ブレーヴェ)が使われない英語において、そのまま”Yogurt”になったと言うことです。

と、いうことで、世界のヨーグルト「中近東・アフリカ編」スタートです。

中近東では塩味ドリンクヨーグルトや濃縮乾燥ヨーグルトが豊富

イメージ的に中近東のトルコと、東ヨーロッパのブルガリアでは、なんとなく遠い国同士のイメージがあるかも知れませんが、トルコのイスタンブールより西のヨーロッパエリアは、ブルガリアと同じバルカン半島に含まれています。

トルコとブルガリアの世界地図における位置

ちゃんとトルコとブルガリアの間には国境線もありますので、ヨーグルト文化がヨーロッパに伝わる時のメインルートになっていてもおかしくないのです。

塩味ドリンクヨーグルトのアイランが人気

二日酔い対策のヨーグルトの記事で紹介した、ブルガリアのアイリャンと同じようなヨーグルトドリンクがトルコでも愛飲されています。名前もアイランというところから、おそらく共通の語源を持っているのでしょう。

アイランというのは、本来、岩塩地帯の遊牧民が作って飲んでいたバターミルクの名前だそうです。それが今では1%食塩水で2倍に薄めたヨーグルトのことを指すようになったということですね。

アイランは大メーカーが量産していて、スーパーの日配コーナーに並んでいるということです。現在作られているアイランは、ラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種(通称:ブルガリア菌)で発酵させたヨーグルトをベースに作っていると言うことです。

アイラン商品イメージ
(出展:Ayran 300ml – Beverages | Sbarro Turkey)

ブルガリアのアイリャンについては、関連記事を見てください。そちらには、トルコのマクドナルドで売られているアイランの写真も紹介しています。

▼関連記事
二日酔い対策に世界で使われているヨーグルトドリンク

濃縮乾燥ヨーグルトが豊富なトルコ

トルコはギリシャとも国境を接しています。そして、ギリシャヨーグルトのような水切ヨーグルトも存在しているのです。

単純にホエイを切っただけの濃縮ヨーグルトはトルバと言って、私たちがギリシャ風のヨーグルトを作る時と同じように、布や紙のフィルターで濾しただけのものです。市販品も出回っています。

トルバ商品イメージ
(出典:SUTAS Suzme Torba Yogurt – 1000g|Surpriz ndirim Market Online Marketiniz)

この写真は1kg入りのもので9.95トルコリラ、およそ300円です。わりあい安いですね。

また、単に水分を切るだけではなく、プレスして水分を抜き塩を加えてよく練り、丸めて天日乾燥した硬いヨーグルトをクルトと言います。探したのですが、工業的に量産したものは見当たりませんでした。

市場でヨーグルトを売るSekitarさんの写真
(出典:flickrより|Sekitar氏)

このように、市場でおばちゃんが売ったりしているようです。サイズがいろいろあるのが興味深いですね。

トルコは中東側からヨーロッパの一部まで、そして高地から平地まで様々な文化があります。遊牧民によってもたらされた発酵乳の乳酸菌は植物性のものであることも示唆されています。

一方で、牛乳などにもともと住んでいる動物性の乳酸菌も活躍していますから、細かく見て行くと非常にたくさんの種類があると言えるでしょう。

トルコと一口に言っても、日本の二倍以上の面積がある大きな国です。それにイスタンブールという、東洋と西洋をつなぐ架け橋のような街がある国ですから、文化の多様性は非常に大きなものです。

同じ名前で2種類の製品がある中近東と北アフリカの発酵乳

中近東から北アフリカにかけての地域では、「ラバン」あるいは「レベン」と呼ばれる発酵乳が、割合どこの地域にでも存在しています。この言葉は本来「ミルク」という意味なのですが、今ではほぼ2種類の発酵乳のことを指しているようです。

一つは地中海東部に面した北アフリカのうちリビアとエジプト、それに地中海アジアの国々です。このあたりでラバンまたはレベンと言うと、ヨーグルトのことを指します。

一方アラビア半島と、北アフリカのうちエジプト以外ではバターミルクのことを指すのです。リビアでは両方の意味で使われているようですね。

バターミルクはノンホモ牛乳の低脂肪ドリンクヨーグルト

牛乳は搾りたての状態では、乳脂肪でできた脂肪球が、さまざまな大きさで水の中に浮いています。この脂肪球のせいで牛乳は白く濁っているわけです。ただ、脂肪球が大きいと、黄色っぽく見えることもあります。

このような状態の牛乳を静かに置いておくと、比重の軽い脂肪球は表面に浮いてきて、底の方には脂肪分の少ない低脂肪乳が出来上がります。

牛乳にスターターとなる発酵乳を加えてかき混ぜ、静かに置いておくことで新しい発酵乳を作ると言うことをすると、表面には発酵乳でできたクリームが浮くことになりますね。

それからバターを作ったのが、いわゆる発酵バターです。そして、残った液体をバターミルクと言います。もちろん発酵させなくてもバターとバターミルクは取れますが、一般には発酵させたものを指すようです。

私たちが普段飲んでいる牛乳は、ミクロの小さな穴が開いた金属板に、圧力をかけた牛乳を通すことで脂肪球の大きさをその穴の大きさに揃える、ホモジナイズ(均質化)という加工を行ったものです。それに対して、均質化を行っていない牛乳をノンホモ牛乳と呼んだりします。

ホモ牛乳(ホモジナイズド牛乳)からはバターミルクは作れません。ですから、アラビア半島などで作られている量産品のラバン(レベン)は、おそらく低脂肪乳を発酵させることで作られているのでしょう。

時々「ホモ牛乳ではバターも作れないからよくない」と主張する人もいますが、もともとホモ牛乳は「バターができてしまわないようにしたもの」ですから、その主張は本末転倒です。

味と保存性の面を除いて、ホモ牛乳とノンホモ牛乳の間に差はないと言って良いでしょう。

ラバン商品イメージ
(出典:アルマライのラバン|サウジアラビアに引っ越しました)

上の画像は、サウジアラビア在住の日本人女性の記事を出典としています。それによると、アルマライの製品は「なんでも結構いける」と言うことです。アルマライはサウジアラビアの、割合有名な乳業メーカーです。

ヨーグルトのラバン(レベン)はヨーロッパで人気

リビアやエジプト、地中海アジアのラバン(レベン)は、ヨーロッパで「中東ヨーグルト」として人気があるようです。特に中東ヨーグルトと呼ばれているのは、シリア・ヨルダン・レバノン・イスラエルと言った、比較的政情の不安定さがリスクになる地域のものです。

伝統的なものからは、ストレプトコッカス属サーモフィルス種(通称:サーモフィルス菌)やラクトバチルス属アシドフィルス種(通称:アシドフィルス菌)などの高温発酵乳酸菌を中心に分離されています。

一方、工業的に生産されたものでは、菌の種類は明示されていないことが多いです。とは言え、ブルガリア菌の代わりにアシドフィルス菌を使って、代替菌ヨーグルトを作ることは珍しいことではありませんので、量産もたやすいでしょう。

ラバン商品イメージ2
(出典:Leben|Shefa)

この写真は、ベルギーで売られている中東ヨーグルトです。製品はイスラエル製のようですね。

中東や北アフリカでは「ラバン(レベン)○○」という発酵乳製品が良く見られます。○○の部分には、加工方法があてはめられることが多いようですね。

アフリカのヨーグルトも菌構成はそれほど変わらない

世界最古の文明の地の一つであるエジプトには、発酵乳とその加工品がたくさん存在しています。アフリカ最大の国アルジェリアでは、半固形・液状のヨーグルトより、乾燥させて保存が効くようにしたものが多く見られます。

一方、ケニアより南の方やアフリカ大陸の西の端では、あまり伝統的な発酵乳文化というものが見当たりませんでした。

エジプトの発酵乳文化は周辺国にも伝えられている

エジプトの発酵乳と言えばツァバディと言うヨーグルトがあります。牛乳でもいいのですが、現地では水牛のミルクを使ったものが人気だと言います。

発酵にはブルガリア菌とサーモフィルス菌と言う、世界中で最もメジャーな菌の組み合わせが使われています。

ツァバディ商品イメージ
(出典:Zabadi|Al Junedi Food Industries)

現代では、このような工業的量産品もあります。これはクリームを加えて乳脂肪分15%にした、こってりタイプのヨーグルトです。このツァバディをベースにチーズやバター、バターミルクなど、様々な製品が作られているのです。

エジプトの南隣の国、スーダンでもツァバディやその派生製品が同じように作られ、食べられていると言うことです。

マサイ族も発酵乳文化を持っている

タンザニア・ケニア・ウガンダと言った東アフリカ地方では、マサイ族などの部族がそれぞれに発酵乳文化を持っていましたし、それが現在の工業的発酵乳製造の基礎になっています。

マジワララと言うこの発酵乳は、伝統的な作り方ではヒョウタンの中を、火のついた棒でこすって消毒し、そこにミルクを詰めて自然発酵させます。自然発酵ですから、やはり中温発酵乳酸菌が多く見られたという報告があります。

ラクトコッカス属ラクティス種、リューコノストック属メセンテロイデス種の他、ラクトバチルス属プランタルム種の植物性乳酸菌も見られます。これはヒョウタンに由来するのでしょう。その他、ワイセラ属乳酸菌も見つかっています。

現在では、ラクトコッカス属ラクティス種、リューコノストック属メセンテロイデス種をスターターとして、工業的に生産されています。

マジワララ商品イメージ
(出典:Maziwa Lala|Sameer Agriculture and Livestock Limited , Nairobi- Kenya)

このマジワララを作っているメーカーは、Daimaと言う乳製品を中心としたブランドで、「アーバン・アフリカン・ライフスタイル」を謳って商品展開を行っています。

マジワララはバターミルクに分類されるため、ヨーグルトではなくミルク製品の扱いになってます。ヨーグルト製品には「ヨーグルト」と欧米風のネーミングでパッケージされています。

ナイジェリアではお粥に使われる

ナイジェリアには「ノノ」とか「ヌヌ」とかの名前を持つ発酵乳があります。調べたのですが、同一のものなのか、何か異なる部分があるのかはわかりませんでした。

このノノですが、液状の部分が多く、そのまま飲食するより、シコクビエ(四国稗)と言う雑穀をお粥にするときに使われることが多いようです。

フラ・ダ・ノノと呼ばれるこのお粥は、シコクビエに、大豆やギアナコーンのシリアルを混ぜて水で煮込み、十分柔らかくなったところでノノを加えてよく混ぜ、砂糖とコショウ、ショウガ、クローブなどで調味したものです。

好みでコーンスターチを使ってとろみをつけたり、シンプルにシコクビエと砂糖、ノノだけで作ることもあります。

ノノの写真
(出典:Fura Da Nono drink recipe|Dobby’s Signature)

モロッコではザクロ味ヨーグルトドリンクが人気

モロッコもヨーグルト文化が発達しています。ヨーグルトとして売られているのは、ギリシャヨーグルトタイプの硬めのものが多く、調理にもよく使われるようですね。一方で、ヨーグルトとして食べるものは、甘みを付けた市販品が多くなっているようです。

それに対して、モロッコの発酵乳はライビと言うドリンクヨーグルトです。詳しい製法などは不明ですが、ザクロフレーバーのものがメジャーです。

ライビ商品イメージ
(出典:Verpakking Raibi Jamil | Timaar)

また、バターミルクであるルブンは、クスクスを蒸したものを入れて食べるという用い方をします。

モロッコ料理には、ヨーグルトとセモリナ粉で作るハルシャと言うパンケーキもあります。

発祥の地だけあって多様性は驚くほどである

このように、ざっと見渡しただけでも、驚くほどの種類があります。もっと細かく見て行けば、この何倍もの発酵乳製品があるでしょう。

しかし、中近東からアフリカにかけては情報も入手しにくいということがありますので、実際に足を運ばないと全容は見えないと思います。

おそらくは1~2か国であっても、まず言葉をマスターしてから食べに行かないと難しいのではないでしょうか。

この記事をシェア

合わせて読みたい

ページ先頭に戻る