【北欧編】世界のヨーグルト特集。特徴的な乳酸菌食品の数々

北欧のヨーグルトというと、カスピ海ヨーグルトよりずっと粘り気の強いヴィーリが有名です。

現在、量産されて市販されている物は、伝統的なものとは少し異なることもあるようですが、それでも特徴的な粘りは引き継がれているそうです。

ヴィーリはフィンランドのヨーグルトですが、同じように粘りが強いヨーグルトは、北欧の各国で食べられています。

世界のヨーグルトを見渡した場合、北欧のものは日本ではあまり知られていませんが、ヨーロッパはもちろん、アメリカでも人気なんですよ。

「世界のヨーグルトや乳酸菌食品・飲料、北欧編」スタートです。

フィンランドのヴィーリはカマンベールと共通したところが多い

カマンベールチーズは日本でもかなり人気の高い白カビチーズです。カマンベールを覆っているのはペニシリウム属カメンベルティ種という、白いアオカビです。

チーズはスターター乳酸菌などで発酵させ、レンネットで凝乳し、その後熟成させます。そして、カマンベールチーズでは、最初の発酵の段階でカビの仲間である真菌も利用されています。

伝統的な製法だと表面にカマンベールのような白カビが張る

私たちが普段飲んでいる牛乳は「ホモジナイズドミルク」と言って、乳脂肪の粒を細かく砕いて均質化したものです。一方、昔は高度なホモジナイズ技術がなかったので、牛乳は静かに置いておくと、表面にクリームがたまり、底の方は低脂肪の薄い牛乳になりました。

カマンベールチーズは最初の発酵の段階で使われるスターターの中に、ゲオトリカム属カンジダム種の酵母が含まれています。そして、この菌はヴィーリのスターターにも含まれています。

そんな関係で、均質化されていない伝統的な牛乳でヴィーリを作ると、表面にクリームが浮いてきて、その上にカマンベールチーズに見られるような、ビロード状の白カビが現れます。

一方、現在普通に売られている牛乳を、既製のヴィーリをスターターとして発酵させた場合、クリームが浮かないので、こうした白カビはあまり見られません。もちろん白カビの部分は混ぜ込んで食べてもいいですし、取り除いても問題ありません。

ヴィーリの粘り気はクレモリス菌などによる菌体外多糖

ヴィーリの発酵にはラクトコッカス属ラクティス種クレモリス亜種(通称:クレモリス菌)が活躍します。カスピ海ヨーグルトでおなじみの乳酸球菌ですね。

その他、ラクトコッカス属ラクティス種ラクティス亜種やリューコノストック属メセンテロイデス種クレモリス亜種も一緒に使われています。いずれも球菌であることが特徴です。

ヴィーリ写真
(出典:Finnish Viili Culture|Yemos Nourishing Cultures)

このうち、ラクトコッカス属ラクティス種の2つの乳酸菌は「莢膜性スライム生産菌」と呼ばれることがあります。

莢膜というのは、細菌が細胞壁の外側につくる、主に多糖類でできた膜のようなものです。これは菌によって作ったり作らなかったりということがありますし、作ってもスタイルがいろいろあるのです。

はっきりとした膜のようなものは、英語でカプセルと呼ばれます。一般に莢膜と訳されるのはこれです。それに対して、菌が分泌した多糖類が複数の菌で共有されるものをバイオフィルムと呼びます。

その中間にあって、菌固有のものではあるけれど、膜というほどはっきりした境界線を持たないものをスライムレイヤーと言います。このスライムレイヤーの集まりが、ヴィーリなどの粘り気を持ったヨーグルトの粘り気成分なのです。

もちろん、カスピ海ヨーグルトのクレモリス菌やR-1乳酸菌などもスライムレイヤーを持っています。

ヴィーリだけじゃない!フィンランドの発酵乳、ピーマ

フィンランドではピーマと呼ばれる発酵乳もよく飲まれます。これはいわゆる「バターミルク」に近いもので、クリーム分を取り除いた残りの牛乳を発酵させた、あるいは発酵乳からクリーム分を取り除いたものです。

この発酵乳もラクトコッカス属ラクティス種が中心になって発酵されていますが、発酵の度合いが低いためか、それほど強い粘りは見られないようです。

ピーマ商品イメージ
(出典:Buttermilk -piima- in Finland |Demystifying Finnish dairy food)

一方、強い粘りを持つものにはピトカピーマと言うものがあります。ピトカはフィンランド語で「背が高い、長い」と言う意味で、おそらくスプーンなどですくって長く引っ張り伸ばせることから、粘り気が強いことを意味しているのだと思います。

これはヴィーリとおなじく、非常に粘り気の強いヨーグルトですが、酵母は使われていないようですね。

さらに、伝統的保存食として、牛乳を発酵させたあと、オーブンで加熱してホエイを蒸発させたコッケリピーマがあります。

コッケリと言うのはフィンランド語で「凝乳」、つまりチーズの元のような意味ですが、コッケリピーマは牛乳で薄めて飲むものだそうですので、凝乳とは少し意味合いが異なりそうです。

スライムと言うと、ロールプレイングゲ-ムの雑魚キャラを連想する人も多いでしょうが、ぬるぬるしたものの総称なんですよ。昔ツクダオリジナルからスライムと言う、ぬるぬるしたおもちゃが販売されていましたね。

おいしそう!ノルウェーとスウェーデンのヨーグルト

北欧の中央部、スカンジナビア半島を二分するのが、ノルウェーとスウェーデンです。2つの国を区切るスカンジナビア山脈がある上、両国とも南北に長いので、気候はさまざまです。

しかし、発酵乳・ヨーグルトなどについては、二国のみならず、フィンランドとも共通する要素が数多く見られます。

粘り気のある発酵乳はスカンジナビア半島にも見られる

スカンジナビア半島の大西洋側にあるノルウェーでは、テッテメルクと言う名前の、粘性の強いヨーグルトがよく食べられています。酸味が強いのが特徴です。

テッテメルク商品イメージ
(出典:Tjukkmelk / Tettemjolk | Ravarer og ingredienser pa Dagbladet Mat)

このテッテメルクは、テッテグラスと呼ばれる植物を大樽の底に敷いて、上から牛乳を注いで発酵を待ったと言う製法だったそうです。このテッテグラスは、日本語で「ムシトリスミレ」と呼ばれる食虫植物です。

日本にも自生していますが、高山植物ですので、勝手に採取したりすると罰せられますから注意して下さい。今では、乳酸菌スターターを用いて工業的に作られていますので、伝統的な製法が残っているのかどうかはわかりません。

乳酸菌としてはヴィーリと同じくラクトコッカス属ラクティス種とリューコノストック属メセンテロイデス種が中心になっています。中温発酵乳酸菌、つまり室温で発酵できる乳酸菌です。

ただ、酸味が強いということは、菌株が異なるのか、菌のバランスが異なるのかはわかりませんが、ヴィーリやピーマと、全く同一というわけではなさそうですね。

さらに、ノルウェーの発酵乳と言えば、メルケリンゲが家庭で作られるものとしてメジャーな存在です。どちらかと言うとお菓子的な料理です。牛乳に既製のサワーミルクや発酵乳を20%ほど加えて混ぜ、一晩置いておくだけです。

日本の柔らかめのプレーンヨーグルトぐらいの硬さに固まったものを崩して、砂糖やシナモン、フラットブレッドというシンプルなパンを砕いたものを、加えて混ぜてから食べるようですね。

スウェーデンではシリアルに合わせて食べる

スウェーデンのヨーグルトも、同じ菌の種類を使った粘り気のあるタイプのものです。「フィルミョルク」と言う名前のこの製品は飲むことができる程度ではあるものの、濃厚な粘りを持った発酵乳です。

一般的には、シリアルやミューズリーなどにかけて食べるのが一般的であるようです。製品としては、牛乳のような容器に入れられて「飲み物」の扱いで販売されています。

実際、英語圏への翻訳では、ヨーグルトではなくケフィアと言う扱いで翻訳されることが多く見受けられます。

フィルミョルク商品イメージ
(出典:Filmjolk – Alchetron, The Free Social Encyclopedia)

また、ラングフィルと言う製品は、かなりヴィーリに近いテクスチャの発酵乳です。この2つは、スウェーデンの中では一般的なようですが、フィルミョルクの方が全国区で一般的なようですね。

ラングフィル商品イメージ
(出典:Langfil|Filibabba!)

ムシトリスミレの他に、モウセンゴケを使っていという情報もありました。でも、食虫植物からの乳酸菌の分離は成功していないそうなので、ちょっと謎ですね。

デンマークとアイスランドの発酵乳は趣が異なる

北欧と言ってもピンとこないという人がいるかも知れないデンマークとアイスランドですが、一般的にはスカンジナビア文化圏に入るデンマークは、間違いなく北欧です。

そしてアイスランドは、スカンジナビア半島の真ん中あたりと同緯度の大西洋上にある島で、文化的にはやはり北欧と言って良いエリアだと思います。もともとデンマーク領でしたしね。

デンマークは乳酸菌大国

酪農や牧畜が盛んなデンマークですが、意外なことにチーズ製造技術は大戦後にヨーロッパの他の国から持ち込まれたものだそうです。一方で、発酵乳については家庭で古くから作られていました。

現在は、世界最大級の菌株メーカー、クリスチャン・ハンセン社を擁する発酵乳大国と言っていいでしょう。そのデンマークの発酵乳はバターミルクや濃縮乳が活用されています。

バターミルクとは、バターを採った後の低脂肪乳です。それに全脂牛乳やクリームを加えて、自然発酵させたものがチクメルクと言う発酵乳です。もちろん現在は複数のメーカーによって商品化され、スーパーなどで買い求められます。

下の画像はチクメルク・アシドフィルスです。つまり、アシドフィルスミルクとして作られたチクメルクと言うことですね。自然発酵ではなく、ラクトバチルス属アシドフィルス種(通称:アシドフィルス菌)をスターターに使ったものだということです。

チクメルク・アシドフィルス商品イメージ
(出典:Tykmalk acidophlius 3.5% 1 liter|ALDI Danmark)

また、発酵乳を濃縮したり、あらかじめ逆浸透膜を使って水分を減らした濃縮乳を発酵させたりして作るイメールと言う発酵乳も一般的です。濃縮乳ながら低脂肪乳を使って、濃厚なのに普通牛乳並みの乳脂肪というものが人気のようですね。

イメール商品イメージ
(出典:Coop Ymer 3.5% 1 kg|Super Burgsen)

このイメールは、ヴィーリなどと共通する乳酸菌によって作られています。ただ、濃縮されているため、テクスチャは異なります。

恵まれた食文化を持つアイスランド

もともとアイスランドは1944年に独立するまで、デンマークの一部でしたから、食文化もデンマークに由来するものが数多くあります。

一方で、高緯度にも関わらず火山性の温泉などのお陰で、比較的温暖な気候が保たれているため、牧畜も漁業も盛んですし、豊かな食文化が形成されています。

韓国ぐらいの国土面積があるのに、人口はわずか35万人弱という小国でもあります。

このアイスランドではスキールと言う発酵乳が食べられています。このスキールは、乳酸菌とレンネットを使って固めた牛乳からホエイを取り除いたもので、厳密にはフレッシュチーズです。

しかし、下の商品写真にも「アイスランドスタイル・ヨーグルト」と書かれているように、一般的にはヨーグルトとして食べられています。

アイスランドスタイル・ヨーグルト・スキール商品イメージ
(出典:PC Plain Skyr Icelandic Style 0% M.F. Yogurt | PC.ca)

スキールはそのまま食べることもありますが、フルーツや砂糖、牛乳やクリームなどを掛け、調味して食べるのが一般的です。

日本にあるデンマークヨーグルト株式会社の社長さんは、インタビューに答えて、いずれ日本でもチクメルクやイメールを商品化してみたいと言っています。実現してほしいですね。

デンマークの乳酸菌以外あまり触れる機会がない

クリスチャン・ハンセン社の乳酸菌株を使ったヨーグルトは、知らない間に結構食べているとは思いますが、北欧スタイルのヨーグルトは余り食べる機会がないです。

もし可能ならば、ヴィーリあたりが日本で商品化されるとうれしいですね。あの強烈な粘りには惹かれるものがあります。

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