植物性乳酸菌の効果。生きて腸に届くけど実は腸に定着しない!?

「植物性乳酸菌」と言う言葉は、サプリメントの広告などでよく見聞きします。

では、この植物性乳酸菌とはどんなものなのでしょう。なんとなく植物性と言われると身体に良いような気もしますね。

細菌には自分で動くものと動けないものがいるため、中には乳酸菌に植物のものと動物のものがあると勘違いされている人もいるようですが、それは違います。そもそも乳酸菌はすべて運動性を持ちません。

ま、そういう難しい話はあとにして、植物性乳酸菌とはどんなものなのか、どんな効果があるのか。まずは植物性乳酸菌と生活のかかわりから見て行きましょう。


植物性乳酸菌はどこにでもいる?注目のきっかけとなった商品の秘密

昔のブルガリアでは、毎年春の祭日に、樹の葉にたまった朝露を乙女が集めて、それを牛乳に入れて発酵を始めていたそうです。まさに植物性乳酸菌ですね。

しかし、牛乳は牝牛から搾りますので、その乳房に付着していた動物性乳酸菌も活躍しています。一方、冬の間牛に食べさせる牧草はサイロに保管されますが、その牧草を日持ちさせ栄養価を高めるために、植物性乳酸菌による発酵(サイレージ)も利用されます。

当然、牛にはその植物性乳酸菌が付着するでしょう。

このように、植物由来だから植物性、動物由来だから動物性と言った切り分けは到底完全なものとは言えず、単なる習慣であると言って良いでしょう。

京漬物から分離されたラブレ菌

日本で植物性乳酸菌に注目が集まったのは、カゴメのラブレがきっかけでしょうか。これはラクトバチルス属ブレビス種KB290株(通称:ラブレ菌)という乳酸菌に、高い健康効果が見つかったことに端を発しています。

▼カゴメ ラブレシリーズ
ラブレシリーズ商品イメージ

商品としてのラブレについては、特定保健用食品や機能性表示食品を取得していないので、効果効能についてはまったく表示されていませんが、菌としての研究で整腸効果や免疫改善効果が見つかっています。

このラブレ菌は、日本で初めてヒトインターフェロンの人工的生成に成功した岸田綱太郎博士が、1993年に京都の伝統的漬物の「すぐき」から発見、分離したものです。

すぐきは江戸時代初期に作られ始め、現在の製法が完成したのは大正年間だとされています。すぐき菜と呼ばれる蕪の変種を、塩水と塩で二段漬けした後、炭火で40℃弱に加温した室の中で乳酸発酵させて完成します。

伝統漬物において、このような人工的発酵管理(温醸による乳酸発酵)を行うものは、世界に類を見ないものであるという研究もあります。

京都の三大漬物と呼ばれるものに、このすぐきのほか、柴漬け、千枚漬けがあります。もともとすべて乳酸菌による発酵が利用された漬物でしたが、柴漬けは過半数が、千枚漬けはほぼ全部が調味液を使ったものに置き換えられています。

そういった意味で、すぐきは非常に貴重な漬物文化の財産だと言えるでしょう。

発酵漬けは植物性乳酸菌の宝庫

実はすぐきから見つかった乳酸菌はラブレ菌だけではありません。ラブレ菌と同じブレビス種の菌株が数種類と、ラクトバチルス属プランタルム種の菌株が十数種類見つかっています。

たまたま、健康に最も役立ちそうだという事でラブレ菌が注目されただけです。例えば、ラブレ菌の菌株メーカーである日東薬品は、同じラクトバチルス属ブレビス種NTT001株(商品名:乳酸菌T001)と言う菌株も持っています。

日東薬品によると、この菌株も岸田綱太郎博士による発見だとしています。この菌株はお菓子メーカーのロッテに供給され、「乳酸菌ショコラ」シリーズに使用されています。

▼ロッテ 乳酸菌ショコラ シリーズ
ロッテ乳酸菌ショコラシリーズ商品イメージ

また、韓国の漬物であるキムチからも、ラクトバチルス属プランタルム種が見つかっています。とは言え、キムチも日本の漬物同様、調味液を使ったものも増えてきています。

各家庭で漬けられる、伝統的なものでは植物性乳酸菌が良く増えているようですが、市販品ではそれほど多くないそうです。また、乳酸菌を後から添加したものもあるようですね。

ドイツでヴルスト(ソーセージ)のお供として欠かせないキャベツの漬物、ザワークラウトもラクトバチルス属プランタルム種による発酵であることがよく知られています。

もちろん、自然発酵の漬物が多いため、乳酸菌の種類はこれに限ったものではありません。主流であるというだけですね。

自然発酵なのになぜ菌種が偏るのか

漬物で見つかる乳酸菌の多くは、空気中に漂っていたり、原料の野菜に付着していたものだったりします。なのに、製品になったものから分離される菌が、比較的少ない種類の菌に偏るのはなぜでしょう。

これは乳酸菌が持っている環境対応能力によるものなのです。ヨーグルト乳酸菌の代表であるラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種(通称:ブルガリア菌)は、植物性の培地ではうまく発酵しません。

これはおそらく牛乳に含まれている糖質以外の、例えばアミノ酸などの中に、ブルガリア菌の生育に欠かせない成分があるからだと考えられています。

つまり、植物性乳酸菌と言われているものは、単に植物から分離されたものではなく、動物性の栄養素が存在しなくても生育可能な乳酸菌であると考えた方が妥当でしょう。

言い換えれば、生育条件にそれほどうるさくない乳酸菌だとも言えるかもしれませんね。動物性乳酸菌より繁殖できる環境が広いという事です。

そのことは、生きて腸まで届きやすいのではないかと言うことにつながり、一部の菌ではそのことが実験で確認されているようです。

乳酸菌と言うと、どうしても炭水化物との関係に注目しますが、生き物である以上、たんぱく質やアミノ酸、ビタミンなしには生きられないわけですので、そうしたことも影響するのです。

漬物以外にも植物性乳酸菌はいっぱい利用されている

日本人の食生活の基本は大豆と塩でできているとまで言われます。油揚げの味噌汁と、醤油をかけた冷奴、枝豆と言う食事を考えた場合、出汁と薬味以外は大豆と塩だけでできていますね。

そこで活躍するのが発酵です。味噌と醤油は発酵調味料ですね。ここでは乳酸菌も活躍しているのです。もちろん相手が大豆ですから植物性乳酸菌です。

醤油乳酸菌と言うものがある

醤油乳酸菌と呼ばれるのはテトラジェノコッカス属ハロフィルス種の四連球菌です。塩分に強く、麹菌を使った醤油の醸造において、独特の酸味を加えてくれる乳酸菌です。

魚の内臓からも検出されているので、植物性と言い切っていいのかどうかは微妙ですが、私たちに身近なところでは醤油と味噌の発酵に深くかかわっています。

醤油醸造にかかわる乳酸菌は、ほとんどがこの菌だと言って差し支えないでしょう。

味噌の植物性乳酸菌は種類が多い

もちろん醤油と味噌は近い関係にありますので、味噌でもテトラジェノコッカス属ハロフィルス種の乳酸菌はたくさん見つかります。一方で、植物性としてメジャーなラクトバチルス属プランタルム種の乳酸菌もよく見つかります。

さらに、ペディオコッカス属の複数種の乳酸菌や、ストレプトコッカス属フェカリス種などの広義の乳酸球菌が見つかることも多いです。これらは増えすぎると味噌が酸っぱくなるというネガティブな性質も持っています。

ただ、耐塩性と言う面で見ると、最初の二つより弱いので、減塩味噌でしかも無殺菌の場合でない限り、味噌が酸っぱくなることはあまりないと思います。

こうした乳酸菌が生きている味噌の場合、麹も生きていますので、過発酵に注意して冷蔵保存してくださいね。

清酒造りにも乳酸菌が活躍することがありますが、逆にダメにすることもあるので難しいですね。いわゆる火落ち菌の多くは、真性火落ち菌ではなく火落ち性乳酸菌なのです。

意外?植物性乳酸菌は腸にほとんど定着しない

腸内細菌は排他的であるということがよく言われます。もともと腸内細菌として定着している菌以外、新参者の参入を許さないのです。それは善玉菌とか悪玉菌とかの、人間の都合による分類とは全くかかわりがありません。

その勢力図は、赤ちゃんの時にほとんどが決まります。ほぼ無菌状態で生まれてくる赤ちゃんは、産道を通る時にお母さんから腸内フローラを受け継ぎます。そして、生れ落ちてからは環境から菌を取り込むのです。

細菌にとって胃を通過するのは大変

腸内細菌の中心は全体の70%くらいを占める、いわゆる「日和見菌」です。善玉菌と呼ばれているものは、全体の20%程度で、残り10%前後が悪玉菌と呼ばれています。

これはわかりやすくするためのネーミングで、悪玉だからゼロにすべきだとは考えないでください。あくまで大切なのはバランスで、「善玉菌が多めで活発な方が良い」程度に受け取ってもらうのが良いでしょう。

そして、善玉菌全体の99.9%以上がビフィズス菌です。残り0.1%未満が、小腸にいる乳酸菌など、ほかの有用菌なのです。ですので、善玉菌を増やすといった場合、ほとんどビフィズス菌を増やすという事とイコールだと言えるでしょう。

外来の菌は、乳酸菌であろうとビフィズス菌であろうと、はたまた病原菌であろうと、その大半は胃の中にある胃酸で殺菌されてしまいます。胃酸は塩酸を中心とした消化液で、pH1.0~1.5くらいの強い酸です。

ですから、胃の中には内容物1グラム当たり数個から数十個程度の菌しか含まれていません。自分で自分を守ることのできる一部の細菌だけが胃を生きて通過し、腸に届いてから増殖するのです。

ただ、自分を守る力がそれほど強くなくても、食直後は食べ物によって胃酸が薄められていますから、細菌も通過しやすくなります。そのことは乳酸菌であっても、食中毒菌であっても同じなので、食べ物の衛生状態には注意しましょうね。

定着できそうでもいずれ追い出される

やっとの思いで胃を通過しても、十二指腸には胆汁が分泌され、食べ物と一緒に細菌も消化しようとします。それによって殺菌されてしまう乳酸菌も多いのです。

そして、小腸にたどり着けた乳酸菌は、そこで増殖します。これを「生きて腸まで届く」と表現しているわけですね。植物性乳酸菌は、耐酸性が強く、生きて腸まで届くことができるものが多いとされています。

もちろん、栄養素の要求条件が低いため、より生育条件が簡単であるという事も影響しているでしょう。小腸までたどり着いた乳酸菌は、そこで炭水化物をエサに生命活動を行います。

私たち生き物は、ATP(アデノシン3リン酸)と言う物質を介してエネルギーを作り出して生きています。酸素を利用できる人間などの動物や植物、カビなどの好気性微生物は1分子のブドウ糖から38個のATPを作り出します。

それに対して、嫌気性細菌である乳酸菌は、1個か2個しかATPを作り出せません。そして、ATPを作り出すときの副産物として乳酸を作り出すのです。ATPを1個しか作らない菌は、アルコールや二酸化炭素を作ることもあります。

小腸から大腸にかけての消化管の中で、乳酸菌はそこにある炭水化物をエネルギー源に、この乳酸発酵を繰り返しながら後ろへと送り出されます。

菌としてはそこに棲み付けばエサが確保できるので、できればそうしたいのでしょうが、腸管には人間の免疫システムがあって排除されてしまいます。

また、うまく免疫システムからの攻撃を免れても、先住の腸内細菌によって排除されます。その結果、口から摂った乳酸菌は、生きて腸まで届く植物性乳酸菌であっても、数日で便と一緒に排泄されてしまいます。

もちろん、腸の中を流されている間は、善玉菌として働いてくれますので、口から摂ることには大きな意味があります。

ですので、乳酸菌は毎日摂るのが良いのです。常に腸管の中に乳酸菌を送り込んでいれば、定着はしなくても、いつも一定数がいるという状態にできるからです。

知っておくとかっこいい(?)細菌は動物でも植物でもないという話

さてここで、最初にお話ししたちょっと難しい話に踏み込んでみましょう。生物の分類は、日々新たな方法が提唱され更新されて行っていますが、メジャーなところでは生物を3分類するところからスタートするのが一般的です。

この分類ではウイルスは含まれません。ウイルスは細胞を持たないので、遺伝子を持つ無生物と言う扱いです。

そして、生物は細胞の構造や、化学的な組成に基づいて3つに分類され、さらに細かく分けられて行くというのは最も一般な方法です。このサイトでもよく紹介している○○属○○種と言うのは、その最下位分類です。

動物と植物は最上位では同じグループだが細菌は違う

生物は最初3つのドメインという階級に分類されます。それぞれのドメインは、界・門・綱・目・科・属・種と言う順に、どんどん細かく分類されるのです。さらに必要に応じて「亜」とか「上」、「下」などの接頭語をつけて分類幅を広げたりすることもあります。

また、それで追いつかない場合は「族」「連」「群」などの補助的分類階級を間に入れて行くこともあります。それらの最上位にあるのがドメインです。ドメインには次の3つがあります。

  • ユーカリオータ・ドメイン (真核生物)
  • バクテリア・ドメイン (真正細菌)
  • アーキア・ドメイン (古細菌)
乳酸菌はすべて真正細菌ドメインに属しています。真正細菌ドメインは1つの真正細菌界に分類されるため、界を飛ばして、次の階級である門で大別します。

狭義の乳酸菌はすべてファーミキューテス門に含まれ、広義の乳酸菌に含まれるビフィズス菌は、すべてアクチノバクテリア門(放線菌門)に含まれます。

一方、日本語では同じ菌の漢字を使った名前を持つ、カビや酵母などの仲間である真菌類は、真核生物に分類されます。真核生物は、カビなどの菌界、人間などの動物界、花や樹木などの植物界の他、あといくつかの界に分類されます。

つまり、動物や植物、カビなどは同じグループだけど、乳酸菌は「生物であること」以外、動植物とは共通点を持たないのです。

植物性乳酸菌とは植物から分離されることがある乳酸菌

植物性乳酸菌と呼ばれるものの代表格は、ラクトバチルス属プランタルム種です。ラクト(乳の)バチルス(桿菌)プラント(植物の)アルム(接尾辞)ですから、まさに「植物性乳酸菌」ですね。

ドイツのキャベツの漬物であるザワークラウトや、日本の漬物、醤油乳酸菌としても確認されていて、植物性乳酸菌と呼ぶにふさわしいものです。

しかし、実は1919年にこの菌が確認されたのは、人間の唾液からだったのです。その後植物から次々に見つかったためにプランタルムと言う名前が与えられました。

また、滋賀県の名産、二ゴロブナを発酵させた「鮒ずし」の発酵にもかかわっています。鮒ずしは米と魚を合わせて発酵させているので、植物性の要素もあることはあります。

ソーセージに必要な植物性乳酸菌

しかし、欧米の「発酵ソーセージ」と言う、純粋に肉を発酵させたものでも活躍していま。発酵ソーセージには2タイプあって、一つは生のままパンなどに塗り広げられるもので、私たちにはあまりなじみがありません。

もう一つは、乾燥した硬いタイプで、サラミソーセージやペパロニの名前で、私たちにとってなじみ深いものです。

サラミソーセージなどの発酵ソーセージで活躍するのは、このラクトバチルス属プランタルム種のほか、ペディオコッカス属アシドラクティック種の四連球菌が知られています。

こちらの菌もザワークラウトなどから見つかっていますので、植物性乳酸菌と呼ばれることが多いです。しかし、サラミソーセージを作り出すわけですから、動物性のものを発酵できないわけではありません。
このように、植物性乳酸菌と呼ばれていても、動物性のものを発酵できないわけではないので、植物から分離されたという意味の「植物性」の言葉は厳密な物とは言えません。

植物性だから優秀だという事はない

確かに生きて腸まで届きやすいという事はありますが、本来非常に脆弱で生きたまま腸に送り届けるのが難しいビフィズス菌であっても、今は生かしたまま送り届ける技術があります。

ですので、特に植物性乳酸菌だから動物性乳酸菌より健康に良いという事はありません。

でも、日本人の食生活を考えると、ヨーグルトが普及したのはこの数十年に過ぎません。それまではぬか漬けや発酵漬けなどの漬物から植物性乳酸菌を摂っていたのが生活の中心でした。

そういう意味では、漬物などから摂る植物性乳酸菌は、日本人のお腹になじみやすいかもしれませんね。

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