醤油の乳酸菌がすごい!免疫調整作用を持ち塩に強い特別な乳酸菌

日本の食卓に無くてはならない調味料、醤油。

醤油は旨味と塩辛さだけではなく、独特の酸味が合わさって味に深みが出ているとても美味しい調味料です。

この酸味と旨味には乳酸菌が深く関係しているのですが、醤油の中には細菌が生きるのにはちょっと厳しいほど塩分が入っています。

乳酸菌と酵母が織りなす、旨味のハーモニーの秘密を見てみましょう。

塩に強い植物性乳酸菌が醤油を旨くする

醤油と味噌はよく似た加工食品・調味料であると考えられることが多いです。確かに大豆と塩、麹を使って作る発酵食品であるというところは共通していますし、乳酸菌が関係することも同じです。

一方、割合多くの種類の乳酸菌が関係する味噌に対して、醤油ではそれほど多くの種類は関係しません。また、「たまり醤油」は味噌から搾ったものですが、それ以外の醤油は、むしろお酒のお醸造技術の応用という部分も多いのです。

醤油はお酒と似た醸造方法を取っている

いわゆる「こいくち醤油」に代表される醤油は、まず、大豆や小麦も水に浸してから蒸し上げ、これに麹菌を繁殖させるところから始まります。

麹が充分増えたら、これに塩水を入れよくかき混ぜると、乳酸菌が繁殖して全体を酸性にします。続いて酵母が繁殖してアルコールを作り出します。

充分熟成したら、布に包んでこれを搾ると「生醤油」ができます。最後にこれを加熱して殺菌したら出来上がりです。

こうやって見ると、材料の違いはありますが、ほとんど清酒の醸造と同じですね。活躍する菌の種類も、ほぼ同じタイプのものばかりです。もちろん具体的な菌株は異なります。

特に、醤油づくりでは塩水を使いますので、耐塩性の強い菌でないと死んでしまって発酵を行えません。そこが清酒醸造と大きく異るところなのです。

味噌作りはまたの機会にお話しますが、原料がほとんど同じで、塩を使うところも共通しているのに、乳酸菌の菌株は全く異なってくるのが面白いですね。

醤油の乳酸菌はアレルギーを改善する

醤油づくりだ活躍している乳酸菌は、もともと醸造蔵に棲んでいたものです。木桶を使っていた時代には、そこから移ってきたものも多かったでしょう。

今では、それがどのような菌であるかも判っていますし、その菌が持っている健康効果も知られています。

四連球菌と言う短い鎖の形をした乳酸菌

醤油乳酸菌として分離されたのはテトラジェノコッカス属ハロフィルス種と言う、ヨーグルトの話題などでは聞くことのないグループの菌です。

テトラ(4)ジェノ(遺伝子)コッカス(球菌)と言う名前から想像できる通り、この乳酸菌は小さな球形の菌体が4つ連なった、四連球菌と呼ばれる形をしています。

元は20世紀初頭に醤油の「もろみ」(醤油の醸造で醤油を搾る前の液体に入っている固形部分)から、この菌は分離されました。その後、いくつかの菌株が見つかっていますが、基本的にはすべて醤油乳酸菌です。

他には、味噌や糠漬けからも分離されています。面白いことに、この乳酸菌は細菌のくせに25%の塩分濃度に耐えることもあります。逆に乳酸菌なのに好適繁殖pHは中性から微アルカリ性なので、あまり酸性が高くなると活動が弱くなります。

これは植物性乳酸菌だとするのは早計

大豆製品から分離されたり、糠漬けから分離されたり、そもそも最初は小麦から見つかったりと言うと「植物性乳酸菌だから生きて腸まで届く」と考えてしまうと間違うかもしれません。

実はこの乳酸菌は、サバの内臓に棲んでいることも知られていて、サバの塩辛からも分離されています。さらにはオイルサーディンと言う、イワシを乳酸発酵させてオイルに漬けた物からも見つかっています。青魚を好むのかも知れません。

キムチから分離されることもありますが、これには野菜だけでなくオキアミや牡蠣などの動物性食品も使われていますから、どちらに由来するのかは不明です。

つまり、この乳酸菌は植物性とも動物性とも言えるものなのです。やはり特長としては「耐塩性乳酸菌」と言う部分でしょう。

菌体成分がアレルギーを改善する

キッコーマンによると、テトラジェノコッカス属ハロフィルス種Th221株(通称:Th221株)の殺菌菌体を、通年性アレルギー性鼻炎を持つボランティアに投与した臨床試験で、1日に60mgを8週間服用した群で、自覚・他覚症状ともに有意に改善したそうです。

試験結果を見ると、4週間ではあまり効果が見られず、8週間で大きな差が出たとあります。やはり、免疫調整には2ヶ月程度かかるようですね。

(参照:乳酸菌は免疫を活性化する・Tetragenococcus halophilus KK221(Th221株))|キッコーマン株式会社)

菌株名にKK221とTh221の2つが表記されていますが、英語の論文ではTh221表記ですので、おそらくKK221と言うのはKiKkomanから作られた菌株名で、Th221はTetragenococcus halophilusから作られたものと、同じものを指しているのだと思われます。

yこの乳酸菌の菌体成分を使ったサプリはキッコーマンから発売されています。「トマトのちからに植物性乳酸菌をプラス!アレルクリアプラス」と言う商品名で、1日分の目安量には、この臨床試験で使われたのと同量の60mgが配合されています。

この製品はトマトポリフェノールとの配合になっています。以前は乳酸菌だけのミント味のものもあったのですが、現在は終売になっているようです。

▼トマトのちからに植物性乳酸菌をプラス!アレルクリアプラス
アレルクリアプラス商品イメージ
(出典:キッコーマンのオフィシャルオンラインショップ「健康こだわり便」)

海産物では悪さをする可能性も?

突然ですが、塩辛、美味しいですよね。実は長い間、塩辛では塩分濃度が高すぎて事実上ほぼ無菌状態であり、発酵熟成は原料の魚介類が持っている消化酵素による自己消化で旨味が作り出されていると考えられていました。

しかし、その後の研究で、塩辛の塩分濃度でも平気で生きている乳酸菌がいることが発見されたのです。そして、塩辛の旨味成分の生成には、その乳酸菌によるところもかなりの比率を占めているとわかったのです。

この乳酸菌がテトラジェノコッカス属ハロフィルス種です。つまり、大豆や醤油蔵だけでなく、海の中でも魚の内臓の中でも生きている乳酸菌だったわけです。

島根県産業技術センターなどの研究によると、この乳酸菌は市販のサバの塩辛30品種を検査したところ、すべての商品から検出されたそうです。つまり、塩辛の塩分濃度では問題なく発酵に関われていたというわけです。

ところが、2品種を除く全部から、ヒスタミン産生能力を持つ菌株が検出されてしまいました。これは「サバを食べてぶつぶつが出る」と言う、ヒスタミン食中毒の原因になる菌だという意味ですね。

幸いなことに、商品の中ではヒスタミンを検出限界以上作り出していたのは2品種だけでした。塩辛から分離した菌を、常温で10日培養したらほとんどがヒスタミンを作ってしまったと言うだけです。

(参照:水産物由来耐塩性乳酸菌Tetragenococcus halophilusの食品機能性に関する研究|島根県産業技術センターほか)

つまり、冷蔵庫に入れておいたら問題ないけど、うっかり長い時間常温で放置してしまった塩辛は、食べるとぶつぶつが出る可能性があるということです。

意外なデメリットですが、海の中にいる細菌の中には、0℃でもヒスタミンを作り出す菌がいることを思えば、常温でしか活動しない乳酸菌は、全く問題ないレベルだといえます。

では、醤油は常温で作るけれど平気なのかということも気になりますね。それも問題ありません。ヒスタミンはヒスチジン脱炭酸酵素と言う物の働きで、必須アミノ酸から作られます。

そして、このヒスチジンという必須アミノ酸は、青魚に比べると大豆の中には1/10~1/5程度しか含まれていません。ましてやサバを100g食べることはあっても、醤油を100gも一度に摂ったら、塩分のほうが大変なことになります。

それに醤油は一部の高級品を除いて火入れして乳酸菌や酵母を殺菌してありますので、常温でも発酵やヒスタミン産生が進むことはありません。ですから安心して醤油を使って下さい。

乳酸菌にヒスタミン産生能力があったというのも驚きの発見ですね。でも、それより健康効果のほうが大きいと考えて良いと思います。

健康効果より旨味を作り出す効果をありがたくいただこう

このように、醤油乳酸菌にはアレルギーを抑制する効果があるのですが、その有効量を醤油からだけ摂るのは少し難しいようです。

ですから、「足しになれば良い」と言う程度の意識で醤油を使えば良いと思います。塩分の問題もありますが、逆に塩だけで味付けしていたものに、上手く醤油を利用するのがお得でしょう。

発酵調味料である醤油は、食品に旨味をつけてくれますから、使い方を工夫すれば塩だけで調味するよりずっと美味しく、健康的な調理が可能になると思いますよ。

醤油の歴史はそれほど古くない

最後に、醤油の歴史に少し触れておきます。

醤油という名前が日本の歴史に登場したのは、奈良時代から平安時代で、名前自体には非常に長い歴史があります。しかし、この頃の醤油は今のものとは結構違っていたようです。

昔は塩分の強い大豆ペーストと言った感じだったようで、現在ほどしっかり発酵していなかったのかもしれません。

この「醤」(訓読み:ひしお)と言う文字は、塩蔵食品・調味料のことを指し、古くは草醤と言うと漬物のことを指したようです。

現在でも、例えば豆板醤や甜麺醤と言った中華調味料や、苦椒醤(コチュジャン)、薬念醤(ヤンニンジャン)と言った朝鮮半島の調味料にも醤の字が使われていますね。

日本のものとはかなり味が違いますが、中国本土にも醤油(ジャンヨゥ)と言う液体調味料もありますし、朝鮮半島にもカンザンと言う物があります。見た目はたまり醤油のイメージですね。

その他、東南アジアにはナムプラーやニョクマムなどの魚醤がありますが、日本にも「しょっつる」があります。こうしたさまざまなものとの関係から、醤油は進化を遂げて行きました。

それでも醤油自体が高価であったため、庶民の食卓に普遍的に並ぶようになったのは昭和に入ってからだと言われています。それまでは味噌を絞った「たまり」が調味料の主役だったそうです。

大正時代の第一次世界大戦に伴う好景気で、設備投資が可能になった大メーカーのお陰で、醤油の価格が庶民の手の届くものとなったから、昭和初期に一気に普及したのです。

そのあたりから考えると、テトラジェノコッカス属ハロフィルス種が主役になったのは、意外に新しいのかもしれませんね。

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