【実験有り】お米のとぎ汁では乳酸菌化粧水はつくれない!

お米のとぎ汁を化粧水として活用しているという話をよく耳にします。とぎ汁そのものを洗顔用水として使うことで、化粧水としての機能を期待するケースもあるようです。

一方、お米のとぎ汁を乳酸発酵させ、それを化粧水として使っている人もいると聞きます。お米には乳酸菌が付着していることもありますので、それを利用した発酵化粧水というわけですね。

こうしたものの利用方法などについて、効果と安全性の面から少し考えてみましょう。

あなたのそのとぎ汁化粧水、実は腐敗物だらけの毒を顔に塗りたくっているかも…!

米のとぎ汁に存在する乳酸菌の種類は判らない

米のとぎ汁に含まれている可能性があると言うだけの天然の乳酸菌ですので、どんな菌がついていたのかは判りません。いわゆる「野良乳酸菌」です。また、お米には乳酸菌以外の菌も当然付着しているでしょう。

その中には、有用菌である酵母などがいるかもしれませんし、ただの雑菌であるかもしれません。もちろん腐敗菌がついている場合もあります。

スタート時点の割合が重要

米のとぎ汁を容器に入れて、発酵に適した温度にキープした場合、とぎ汁の中で菌が繁殖します。その際に重要になるのは「どの菌のスタートダッシュが早かったか」ということです。

乳酸菌の数が多くて栄養となる炭水化物が多かった場合のように、最初に繁殖を始めたときから数が支配的になっていると、発酵で分泌される乳酸などの物質によって他の菌の繁殖が抑えられます。

その結果、発酵化粧水が完成する頃には、乳酸菌の数が圧倒的となり、何らかの効果が期待できる状態になっている可能性は考えられます。もちろんそれでも雑菌の繁殖は否定できませんから、危険性はゼロではありません。

でも、もともと顔の皮膚というのは常に外界にさらされていて、身体の他の部分より頑丈ですので、トラブルが発生しないということも充分考えられます。

一方、腐敗菌の数が多かった場合には、乳酸菌は増殖できず、でき上がったものは悪臭のする腐った水になっているでしょう。これもまた、腐敗臭がするから、残念でしたと捨ててしまえばいいと言う判断ができるので、それはそれでOKです。

悪臭がしないのが一番危険かもしれない

問題は、揮発性物質をあまり作らない腐敗菌や雑菌が増えて、腐敗臭がしない場合です。乳酸菌も増えていないので酸っぱい匂いもしません。

そんな「よく判らないアヤシイ水」ができた場合に、捨てるという判断ができるかどうかですね。もちろん捨てなくてはいけません。見た目にもにおいにも異常が見られない場合であっても、腐敗していて身体に良くない成分ができている可能性は否定できないのです。

正しく乳酸発酵しているのか、していないのかと言う判断をする方法を持たない人は、乳酸発酵を前提にした米のとぎ汁化粧水にはチャレンジしないほうが安全です。

少し前のテレビ番組で、有名芸能人女性が作っている手作り発酵化粧水を分析するというものがありました。そして、その化粧水の一部を培養分析してみたら、乳酸菌と一緒に黄色ブドウ球菌が繁殖していたという、笑えないオチが示されていました。

黄色ブドウ球菌は食中毒菌です。そして、健康な皮膚であれば問題は起きにくいですが、小さな傷などがあるとそこから感染して炎症を起こす菌です。さらにメチシリンという抗生物質に耐性を持つと、人を殺す菌にも変身する危険なものです。自家製発酵化粧水は怖そうですね。

黄色ブドウ球菌が繁殖しても、匂いや味に異常が現れません。だから食中毒の原因になりやすいのです。

米のとぎ汁は米の汚れを水で取り除いたもの

お米は籾殻を取り除くと、まず糠の層に包まれています。それを精米して糠の部分を取り除くと胚乳の部分、つまり白米が出てきます。この白米の表面には、糠の残りや精米段階・流通段階で付着したホコリや汚れなどが存在しています。

このホコリや汚れ、糠の残りを物理的にこすり洗いして、水で流してしまうのがお米をとぐという作業です。つまりお米の汚れの部分ということですね。もちろんお米の表面のでんぷんも少しは流れ出します。

このでんぷんは、多糖類として乳酸発酵の際の菌のエサになるでしょう。しかし、お米から流れ出るでんぷんや、お米の表面に残った糠の量は、現在の精米技術ではごく少量です。糠の効果を期待するなら、糠袋でも作って石鹸代わりに使ったほうがよほど効果的です。

また、この糠の層には酵素が含まれていて、お米が発芽する際に胚乳のでんぷんを糖に分解し、発芽のエネルギーとして使いやすくします。うまくこの酵素が残っていれば、お米表面から水に流れ出したでんぷんも糖に変えられるでしょう。

糖に変えられれば乳酸菌による発酵も起こりやすくなりますが、こればかりはケースバイケースになります。お米のとぎ汁をもったいないと感じる人もいるようですが、野菜を洗った水、食器を洗った水と同じだと考えて捨てたほうがいいと思います。

米のとぎ汁にそれほど栄養はない

お米のとぎ汁に、それなりの量のでんぷんが溶け出していて、さらに上でお話したような酵素も存在すれば、糖質が得られますので、それをエサに乳酸菌が増えることもないわけではありません。

一方、お米のとぎ汁を白く濁らせているのは、糠層のたんぱく質と脂質が中心です。これを栄養にできるのは乳酸菌ではなく腐敗菌です。

むしろ、精米で削ぎ落とされた糠のほうが酵素が多く含まれていますし、酵素や乳酸菌が分解できる食物繊維も豊富です。ですから、糠に塩と水を混ぜて野菜を漬ければ乳酸発酵が進むのです。

見ると、お米のとぎ汁発酵液化粧水を作っている人の中には、砂糖を加えている人がいます。これは考え方としては正しいのですが、それなら米のとぎ汁などを使わず、砂糖水でやったほうが清潔ですし、砂糖を入れるのは本末転倒な感が否めません。

このように、米のとぎ汁を再利用することは、あまりお勧めできるのものではありません。植物の水やりに使うと枯れてしまうこともありますので、米のとぎ汁は捨てて下さい。

【写真付き】そもそも米のとぎ汁で乳酸菌は発酵するのか?発酵実験

否定するばかりも何ですので、清潔な方法で米のとぎ汁を発酵させて、何らかの液体が作れないかを考えてみました。

幸い手元に植物性乳酸菌、ラクトバチルス属プランタルム種を含む混合乳酸菌があったので、これで実験してみました。

まず、米のとぎ汁を沸騰させ、加熱殺菌します。簡単に言えば手鍋に入れて5分間沸騰させました。この段階で野良乳酸菌や酵母を含む細菌は、一部を除いて全部死滅しているはずです。

米ですから、稲わらによくいる枯草菌の一種は、芽胞という耐環境形態を作って生きている可能性はあります。いわゆる納豆菌ですね。

米のとぎ汁による発酵実験1加熱殺菌した米のとぎ汁

それを冷まして熱湯消毒したメジャーカップで500mLを量り取り、発酵容器に入れ、乳酸菌を混ぜ込みます。50億CFU(50億個という意味です)入れました。1mLあたり1000万個という、ヨーグルトの規定数です。

次に、利用している人も多いと思いますのでおなじみでしょう、ヨーグルトメーカーに入れ、37℃で12時間発酵させます。

米のとぎ汁による発酵実験2使用したヨーグルトメーカー

写真では普段作っているヨーグルトの乳酸菌に合わせて、43℃8時間に設定されていますが、実験ではちゃんと調整しています。

実は、最初の段階で上手く行きそうにないなとは思いました。もし米のとぎ汁に発酵させられるほどのでんぷんが含まれていたら、加熱した段階でわずかに粘りが出るはずなのです。

ところが全くのさらさらで、少し糠のにおいがするだけでした。つまり、たんぱく質と脂質だけで白く濁っていたということなんですね。

米のとぎ汁による発酵実験3乳酸発酵に失敗したとぎ汁

12時間後、表面に少し菌が増えたカスのようなものも浮いていましたが、酸の匂いは全くありません。一応最初に加熱殺菌しておいたので、味を見てみましたが、乳酸発酵の様子もありませんでした。

と言うことで実験は見事に失敗。もちろん最初から米に付着している乳酸菌だけを分離して、同じことをやれば成功したかもしれませんが、それは素人の手に余ります。

米のとぎ汁の乳酸化粧水は難しい

このように、雑菌・腐敗菌によるリスクを回避しながら、米のとぎ汁を乳酸菌で発酵させて化粧水を作るというのは、実現性に乏しいということが判りました。

これに砂糖を入れて発酵を起こさせたとしても、米のとぎ汁の持つ意味が不明ということになります。

残念ですが、米のとぎ汁乳酸菌化粧水の手作りと利用は、あまり意味が無いのではないかという結論になりました。

実験室でやったわけではないので、沸騰させた後冷ましているときにも外来の雑菌は入っていたでしょう。しかし、12時間ではそれが繁殖して腐敗するほどでもありませんでした。

米のとぎ汁乳酸菌化粧水に何を期待するのか

米のとぎ汁には、糠に由来するたんぱく質と脂質が少し含まれています。ですので、特に脂質の部分がお肌をしっとりさせる効果があると思われますが、それなら糠袋を使ったほうがはるかに効果的です。

もちろん、ビタミンやミネラルについても、効果があるとしても、糠袋のほうが数十倍、数百倍、あるいはもっとたくさんというレベルで含まれているでしょう。

乳酸発酵したものに期待できるのは細胞外多糖

乳酸菌が発酵を行う際に、細胞外多糖という物質を作り出すことが知られています。この細胞外多糖には様々な効果が見つかっていて、中には美白のような美容効果のあるものもあります。

ただし、美容効果が見つかった細胞外多糖を分泌する乳酸菌はわずかですし、まだ商品化されてすらいません。

シミ消しに効果が期待される乳酸菌についての情報が関連記事にありますので、興味のある方はそちらをどうぞ。

▼関連記事
乳酸菌でシミ対策!シミを消すなら外用、予防するなら内服がおすすめ

また、一般的な細胞外多糖は、保湿効果が期待できる部分はありますが、米のとぎ汁程度の薄い乳酸発酵液ではそれほど効果がないかもしれませんね。

ヨーグルトパックのようなもののほうが現実的でしょう。ヨーグルトパックや細胞外多糖の保湿効果についても関連記事をどうぞ。

▼関連記事
手作り乳酸菌化粧水はすぐ腐る!使うなら研究されたメーカー製が安心

もしかして元はエセ科学?

東日本大震災伴う原子力発電所の事故によって、放射能に対する恐怖が日本中を覆った際、ありとあらゆる迷信も日本中を覆ったように記憶しています。

その中に米のとぎ汁を乳酸発酵させたものを摂ると、体内から放射能を除去できるという物があったように思います。

それがインチキでありエセ科学であることは論を待ちません。もしそんな効果がある物質が存在するなら、とっくに製薬会社が大量生産を始めているはずですよね。上手くやれば何兆円という利益が生まれます。

もちろん、そうしたエセ科学のブームには腐敗物質を取り込むことによって、病気にかかる人を増やしてしまう危険性が高いため、すぐに効果を否定するニュースが流れたと思います。

もしかすると、この米のとぎ汁乳酸菌発酵化粧水は、「飲んだり吸ったりがダメでも、顔に塗るぐらいなら」という感じで始まったのかも知れません。

また、便臭や生ゴミ臭を消す消臭剤としての効果が謳われていることも散見します。これは失敗しても、さらなる悪臭を我慢するだけで済みますから、気になる人は挑戦してみてもいいでしょう。

米を主食にしてきた日本人にとって、米由来のものには特別な思い入れがあるようです。でも、汚れているものは汚れていますし、腐るものは腐りますから、あまり根拠のない手作り化粧品は避けたほうが安全ですよ。
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