ヤクルトが乳酸菌技術を活かし化粧品を販売。その効果が期待できる

乳製品乳酸菌飲料の草分けであり、日本最大の乳酸菌飲料メーカーであるヤクルト本社は、事業の中に化粧品や医薬品のメーカーとしての顔も持っています。

ヤクルト本社が作る化粧品ですから、乳酸菌の効果を盛り込んだものが期待できますね。

今回はヤクルト本社の化粧品についてお話しますが、使用感や効果効能についてのレビューは行いません。具体的にヤクルト本社が何を期してその化粧品を作ったのか、乳酸菌にまつわることを中心に考えてみます。

もちろん公式に発表されていないことに対する感想は私見に過ぎませんので、それはあらかじめお断りしておかなくてはなりません。

企業秘密で隠しておきたい成分は公表しない?有効成分と表示のヒミツ

食品でもそうですが、化粧品においても全成分表示が義務付けられています。そして、化粧品では、効果効能に関する機能性成分には化学名と機能性成分であることの表示も義務付けられています。

そうなってくると、メーカーとして外部に情報を隠しておくことができないわけですね。国内だけでなく、海外メーカーにコピーされる危険性も無視できません。

ヤクルト化粧品の工夫

もちろんこれはヤクルトだけでなく、資生堂でもカネボウでも同じことですが、企業秘密として内容物の詳細を最も隠しておきたい場合、それを機能性成分として公表しないという方法を取っています。

一例としてヤクルト化粧品の「ビサイクル リフトリペア エッセンス」という商品を見てみましょう。お肌の張りや弾力に衰えを感じた人用の美容液です。

▼ビサイクル リフトリペア エッセンス
ビサイクルリフトリペアエッセンス商品イメージ

コピーには「豆乳をビフィズス菌で発酵させてできる保湿成分を配合」と書いてありますし、セールスポイントとして、そのビフィズス菌由来の成分や牛乳を乳酸菌で発酵させた成分、ヒアルロン酸などをアピールしています。

しかし、全成分表示を見ると、有効成分としてチェックされているのは、酢酸トコフェロールとグリチルレチン酸ステアリルの2つだけです。

酢酸トコフェロールと言うのはビタミンEのことです。もちろんお肌に良い成分ですが、特段珍しいものではありませんね。抗酸化作用によって皮脂の過酸化を抑えて肌荒れを防ぎます。同時に、角化細胞を増やす働きで、荒れた肌の修復にも役立つ成分です。

また、グリチルレチン酸ステアリルは漢方薬の「甘草」の有効成分であるグリチルレチン酸を、化粧品に溶け込みやすくするためステアリルアルコールとのエステルにしたものです。

グリチルレチン酸は、炎症を抑える成分であり、それ自身は肌を刺激しにくい成分として、古くから化粧品に用いられています。どちらも化粧品であれば必ず含まれていると言ってもいい成分でしょう。

乳酸菌由来成分は「その他の成分」

コピーに使われている「豆乳をビフィズス菌で発酵させてできる保湿成分」はどこに行ったのかと思ってよく見てみると、「豆乳ビフィズス菌発酵液」と言うのがありました。

豆乳を発酵させたものを濃縮するなりして、そのまま入れているのかもしれませんね。でも、一体それに含まれる何が有効なのかは示されていません。

有効成分として書いてしまうと、それを明かさなければいけないから、あくまで「その他の成分」という扱いにしているのでしょう。

さらに、「牛乳を乳酸菌で発酵させた成分」はないのかと思ってよくよく見てみると「ホエイ」というのがありました。ヨーグルトの上澄み、「乳清」のことですね。

このように、有効成分として乳酸菌発酵によるものを使用していますが、その実態は他メーカーに知られないよう、隠されているのです。

余談ですが、保湿成分のヒアルロン酸も注目ポイントとして示されています。しかし、成分表を見ると、ヒアルロン酸ナトリウムより、メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体のほうが上に書かれています。

このメタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体という、高難度の早口言葉のような名前の物質は、ヒアルロン酸の2倍と言う高い保湿能力を持っているんですよ。多分名前が長すぎるために、前に出さなかったんでしょうね。

よく知られた名前を使うのもビジネスでは大切です。この物質は日油株式会社がリピジュアと言う商標で化粧品メーカーに卸してもいますが、それを購入せず自社開発していた場合、その名前は使えません。あるいは、その商標を使うことで他社から仕入れていることを知られたくないのかも知れません。

乳酸菌を活用するところが、さすがヤクルトですが、やはり詳細な成分は隠さないとすぐにコピーされるんでしょうね。菌株も、一部を除いては明らかにされていません。

ヤクルトの技術力!乳酸菌テクノロジーがフル活用されている

ヤクルト化粧品のアイテムは、ほかの化粧品メーカーと同じように、最新技術をふんだんに盛り込んだ、とてもハイテクな商品だと言って良いでしょう。

しかも、それに自社が最も得意とする分野である、乳酸菌の発酵技術を組み込んで、世の女性たちのお肌に届けようとしているようです。

ならばヤクルト化粧品がベストなのかと言うと、ひねくれ者の乳酸菌おじさんは違う方面からそれを見てしまうのです。ヤクルト化粧品のもつ素晴らしい技術の情報を学んで、それを活用できないかと目論むわけです。

ヤクルト化粧品には乳酸菌由来のヒアルロン酸が配合されている

ヒアルロン酸という名前は、保湿成分としてすっかりおなじみになったのではないかと思います。ヒアルロン酸自体は巨大な分子量を持つ多糖類です。ムコ多糖とかグルコサミノグリカンとか呼ばれることもあります。

巨大な分子ですから、表皮を超えて真皮にまで浸透することはありません。かと言って、食べたとしても消化され分解されますので、ヒアルロン酸のままお肌などに届くわけではありません。

ヒアルロン酸は、変形性関節炎で悩む人の膝関節に、直接注射することで関節の動きを良くすることができるため、サプリとして用いられることもありますが、経口摂取での効果には疑問符がついています。

一方、外用で用いると、ヒアルロン酸自体の持つ粘性と保水力がお肌の乾燥を防いでくれます。市販のシャボン玉液に15%ほどヒアルロン酸入り化粧水を混ぜてシャボン玉を作ると、軍手をはめた手で弾いて遊べるほど丈夫なシャボン玉ができます。

ヒアルロン酸の粘性によってシャボン玉の外皮が丈夫になることと、ヒアルロン酸の保水力によってシャボン玉の表面から水が蒸発しにくくなることがこのシャボン玉の原理です。

保湿成分としての優秀さがよく判りますね。この保水力の強さを買われて、化粧品にはヒアルロン酸がよく配合されています。

では、乳酸菌由来のヒアルロン酸には、何か特別な効果があるのでしょうか。

ヤクルト化粧品には申し訳ないのですが、昔は動物性の原料から精製していたヒアルロン酸ですが、今は乳酸菌によって大量生産するのが普通になっちゃってます。

つまり、世の中でヒアルロン酸と言えば、乳酸菌、特にストレプトコッカス属サーモフィルス種のレンサ球菌によって作られたものである可能性が高いと言えるでしょう。

ヨーグルトを食べるとお肌しっとりになる?

ストレプトコッカス属サーモフィルス種は通称サーモフィルス菌と呼ばれています。つまりラクトバチルス属デルブルッキー種ブルガリクス亜種(通称:ブルガリア菌)とペアで、ヨーグルトを生み出す乳酸菌の代表選手ですね。

ではヨーグルトを食べると、お腹の中から保湿成分をお肌に供給してくれるのでしょうか。まずはヒアルロン酸は消化器からお肌に影響するかどうかという問題ですね。

ヒアルロン酸は、分子量100万以上の巨大分子です。構成単位は単糖ですから、せいぜい分子量200程度。つまり、5000個以上の単糖の分子が結合したものと言うことです。

単糖はN-アセチルグルコサミンとグルクロン酸が交互に結びついた形をしています。どちらも基本骨格はブドウ糖ですから、乳酸菌の細胞外多糖として形成されるのは自然なことです。

ヒアルロン酸は消化器の中で単糖にまで消化されてから吸収されますので、吸収された段階では2種類の単糖ということになります。それが細胞外でもう一度ヒアルロン酸に再構成されるかどうかは不明です。

しかし、関節の状態改善には内服で効果がないことが判っていますが、逆に皮膚の水分保持状態を良くすることは、マヨネーズでおなじみのキユーピーの研究で明らかになっています。

ですから、もしお腹の中で乳酸菌がヒアルロン酸を作ってくれれば、それがお肌の水分保持に役立つ可能性があります。

台湾生まれのサーモフィルス菌がチャンピオン

次に、ヨーグルトの乳酸菌がヒアルロン酸を作ってくれるかどうかという問題ですね。ヤクルトがヒアルロン酸を作らせているのは、サーモフィルス菌のYIT2084株です。

そして、もしかするとヒアルロン酸以外にも秘密の保湿成分が含まれているのかもしれませんが、ヒアルロン酸だけに注目した場合、サーモフィルス菌のYIT2084株は決して最高の効率を持っているわけではありません。

蝶理株式会社ライフサイエンス部の研究によると、サーモフィルス菌46種類の比較において、このヤクルト本社のYIT2084株が最も多くのヒアルロン酸を作り出したそうです。

しかしさらに、母乳由来のサーモフィルス菌TCI633株では、YIT2084株の270倍にも及ぶヒアルロン酸の産生が見られたということです。もちろん、母乳由来ということもあって、食品としての安全性も確認されています。

(参照:健康な母乳から「高ヒアルロン酸善玉菌」を発見。ヒアルロン酸を産生することで美容や関節に対する機能も持っております。|蝶理株式会社ライフサイエンス部)

この乳酸菌は、原料としてであれば蝶理の輸入販売のルートで日本でも求められますが、今のところ製品化されたものは見当たりませんでした。

この乳酸菌は、台湾の大江生医股分有限公司と言う会社が所有している菌株のようですね。

そのせいでしょうか、台湾の美容サプリに入っているのが見つかりました。禧元堂と言う会社の益生菌と言う商品です。

ビフィドバクテリウム属ロンガム種(通称:ビフィズス菌)TCI068株と、サーモフィルス菌TCI125株、TCI633株の3種類が配合されていると巴形のシンボルの中に書かれています。

さらにパッケージにはカタカナで「プロバイオティクス」と書いてありました。おそらく益生菌とはプロバイオティクスという意味なのでしょう。

日本人におみやげとして売りたいのか、日本語を書くことがカッコ良いと言うことなのかは判りませんが、台湾旅行に行かれるチャンスがあれば探してみて下さい。

そして、YIT2084株やTCI068株以外のサーモフィルス菌が、どの程度ヒアルロン酸を作り出すのかは判りませんが、作ってくれればラッキーぐらいの軽い気持ちでいいので、毎日ヨーグルトを食べましょう。

中国や台湾では商品名などに日本語表記は結構多いんですよ。特に美容・医療関係では日本製品かと思うぐらいのものも結構存在しています。

ビフィズス菌と大豆イソフラボンでできるヤクルトの化粧品がある

ビフィズス菌は基本的に動物性乳酸菌です。人間はもちろん、すべての動物の腸に住んでいる乳酸菌なのです。中には昆虫の腸の中に棲んでいる種もあります。

このビフィズス菌で大豆(豆乳)を発酵させ、大豆イソフラボンを人の肌の上で働きやすい形で取り出したものが、ヤクルトの化粧品に配合されています。

イソフラボンはヒアルロン酸と関係がある

イソフラボンは厳密には生き物からは検出されない物質で、私たちが普段イソフラボンと呼んでいるのは、誘導体という形で化学構造が変化したイソフラボンのことです。

イソフラボンはフラボンと同じ化学式で構造が異なるものですが、「フラボンのようなもの」と言う意味のフラボノイドに分類される物質群です。具体的には、ダイゼインやゲニステインなどを総称して、イソフラボンと呼んでいます。

イソフラボンは、食品などとして口から摂ると、女性ホルモン様の効果から、骨粗鬆症や乳がんを予防したり、血中コレステロール値を下げたりします。

一方、化粧品のように外用すると、皮膚でのヒアルロン酸産生を促し、保湿効果から肌のハリや弾力を改善する効果が期待されています。

このイソフラボンは、納豆やテンペを食べることで食用として得るのは簡単ですが、皮膚から浸透しやすい形で取り出すためにビフィズス菌を利用したとあります。

とは言うものの、イソフラボン自体はブドウ糖より少し大きい程度の分子ですので、皮膚には楽に浸透するものでもありますね。

なぜビフィズス菌?

動物性乳酸菌の代表とでも言うべきビフィズス菌を、植物性食品である大豆の発酵に利用したのはなぜでしょう。大豆と言えば納豆は枯草菌の一種である納豆菌ですし、テンペは真菌類であるクモノスカビ類を利用していますね。

これはヤクルトから公式のアナウンスが有ったわけではないので推定の域を出ませんが、大豆にはオリゴ糖が多く含まれていて、これがビフィズス菌の栄養として適していたからではないかと思われます。

なぜビフィズス菌による発酵がイソフラボンの効率を上げるのかは判りません。何らかの研究の上に成り立った利用法だとは思いますが、残念ながら資料は見つかりませんでした。

意外なところでビフィズス菌の利用方法が見つかったものですが、できればメカニズムを知りたいところですね。

ナノテクノロジーは化粧品の世界にも

この技術はヤクルト化粧品だけのものではありませんが、その技術について、強くアピールしていますので、紹介しておきましょう。

簡単に言うと、人間の皮膚が持っている構造を模倣することで、化粧品に優れた機能をもたせた技術です。

ラメラストラクチャという生体構造の模倣

私たちの皮膚の表面は角質で覆われています。この角質層というのは、死んだ表皮の細胞がレンガを積み重ねたように正確に組み合わせられており、新しい角質が奥から補充されると、古い角質は表面から剥がれるようになっています。

この角質が正確に組み合わされるためにはレンガの壁を作るときのように、目地に当たるものが必要ですね。目地がないとレンガは簡単に崩れてしまいます。

この目地に当たるのが細胞間脂質なのですが、単なる脂肪の集まりではなく、水と脂質が交互に積み重なったラメラストラクチャ(ラメラ構造)と呼ばれる作りになっています。

この構造のお陰で、水分によって皮膚にうるおいが与えられると同時に、脂質によってその水分が蒸発せず皮膚に保持されるようになっているのです。

化粧品の粒子を細かくすると皮膚に浸透する前に壊れる

お肌につける様々な成分ですが、その昔は粒子が大きくて、肌に染み通らなかったのです。それがナノテクノロジーの発達によって、充分浸透するくらい小さくすることができるようになりました。

もちろん、真皮にまで浸透するかどうかは分子の大きさの問題になるため、これはあくまでできるだけ分子1個の大きさにまで小さくすると言った意味合いです。

ところが、目的の物質を小さくすることはできても、その機能を活かしたままお肌に届けられないという問題が発生しました。そこで考えられたのがラメラ構造の模倣です。

脂質と水を交互の層にして球形に整えることで、ラメラ構造の表皮にも馴染みやすく、また水分に溶かし込んだ有効成分を活かしたまま肌に届けられるようになったのです。

乳酸菌による生成物は、この構造の水の層に含まれています。

何層にも別れた球というのは、昔の駄菓子「変わり玉」のようなイメージですね。

ヤクルトだから良い・悪いということはない

ヤクルトは特に乳酸菌飲料のイメージが強いため、良くも悪くも「化粧品と乳酸菌」と言う組み合わせのイメージで見られがちです。

しかし、例えばカネボウの「suisaiシリーズ」の化粧品は乳酸菌を利用した化粧品ですし、資生堂の「ハラハチ習慣」というサプリは酵母とビフィズス菌のサプリです。

このように今では乳酸菌は、身体の内外から美しさを作る共生生物と言う扱いで、化粧品メーカーにも広く利用されるようになっていると考えても差し支えないでしょう。

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